太田述正コラム#2329(2008.1.28)
<オバマ大頭領誕生へ?(続々)>(2008.3.3公開)

1 始めに

 オバマの米予備選での戦いはどうなっているのか、最新の状況を押さえておきましょう。

2 オバマの戦いぶり

 (1)ニューヨークタイムス社説

 ニューヨークタイムスは、25日付の社説で、民主党の大統領候補としてクリントン支持を打ち出しました(
http://www.nytimes.com/2008/01/25/opinion/25fri1.html?_r=1&oref=slogin&ref=opinion&pagewanted=print
。1月25日アクセス)。
 ニューヨークタイムスが支持したからといって、その候補者が勝利するわけではありません。
 実際、2004年の大統領選挙の時には、民主党のケリー候補支持を打ち出した(典拠省略)けれど、共和党のブッシュ候補が大統領2選を果たしました。
 しかし、オバマ候補がアイオワ州の党員集会で勝利した後、ニューハンプシャー州とネバダ州のそれぞれ予備選挙と党員集会で立て続けにクリントン候補に敗れた後だけに、この社説は強いインパクトがありました。
 例えば米CNNの電子版は、大々的にこのニューヨークタイムス社説を報じました(
http://www.cnn.com/2008/POLITICS/01/25/nytimes.endorses/index.html
。1月25日アクセス)。

 (2)南カロライナ州予備選挙

 26日に行われた南カロライナ(South Carolina)州の民主党予備選挙では、オバマが勝利することが確実視されていました。
 民主党員の半分以上が黒人だからです。
 しかし、誰もオバマが55%もの得票を獲得し、クリントンに28%も差を付けてぶっちぎりで勝利するなんて予想していませんでした。
 こんなことになった責任の一端は、ヒラリー・クリントン候補の夫ビル・クリントンの失言と彼が選挙運動の前面に出すぎたことにあると報じられています。
 彼は26日に、投票が始まる前に、「ジェシー・ジャクソン(Jesse Jackson)だって1984年と88年の予備選挙の時に南カロライナで勝利したよ」と語ったのです。これは、オバマを「単なる黒んぼさ」と貶めたもの、と多くの人が受け止めたのです。
 出口調査によれば、58%の人がビル・クリントンの言動が自分が誰に投票するかに影響したとしており、そのうち48%がオバマに投票し、37%しかクリントンには投票しませんでした。(ちなみに、影響しなかったとした39%のうちオバマに投票した割合はこれよりずっと多かった。)
 また、ビルが選挙運動の前面に出すぎたという印象がどうしてクリントン候補にとってマイナスになったかと言うと、クリントンが大統領になった場合、それが事実上ビルとの共同大統領制となり、ビルが院政を敷くのではないか、責任の所在が不明確になるのではないか、という懸念を抱く人がかなり出てきたからです。

 この結果、
第一に、一週間前には、各種世論調査で、(ビル・クリントンの大統領時代に遡るところの)ビルに対する黒人達の根強い人気から、黒人層が必ずしもオバマ候補を強く支持していないとの結果が得られていたのに、南カロライナ州でオバマが黒人票の80%以上をとったこと、
第二に、この州においても、オバマが青年層や今まで投票したことのなかった人々を中心に数多くの人々を民主党予備選に惹き付け、今回オバマ一人でこの州で獲得した票だけで2004年の予備選挙の時の全候補者の得票総数を上回ったこと、そして
第三に、このこともあって、古参の民主党員達の間でも次第にオバマ支持が高まったこと、
は重要です。

 しかも、この選挙の直後の28日、マサーチュセッツ州選出のエドワード・ケネディ上院議員がオバマ支持を表明したのです。
 しかもその前日には、エドワードの長兄である故ジョン・F・ケネディー大統領の生存する唯一の遺児であるキャロライン・ケネディ女史によるオバマ支持表明がなされていたのです。
 これはクリントン候補にとって大打撃です。
 というのは、ビル・クリントンはエドワードの長兄である故ケネディー大統領の衣鉢を継ぐと称して1992年の大統領選を戦ったという過去があることもさることながら、ケネディ上院議員のような民主党の大長老がオバマを支持する以上、オバマが経験不足であると批判できなくなるからです。
 ケネディ上院議員は、これまでの大統領予備選で特定候補の支持表明をしたことがなかったのですが、彼は個人的親交のあるクリントン夫妻とかねてから目をかけてきたオバマの双方から熱烈なラブコールを受けてきていたところ、クリントン陣営のオバマ候補への個人攻撃と人種を問題にする選挙戦術に幻滅するとともに、オバマが青年層や今まで投票したことのなかった人々を惹き付けていること、しかも人種を超えた新しい米国の到来を予感させることからオバマ支持を表明したということのようです。
 ちなみに、故ケネディ大統領の弟にしてエドワード・ケネディ上院議員の兄である故ロバート・ケネディ上院議員の娘、キャサリン(Kathaleen)・ケネディ女史は27日、クリントン支持を表明しています。
 しかし、オバマが上院議員になってから1年が過ぎようとしていた2005年、キャサリンの母親で故ロバートの妻のエセル(Ethel)・ケネディは、故ロバートの80回目の誕生日のセレモニーにオバマを招待しスピーチをしてもらっており、その折、オバマについて、「われわれの次期大統領」と述べていることからすれば、ケネディ一族は、基本的に皆オバマ陣営に属すに至ったと言ってもいいでしょう。

 (以上、
http://www.guardian.co.uk/uselections08/barackobama/story/0,,2247951,00.html
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/story/0,,2247991,00.html
http://www.nytimes.com/2008/01/28/us/politics/28kennedy.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print
(いずれも1月28日アクセス)による。)

3 終わりに

 2月5日のスーパーチュースディを過ぎてもまだ、予断は許さないのではないかとの観測もなされていますが、私はオバマがクリントンに勝って民主党の大統領候補に選ばれる可能性、従ってまた、次期米大統領に選ばれる可能性が益々高まっていると見ています。