太田述正コラム#2322(2008.1.26)
<皆さんとディスカッション(続x48)>

<大阪の一読者>

 「たかじんのそこまで言って委員会」でご意見を拝聴したのがきっかけで,先月からメルマガ(まぐまぐ)読者になりました。本質からの遠近に関するご感覚,情報の信頼性に関するご判断,典拠に関するご姿勢,などに共感いたしております。一度まとめてお考えを拝読したいと思いご著書の購入を申し込みます。よろしくお願いいたします。

<太田>

 拙著ご注文ありがとうございます。
 以下の議論も参考にしていただければ幸いです。

<バグってハニー>

1 米国の場合、外国人には参政権ないです。永住権(グリーン・カード)もっててもだめです。と書くと、日本と変わらないように響きますが、さにあらず。なんとなれば、米国は日本と比べて国籍取得の要件がかなり低いからです。永住権とって(それが大変ですが)5年くらい住めば簡単な手続きで帰化することができます。
参政権がほしけりゃ帰化すればいいだけだ、という意見が目立ちますが、日本の場合、帰化するのには大変な決心が要ります。かつては帰化する場合、一家丸ごとが原則だったので、親に反発する在日の子供が個人で帰化する、なんてこともできませんでした(今は変わっているとは思いますが)。また、日本は重国籍を認めていないので帰化する際には原国籍を放棄する必要があります。これは故国と訣別するという一大決心を強いる心理的圧迫となります。米国は重国籍にとんちゃくしません。そんなちんけな制限で国家に対する忠誠を確保する必要がないのでしょう。ちなみに、中国は日本以上に重国籍に厳しいです。パスポートの更新の際にかならずビザの状態がチェックされ、その際にビザを持っていないことが分かると(つまり帰化したことがばれると)、有無を言わせずに中国籍を剥奪します(カナダに帰化した中国人から聞いた話。帰化する前に後一回だけパスポート更新しとけばよかったとか)。
外国人参政権というと在日二世三世が主な対象だと思いますが、米国ではそもそもこんな問題は生じません。なぜなら国籍には生地主義を採っているので、移民の子孫には米国に生まれた時点で一律に市民権が付与され参政権が与えられるからです。ですから、外国人の子孫に対して制度として(タテマエとして)差別・区別は存在しません。こういう違いはある意味当たり前であって、米国はあくまでも移民を前提として国が成り立っているんですねえ。
日本は血統主義です。もっと言うと、つい最近(1984年だったか)までひどい女性差別状態にあり、父系血統主義を採っていました(変更は国連の男女差別撤廃条約に批准する際に国内法を見直したから。ちなみに私の日本国籍はこのとき遡って救済されました)。ですから、伝統的な「日本人の定義」は、単純にいって「父が日本人であること」なんですねえ。在日が日本人と結婚した場合でも、日本人が母だと子供には日本国籍がいかなかったので、在日同士での結婚を重視するという風潮とあいまって、同化はほとんど進みませんでした。このあたりの事情も最近はずいぶんと変わっているとは思いますが。
私は個人的には在日問題なんてほとんど国籍法の問題だと思ってます。日本生まれの特別永住権者には一律に日本国籍を与えればよいのです。そうすれば、制度(タテマエ)としての差別・区別は胡散霧消します。「日本人は差別している」などと言われるいわれはなくなります。
私は今、外国で子育てしてますが、異国で子供を日本人として育てることのむつかしさを実感しています。というかほとんど放棄しています。日本語学校というのはありますが、これは帰国した際に日本の教育に遅れないようにという目的の元、運営されています。一方で、在日の中には子供を民族学校に行かせている人も多いですが、本国に帰る気配は毛頭見当たりません。ほとんど意味のないことに多大な努力を強いていて、正直バカだと思います。外国に何世代にもわたって外国人として居住し続けるなどというしんどい生き方をわざわざ続ける理由はどこにもないと思います。在日には、同化しやすい素地を作ったうえで同化させる圧力を加えればよいのです。自分の出自に誇りを持って朝鮮系日本人として立派に生きていけるような社会が私の理想です。私の子供もどんな国に住むことになってもそんなふうに生きていってほしいです。

補足ですが、米国はあくまでも生地主義の国であり、血統による国籍の相続は一世代に限って認められる特例となっています(さらに例外あり)。在日にたとえると、三世は韓国籍・朝鮮籍を取得できないことになります。韓国の国籍法がそんなふうになっていても、一気に同化が進むんですけどねえ。

2 移民受け入れ派の太田先生も「国政レベルでの参政権は認めるべきではない」とケツの穴の小さいことを仰ってますが、かつての大日本帝国はもっと太っ腹でした。朝鮮を併合すると、朝鮮人は一律皇国臣民として迎えられ、同化政策が採られました。外地では日本人を含めて選挙権はなかったのですが、内地では移民してきた朝鮮人には被選挙権も与えられ、朝鮮人の代議士も存在しました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%B4%E6%98%A5%E7%90%B4
「帝国」を目指すものはこれくらい包容力がなくちゃあならんでしょう。日本人もずいぶん矮小化したものです。
外地には選挙権がない代わりに徴兵制も敷かれませんでした。大戦末期にはそうも言ってられなかったようですが。外地にいた私の祖父はそのおかげで命拾いしました。ですから、「今の日本には徴兵制がないから外国人には参政権が認められるべきでない」という太田先生の理論は有効なような気もしますが、現代ではナンセンスでしょう。主要な民主主義国家の中で未だに平時から徴兵しているのは思いつく限りでドイツ、スイス、韓国、イスラエルくらいでしょう。徴兵は伝統的に適齢男子に限り、このうち女子も徴兵しているのはイスラエルだけだと思います(間違ってたらごめんなさい)。女子は徴兵されないから参政権を認めるべきではない、なんて誰も言わないでしょう。
米国には制度としては徴兵制は存続しており、タテマエとしては休止状態にあるだけですが、これだけ長く戦時下にあり戦力も逼迫しているというのに徴兵が復活する兆しは微塵もありません。英国は米国よりももっと前、ビートルズが登場したときに平時徴兵を廃止しています。
 それよりも有効な議論は納税という義務を果たしているのになぜ参政権が認められないのか、というものでしょう。米国が英国から独立する気運を盛り上げたのもこの理不尽な「代表なき課税(Taxation without representation)」でした。首都ワシントンは未だにこの理不尽と戦っています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD51%E7%95%AA%E7%9B%AE%E3%81%AE%E5%B7%9E#.E3.82.B3.E3.83.AD.E3.83.B3.E3.83.93.E3.82.A2.E7.89.B9.E5.88.A5.E5.8C.BA

<桜の花>

私は 法律で決められた日本人と言う条件が参政権を持つ為の必要十分条件で良いと思っています。
現代社会では これが解かりやすくて一番良いのではありませんか。
二番目に良くても必要はありません。参政権を与える事に反対です。
とってつけたような納税義務を果たしている人かどうかは 歴史的にはともかくとして、現代社会では 日本人でも参政権の考慮の対象にしていません。
現代社会では 日本人も在日の人も参政権以外では平等に日本の社会的恩恵を受けられております。
参政権がなくても仲良くいたしましょう。いかがですか。

<Master>

 外国人の参政権を認めて現実的にどれほどの問題があるのかが、ちいともわかりませんな。
 仲良くするとかしないとかは、参政権に関係おまへんわ。

<バグってハニー>

3 所沢さんのサイトの今日のアップデートも興味深かったですよ。
【質問】 戦後直後,神戸朝鮮人学校事件などの朝鮮人学校騒乱事件は何故起こったのか?
http://www21.tok2.com/home/tokorozawa/faq/faq03b.html#10644

>私は 法律で決められた日本人と言う条件が参政権を持つ為の必要十分条件で良いと思っています。

まあ、私も特にそれで異論はないです。私の主張は「外国人にも参政権を」というよりも「在日(特別永住権者)に日本国籍を」という感じですね。本国に帰る予定もないのに何世代にもわたって外国人として居住するというのは意味がないし、無理が生じるのも当たり前だと思います。問題は日本人・在日双方にあると思います。両者が歩み寄ることによって解決するべきでしょう。日本人の中にMasterさんのような人が増えてきて、在日も国籍や在日同士での結婚にこだわらないようになれば子供は生まれたときから日本人なので、自然と同化が進むと思います。
参政「権」はその名の通り、権利ですから、それを行使する上でどのような義務が伴うのかを考えるのは当たり前の議論だと思います。

>現代社会では 日本人も在日の人も参政権以外では平等に日本の社会的恩恵を受けられております。

皆が恩恵を受けられるのはその陰で納税者が存在しているからです。そして、日本人も外国人も税金を平等に負担しています。税金を納める人がその使途に口を挟むのは当然の権利だと思います。日本に住む外国人は税金以外にも社会的・文化的に日本の社会に貢献しています。帰化のハードルが高い以上、日本に住み、働き続ける永住権者に参政権を認めることは当然考慮されてよいと思います。


<太田>

 バグってハニーさんもやはり日本人だったのですね。
 1〜3にかけて、一人連歌的議論(コラム#1044)を展開されていて、全体として何がおっしゃりたいのか、イマイチよく分かりません。
 特にご議論の「2」の部分は、かつてないほど筆が粗いですね。

>朝鮮を併合すると、朝鮮人は一律皇国臣民として迎えられ、同化政策が採られました。外地では日本人を含めて選挙権はなかったのですが、内地では移民してきた朝鮮人には被選挙権も与えられ、朝鮮人の代議士も存在しました。・・外地には選挙権がない代わりに徴兵制も敷かれませんでした。

 コラム#2045で私が書いた話を繰り返さないでください。

>かつての大日本帝国はもっと太っ腹でした。・・「帝国」を目指すものはこれくらい包容力がなくちゃあならんでしょう。日本人もずいぶん矮小化したものです。

 使われているコラムがありすぎて一々引用しないけれど、私の常套文句じゃないですか。著作権法違反ですよ。
 さて、

>「今の日本には徴兵制がないから外国人には参政権が認められるべきでない」という太田先生の理論は有効なような気もしますが、現代ではナンセンスでしょう。主要な民主主義国家の中で未だに平時から徴兵しているのは思いつく限りでドイツ、スイス、韓国、イスラエルくらいでしょう。・・米国には制度としては徴兵制は存続しており、タテマエとしては休止状態にあるだけですが、これだけ長く戦時下にあり戦力も逼迫しているというのに徴兵が復活する兆しは微塵もありません。英国は米国よりももっと前・・に平時徴兵を廃止しています。

 これも以前にコラムか掲示板で説明したつもりなのですが、すぐには見あたらなかったので、ここで改めて説明しておきます。
 憲法(解釈)上徴兵義務が免除されているのは世界中で日本だけだ、ということが重要なのです。
 現時点で実際に徴兵制が施行されているかどうかなど私は全く問題にしていません。
 米国だって英国だって必要が生じれば、いつでも徴兵制は復活します。
 永久に復活しない可能性だってそりゃあるけどね。
 他方、日本では必要が生じたとしても徴兵制を導入することは憲法解釈上禁じられています。
 この違いは決定的に大きい、と私は言いたいのです。
 もう一点、私が徴兵と言う場合、それは、子供と老人と重度非健常者を除くすべての国民による(狭義の)徴兵及び徴用の総称を指しています。
 良心的戦争忌避者は(狭義の)徴兵に応じる必要はないかもしれないけれど、どこの国でも徴用には応じなければなりませんし、そもそも、徴兵適格者のうちどれだけを(狭義の)徴兵の対象とし、どれだけを徴用し、またどれだけを徴兵や徴用の対象にしないかを、フツーの国は(法律で、場合によっては超法規的に)一方的に決めることができるものなのです。
 女性だって昔は狭義の徴兵の対象にはしなかったものですが、次第に対象にする国が増えてきていますし、対象にはならなくたって、昔から徴用の対象ではあったのです。つまり、女性も男性も基本的にその扱いに違いはないのです。
 
>米国が英国から独立する気運を盛り上げたのもこの理不尽な「代表なき課税(Taxation without representation)」でした。

 拙著『防衛庁再生宣言』で、このような捉え方は極めて皮相的であると指摘したのですが、コラムでも同様の趣旨のことを申し上げたことがあるはずです。
 それは、英領北米植民地が英国から独立する気運が盛り上がったのは、英本国軍の英領北米植民地駐留経費の一部を負担させられることになったからであるということです。
 このことを言い換えれば、(英国議会に代表を派遣していないし、そもそも遠すぎて派遣できないこともあり、)自分達がコントロールできない軍隊の維持経費の一部を負担させられることに反発したからだ、ということなのです。
 つまり、米国の独立はカネの問題そのものが引き金になったわけではない、と私は言いたいのです。
 このように軍事を極めて重視するのがアングロサクソンなのであり、この点では世界中の国々は、日本よりもはるかにアングロサクソンの方に近いのです。
 ですから、税金よりも徴兵の方が、グローバルスタンダードに照らせば、はるかに重要な事柄なのです。
 お分かりですかな?

 この関連で、最後に一点だけ。

>参政「権」はその名の通り、権利ですから、それを行使する上でどのような義務が伴うのかを考えるのは当たり前の議論だと思います。

 はまさに私の主張しているところですが、

>外地では日本人を含めて選挙権はなかったのですが、内地では移民してきた朝鮮人には被選挙権も与えられ、朝鮮人の代議士も存在しました。<他方、>・・外地には選挙権がない代わりに徴兵制も敷かれませんでした。

 内地では朝鮮人に選挙権を与えた代わりに徴兵制も敷いたのでは?
 この点はどなたかぜひご教示いただきたいが、いずれにせよ、戦前の日本は、選挙権と徴兵とはリンクさせていたのに対し、選挙権と納税(当然日本人も朝鮮人も、内地でも外地でも所得のある者は納税していた)とはリンクさせていなかったということが窺えますよね。
 従って、本件での私の現在の主張は、「矮小化」する前の「太っ腹」であった日本人の常識を祖述しているだけだ、ということにもなるのではないでしょうか。