太田述正コラム#2202(2007.11.28)
<田村秀昭氏への初見参>(2008.1.5公開)

 (本篇は当分の間、公開しません。)

1 始めに

 仙台防衛施設局長時代の日記からの「復刻」の第2弾です。
 といっても、今回は、赴任直前の1999年7月16日の記述からのご紹介です。
 私の田村秀昭氏への初見参の時のやりとりが出ています。
 田村氏については、既にコラム#2169と2174でとりあげたところですが、これはまだ田村氏の不祥事の噂を私が承知していなかった頃の、私と田村氏とのやりとりです。それに私のコメントをつけました。
 
2 田村氏とのやりとり

1500−:
 自由党田村参議院議員(T)に<私の編纂した防衛>白書の説明。T:「ピアノの太田(O)さんだな。」から始まり、雑談に終始。

→ほとんど初対面だったが、敵も然る者、防衛省キャリアの主だったところの個人情報の収集には努めていたということが分かる。(太田)

 T:「検察は、テポドンが飛んできた時に防衛庁のガサ入れを行ったが、検察は国の防衛を閑却していると白書に書いたか。」
 O:「・・・。」

→調達実施本部事件でのガサ入れの話。安全保障とか国家機密だとかを持ち出して検察等を牽制しようとするのは防衛省関係者がよくやる手だ。なお、この事件の責任をとって額賀防衛庁長官は辞任する。因果はめぐるってやつだ。(太田)

 T:「また、予算制度を今のままにしておいて調達制度の改革を論じるのはおかしい。」
 O:「その通りだが、いかなる制度の下でも、技量は維持・向上させなければならない。調本が、組織としても職員についても、原価計算能力の維持・向上を怠ったことが問題。予算が不足気味で貸し借りが生じざるを得ない世界ではあるが、いくら借りがあり、いくら返すのか、きちんと把握しておく必要あり。ところが、それが分からない世界になってしまっていたのでは。」

→予算は使い切らなければならない、ということことそ元凶だと田村氏は言っているように思われる。
 私の答えは、オブラートに包みつつも、防衛省に原価計算能力がないことを指摘したもの。(太田)

 T:「元検事の佐藤議員と話したのだが、工数をごまかすと言うのは詐欺だそうだ。従って防衛庁は詐欺罪で企業を告発しなければならなかった。ところが、告発せよと言ったのは畠山次官だけだったと言う。防衛庁には畠山以外にはまともな人間がいなかったと言うことだ。」
 O:「・・・。」

→今読み返すとイミシン。不祥事の帝王(?)らしきブラックジョークと受け止めるべきでしょう。

 T:「「不祥事」の結果、このような厳しい態度を防衛産業に対してとり続ければ、防衛産業が成り立たなくなるのではないか。」
 O:「諸外国では國を超えた防衛産業の合従連衡が行われ、合理化が進められている。もともと日本はそのかやの外だったが、ますますそうなりつつあることは事実。」

→田村氏の正体見たり。
 私はあえて空とぼけた話で答えている。

 T:「CIWS事案での金田海将の処分を体を張って止める人が幕にも内局にもいなくなったことも問題。あれで辞めさせられるのでは、全員辞めなければならない。」
 O:「・・・。」

→CIWS(近接対空機関砲)事案の説明は長くなるので省略するが、田村氏は空自出身であるところ、陸海空の垣根を越えた自衛官幹部同士の連帯意識がお分かりいただけると思う。(太田)

 T:「200発丁度撃つことを競うなどということは、平時の発想。全然実戦的ではない。防衛庁を何故国防省にしなければならないかというと、総理府の平時の発想の役人が危険だから訓練は辞めろと言いかねないからだ。内局の役人はさすがにそんなことは言わないだろう。」
 O:「あえて、ずれたことを言うが、試験不正にせよ、CIWS事案にせよ、海上自衛隊の仕事熱心さが現れている。不祥事ベースで比較すれば、陸、空に比べて海の規律は相対的に良く維持されているという見方もできるのではないか。そして、陸海空を通じて、民間に比べれば、はるかにまじめに仕事をしていると思う。」

→国防省にすることは、当時で言えば、総理府用の資料を余分に作る必要がなくなる、ということくらいしかメリットはない。つまり、総理府は実質的には何の権限も持っていない。田村氏の勉強不足が露呈している箇所。
 私は、やはり空とぼけた話で答えている。陸をダシにはしているが、要は私の発言は、田村氏の出身母体である航空自衛隊が不祥事の巣であることを婉曲に指摘したもの。(太田)

 T:「その通りだ。緊急援助隊に行っても、自由恋愛はなかったようだしね。ところで、日米防衛関係をどうみているか。」
 O:「最悪の状況だと思う。」

→ここは私は実にストレートに答えている。
 それに対して田村氏が何も言わなかったところを見ると、彼もそう思っていたのだろう。その点では元自衛官たる田村氏は、並の防衛省キャリアよりは鋭い。(太田)

 O:「不審船事案だって、今まで同じ様なことはいくらでもあったのに、今回は、米大使館から通報があったので大事になっただけのこと。米国が、北朝鮮に対する日本の対応を歯がゆく思っており、不審船事案を仕掛けてきたわけだ。」
 T:「なるほど。」

→ここは、私が深刻な発言を重ねて行い、田村氏が意表をつかれた、というところか。(太田)

 T:「いずれにせよ、役人こそ日本の選良。これは、日本の歴史を通じて変わらない。現在の政治家連中が本当に国家をリードするようになったら、日本も終わりだ。それだけに、役人には頑張ってもらわなければならない。」

→これは防衛省キャリア、就中私に対する元自衛官たる田村氏によるゴマスリとも考えられるが、政治家評については、(田村氏自身も含め(?!))田村氏の言うとおりだし、役人の方がまだ政治家よりはマシだという点も全く同感だ。

3 終わりに

 これから田村氏の不祥事が暴かれていくことを期待しているのですが、どうなりますか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<太田>(2008.1.5)

 田村氏は1月4日逝去されました。
 謹んで哀悼の意を表します。