太田述正コラム#1850(2007.7.4)
<スターリンと毛沢東の伝記>(2008.1.4公開)

1 2冊の洋書

 既に私の以前のコラム(#1775と#744〜746)でご紹介済みの洋書2冊が届きました。
 とにかく、会費として海外の読者からいただいているアマゾン・ギフト券を使わないでいると、1年で無効になってしまうので、どの本にするか随分考えたあげく、2004年に出たA:MontefioreのStalin: The Court of the Red Tsarと、2005年に出たB:Jung ChangとJon HallidayによるMao: The Unknown Storyを注文したのです。
 今年出た、同じMontefioreによるYoung Stalin(コラム#1775)にしなかったのは、まだハードカバー版しかなく、高いからです。
 Mao: The Unknown Storyは既に邦訳(ユン・チアン, J・ハリデー『マオ−−誰も知らなかった毛沢東』上下 講談社)が出ていますが、ペーパーバック版の洋書の方が安いので洋書にしました。一つだけ残念なのは、当然のことですが、人名や地名の漢字表記が分からないことです。
 本当は、古本(とはいってもほとんど汚れていないものも多い)にしたいところなのですが、それだとアマゾン・ギフト券が使えないのでやむをえません。

2 その見た目

 中身については、読んでからおいおいご報告させていただくことにして、今回はこの2冊の見た目についてです。

 まず、頁数が大変なものです。
 Aは785頁、Bは801頁もあります。
 Aの場合、これはいわば第2巻であって、後に刊行される第1巻のYoung Stalinが控えていることを考えると驚異としか言いようがありません。

 また、注の類も充実しています。
 Aは、随所に脚注が付されているほか、巻末には、典拠注が83頁、参照文献が13頁、索引が29頁ついています。
 Bは、やはり随所に脚注が付されているほか、巻末には、協力者リストが3頁、インタビュー相手が14頁、参照資料館が2頁、巻末注が86頁、参照文献が51頁、索引が25頁ついています。
 どちらにも地図や写真の類も多数掲載されています(注1)(注2)(注3)。

 (注1)その分は、上記頁数に入っていない。
 (注2)スターリンと毛沢東が一緒に写っている写真がAにもBにも1枚ずつ載っているほか、Bにはスターリンの死を毛沢東らが悼む写真が2枚載っている。スターリンと毛沢東の関係を示しているかのようだ。
     また、Aにはスターリンが家族・・特に娘のスベトラーナ(Svetlana)・・と一緒に写っている写真が沢山出てくるが、Bには、毛沢東が家族と一緒に写っている写真は一枚もない。これは、毛沢東の家族愛の希薄さを示しているかのようだ。
     ちなみに、表紙に掲げられている写真は、Aのスターリンは多数の人々と一緒に写っているものだが、Bの毛沢東は一人だけが写っているものだ。
 (注3)Aにはスターリンの系図が載っているが、Bには毛沢東の系図は載っていない。一族の面倒などみなかった支那離れした毛沢東を示しているかのようだ。

 どの点から見ても、日本人の書く歴史や伝記は、逆立ちしてもAやBにかなわないものばかりです。
 結局、見た目だけでも、中身だって相当濃いだろうな、と思わせる迫力をAやBは持っています。

 言わずとしれた、スターリン(1879〜1953年)はソ連の、毛沢東(1893〜1976年)は中共の独裁者であり、どちらも何千万人単位で国民を死に追いやった暴君ですが、見た目だけでもこれだけ迫力のある伝記を、それぞれ死後51年、29年経っても出してもらえるのですから、もって瞑すべきでしょう。

(続く)