太田述正コラム#2274(2008.1.2)
<社会新報新年号について(続)>

1 始めに

 私がコラム#2273(未公開)の中で社会新報新年号掲載のインタビューの一部を、

 「<軍事ジャーナリストの>清谷<信一>さんは、日本の防衛省の装備品輸入が高くなる最大の理由は、商社を介在させているからというより、予算制度上、一括して契約しない単年度方式がとられてきたからだと指摘します。(ただし、2007年度から部分的に他年度方式が始まった。)
 そして、商社を介在させないとなると、国防費が日本とほぼ同じ英国では、国防省の外局であるDE&S(Defence Equipment & Support)が装備調達を担当しているところ、DE&Sは約2万9,000人の要員を抱えているのに対し、日本の防衛省の装備施設本部と内局の経理装備部を合わせても装備調達要員は850人に過ぎず、日本は要員を2万8,000人も増やさなければならなくなる。他方、日本での防衛専門商社や総合商社の防衛部門の要員は2000人くらいであり、日本はある意味、極めて効率的な装備調達を行っているという見方もできると指摘します。」

と要約紹介したところ、掲示板上で有料読者のお一人からコメントが寄せられ、私との間で以下のようなやりとりが行われました。

<大阪視聴者>
>軍事ジャーナリストの清谷信一さんが、「国防費が日本とほぼ同じ英国では、国防省の外局であるDE&S (Defence Equipment & Support)が装備調達を担当しているところ、DE&Sは約2万9,000人の要員を抱えているのに対し、日本の防衛省の装備施設本部と内局の経理装備部を合わせても装備調達要員は850人に過ぎず、日本は要員を2万8,000人も増やさなければならなくなる。」

 米軍の装備調達を実行している部署でも、29000人の要員を抱えていなかったと思います。
 DE&Sは装備調達のみを担当しているのでしょうか。総兵力が20万人程度で装備調達要員が3万人近くいるとは不自然です。

<太田>
 太田述正コラム#2273(2008.1.1)<社会新報新年号について>は未公開コラムなので、読んでおられない方は何のことかと思われたかもしれませんね。
 申し訳ありませんが、どなたか、英国や米国の装備調達部門の要員数をネットで調べていただけませんか。
 なお、これら部局は、装備の(輸入を含む)調達と装備の海外輸出も担当していると思われます。


<大阪視聴者>

DE&S(Defence Equipment & Support)は2007年にDPA (Defense Procurement Agency) とDLO (Defense Logistics Organization) が合併した組織のようですね。

http://www.jri.co.jp/consul/column/data/299-takahashi.html
に2004-5年ですが、DPAとDLOについて日本総研の研究員が簡単な解説を行っています。

 軍事ジャーナリストの清谷信一さんは、装備購入という狭義の装備調達と、装備の管理や施設の管理も含めたDE&Sを、混同しておられるかもしれません。

 意識的か勘違いかわかりませんが、石場防衛大臣とも対談本を出版されているかたで、影響力は大きいと考えます。今後、英国装備調達3万人説が一人歩きすることは問題です。
 
2 所見

 大急ぎで私も調べてみました。

 まず、私の記した「これら部局は、装備の(輸入を含む)調達と装備の海外輸出も担当していると思われます。」は間違っていました。
 英国の場合、国防省のDefence Export Service Organisation (DESO。要員500名弱)が装備の海外輸出を所管しており、DE&Sが所管しているのは英軍のための装備調達だけですね。
 なお、DESOは今年の4月にUKTI Defence and Security Groupと改称されて産業・開発省(UK Trade & Investment) に移管されるということです。
 (以上、
http://en.wikipedia.org/wiki/Defence_Export_Services_Organisation
。1月2日アクセス(以下同じ))

 さて、大阪視聴者さんにご教示いただいたように、英国防省のDE&Sは、昨年、DPA (装備調達。要員9,000名) とDLO(装備補給。要員20,000名)が合併して出来たわけです(
http://en.wikipedia.org/wiki/Defence_Equipment_&_Support
)。
 (DLOは、装備のメンテナンスと更新を行うとともに装備の保管・配置の調整を行うことで、事前訓練、部隊配備、部隊訓練、部隊運用、部隊における整備・修理、の支援を行ってきました(
http://en.wikipedia.org/wiki/Defence_Logistics_Organisation
))。
 なお、DE&Sは施設(の建設・維持)を所管しておらず、これを所管しているのは英国防省のDefence Estates(要員4,000名超)です(
http://en.wikipedia.org/wiki/Defence_Estates
)。

 ですから、英国防省のDE&S(要員29,000名)に相当するわが防衛省の要員数は、日本の防衛省の装備施設本部の要員から旧防衛施設本庁施設関係要員を差し引き、内局の経理装備局の要員から旧経理局要員を差し引き、これに陸海空それぞれの補給本部の要員を加えて算出しなければならない、ということになります。
 ぜひ、読者で現在の防衛省の組織にお詳しい方に、個々の数字を教えていただきたいものです。
 われわれの知りたいのは、英国防省の旧DPA(要員9,000名)に相当するわが防衛省の要員数です。
 この数字に清谷さんがお調べになった、防衛専門商社や総合商社の防衛部門の要員2000人くらいが正しいとして、これも勘案すれば英国と日本の装備調達に係る要員数の総合的な比較ができますね。
 とりあえずの私の感じでは、英国9,000名、日本500名弱(このほか商社に2000人)といったところでしょうか。
 ただし、どうやったところで、これはアバウトな比較でしかないことに注意が必要です。
 というのは、英国のDE&Sや日本の装備施設本部が所管している装備調達は、それぞれ英軍と自衛隊が調達している装備の全てではなく、しかも、DE&Sと装備施設本部が所管している装備の範囲は異なるからです。

 いずれにせよ、大阪視聴者さんご指摘のように「英国装備調達3万人説が一人歩きすることは問題です」。
 仮に適正要員数が9,000名程度だとすれば、防衛省は装備調達を所管する新たな所管独立行政法人(ただし、民営化は不可)を作って、防衛省が既存要員の500名弱に加えて6,500名強自衛官を削減して要員7,000名を捻出してこの法人に移管し、一方で商社の既存要員2,000名にこの法人に移ってもらえば、数字的には達成できるわけであり、そんなべらぼうな話ではなくなるからです。
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<バグってハニー>

 初心に帰って、戦闘用航空機ではなくて戦闘機(含攻撃機・偵察機)としてミリタリー・バランスのFTR/FGA/RECCEを足したらどうですかねえ(コラム#2250参照)。そうすれば、*つきの対潜哨戒機、練習機を除く戦闘用航空機をすべてカバーすることができます。練習機は総数がちょっと分からなさそうですし。日本は英国の約4分の3ですね。

英国 日本
戦闘機(含攻撃機・偵察機) 516(注3) 380(注4)

(注3)トーネード 303機、ジャギュア 79機、ハリアー 86機(以上空軍)、シーハリアー 48機(以上海軍)。保管機を含む。ミリタリー・バランス2000年版から。
(注4)F-15J/DJ 203機、F-4EJ 104機、F-1 46機、RF4-E/EJ 27機。保管機を含む。防衛白書平成12年版から。

<太田>

 どうもありがとうございました。
 攻撃ヘリについては、注でバグってハニーさんのご提案を記させていただき、戦闘機については、ご提案をそのまま採用させていただきます。
 これに応じて、本文も書き換えることになります。
 日本評論社が改訂版を出してくれればいいのですがね。
 これで、今期は何もしていただけなくても結構ですが、もちろん自発的「貢献」をされることは大歓迎です。
 ところで消印所沢さん、日本の軍事愛好家の間での最新の話題を折に触れて提供していただくというのはいかがでしょうか。