太田述正コラム#2199(2007.11.27)
<守屋立件の構図をめぐって>

1 始めに

 守屋に対する事情聴取の期日が迫っているらしく(
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071127it01.htm?from=top
。11月27日アクセス)、某テレビ局が、私の守屋評の録画撮りをしたいと言ってきました。
 本来ならお断りするのですが、しゃべり方改善のトレーンニングになると思い、例によって自宅近くの公園で昼過ぎ、録画をしました。
 この際、検察の守屋立件の構図とそれに対する私の評価についてご説明しておきたいと思います。
 (これは、コラム#2198(未公開)の最後の部分の補足でもあります。)

2 守屋立件の構図

 (1)全般

 皆さん、検察を応援されていませんか?
 でも検察だってしょせん体制側ですから、政官業の癒着体制の根幹をゆるがすような立件をするわけがありません。
 だからこそ、検察は守屋に対する山田洋行等による接待というゴミのようなことばかり追いかけ、山田洋行等への防衛省OB等の天下りという、より重要な問題には目をつぶろうとしているのです。
 そして、私の見るところ、検察は、守屋一人を立件し、政治家には波及させない形で本件を収束させようとしているのです。
 検察としては、世論に検察もよくやっていると思わせればそれでよいのであって、それ以上仕事をする義理も必要もないのです。

 (2)強引な検察その1・・ゴルフ・飲食接待が賄賂?

 「これまでの調べで、守屋氏が約11年前から、宮崎容疑者から300回以上のゴルフ・飲食接待を受け、その費用は収賄罪の時効にかからない過去5年間だけで、500万円を超えることが判明。・・特捜部は、宮崎容疑者が山田洋行時代から、CXエンジンの受注などを巡り有利な取り計らいを受けることを期待して接待を繰り返し、守屋氏もそれを認識していた疑いが強いと判断。」(讀賣上掲)

 確かに、特定の業者とばかりゴルフ・飲食を共にしたことといい、その頻度といい、守屋に脇の甘さがあったことは否定できませんが、これは多かれ少なかれ他省庁のしかるべきキャリア官僚もやっている(、少なくとも私が役所を飛び出した6年半前にはやっていた)ことですし、しかもこれだけ長期間に継続的にゴルフ・飲食を共にしたことは、友人関係であったとの守屋・宮崎両名の説明を裏付けているとも言え、賄賂性を認定することは容易ではないはずです。

 (3)強引な検察その2・・守屋による便宜供与はあったのか?

 「山田洋行による装備品の代金水増し請求問題が02年に発覚した前後には、同社社員が、当時、防衛局長だった守屋氏に相談、その後、同庁が異例の処分見送りを決めている。」(讀賣上掲)

 この具体的案件に関しては、水増しを防衛省の側から山田洋行に持ちかけたという噂もあり(ソースはあかせない)、守屋による便宜供与であったかどうかは定かではありません。しかもこの時、防衛局長であった守屋には職務権限がありません。

 「守屋武昌前防衛事務次官(63)が2004年、陸上自衛隊の生物偵察車に搭載する生物剤検知装置の調達をめぐり、防衛専門商社「山田洋行」の子会社が輸入代理店になっている英メーカー製が採用されるよう部下に指示した疑いがあることが26日、関係者の話で分かった。陸自側は機密性を理由に別メーカー製への変更を検討していたが、最終的に前次官の意向に沿う形で英メーカー製導入が決まっている。」(
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20071127AT1G2604426112007.html
。11月27日アクセス)

 こんな細かい話にまで次官の守屋が口を出すとは常識的には考えられません。

 「守屋武昌前防衛事務次官(63)が今年2月、海上自衛隊の次世代護衛艦のエンジン選定を巡り、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と競合する英メーカー製の導入を内定した担当部局に、部下を通じて再検討を求めていたことが25日、関係者の話で分かった。GEは山田洋行元専務、宮崎元伸容疑者(69)が設立した商社「日本ミライズ」とコンサルタント契約を結んでおり、前次官が同社に有利になるよう影響力を行使した疑いがあるという。」(
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20071126AT1G2500Z25112007.html
。11月26日アクセス)

 艦艇用ガスタービンエンジンのメーカーは世界で基本的に英ロールスロイスと米GEの2社しかないのであり(典拠省略)、その両者間で慎重に選定するよう次官が指示したとしても何ら驚くには値しません。

 「5月から6月中旬にかけて、部下が政府契約の基本方針を踏まえ、エンジン調達を一般競争入札にすることを説明したのに対し、守屋前次官は理由も尋ねずに「なぜ随意契約ではだめなのか」と繰り返し言ったこともわかった。守屋前次官は6月中旬、事務次官の記者会見前に部下が説明した場でも、多くの職員の前で同様に発言していたことがすでに判明しており、「ひたすら随意契約で押し通そうとしている」と感じた防衛省関係者もいたとされる。」(
http://www.asahi.com/politics/update/1125/TKY200711250149.html
。11月26日アクセス)

 守屋は、GEが日本ミライズだけと代理店契約をしている以上一般競争入札する意味はない、と言っていただけのことであり、このことをもって日本ミライズへの便宜供与ととらえるには無理があります。

 「また、6月以降、当時の久間章生防衛相の指示もあって防衛省の装備品調達全体を見直す中で、商社を介さずにメーカーと直接取引する方法の検討が始まった。この件について7月上旬に報告を受けた際、守屋前次官は「そんなことは必要ない」という趣旨の発言をし、猛反発したという。」 (朝日上掲)
 
 ここでは守屋は、久間氏が、山田洋行の側に立って、日本ミライズへの嫌がらせをやっていると見てそれに反発したと考えられるのであって、やはりこれを日本ミライズへの便宜供与ととらえるには無理があります。

3 守屋(だけ)を立件すれば何が起きるか

 守屋を、しかも守屋だけを立件することで世論は溜飲を下げるのかもしれませんが、その結果何が起きるでしょうか。
 政官業癒着体制をゆるがしかねない脇の甘いゴルフ・会食を重ねた守屋は懲罰されます。
 そしてこれまた政官業癒着体制をゆるがしかねない内輪もめを引き起こした山田洋行のオーナー(
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007112702067651.html
。11月27日アクセス)は、守屋立件のために道連れにされた宮崎氏らとともに喧嘩両成敗的大損失を被り、懲罰されます。
 かくして国民の暗黙の了解の下で存続してきた政官業癒着体制は、ほとんど無傷で温存されることになるでしょう。
 めでたし、めでたし。

 なお、「ほとんど」というのは、こういうことです。

 第一に、(法務(検察)官僚を含む)全官庁のキャリア官僚は、事実上業者とインフォーマルに意見交換する場を奪われることになり、行政はこれまでよりも一層業界の実態から乖離した形で行われるようになりかねないということです
 (そんなことにならないようにするためには、かねがね私が提唱しているように、業者の経費負担による会食等を公認するとともに、役所の会議費(交際費)を大幅に増やし、経費を官側が負担する形での業者との会食等の機会も増やす一方で、業者との会食等の完全な情報公開を義務づける方策をとる必要があります。)

 第二に、今後は官僚は、自分の親戚や友人が幹部をしている業者に関わる案件においては、当該業者の利益になるような発言等は控えざるを得なくなり、政策をめぐる議論が妨げられることになりかねないということです。

 すなわち、官僚機構のパーフォーマンスがこれまでよりも一層低下した形で政官業癒着体制が維持されていくことになりかねない、という危惧の念を私は持っているのです。

4 終わりに

 捜査機関にできることにはそもそも限りがあります。
 過大な期待をして検察に声援を送ったところで裏切られるだけです。
 政官業癒着体制の打破、すなわち体制変革は、国民の皆さん自身の手でやらなければならないし、国民の皆さん以外にはできないのです。
 その方法として、さしあたり一番手っ取り早いのが政権交代です。
 まことに簡単なことではありませんか。
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太田述正コラム#2200(2007.11.27)
<縄文モード・弥生モード論の模索>

→非公開ですが、
 私の縄文モード・弥生モード論については、コラム#276のほか、116、154、159、226、358、475、629、631、807、826、827、829、1057等を参照してください。
 また、武士論(コラム#614)や東北地方論(コラム#52)もどうぞ。