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太田述正コラム#2168(2007.11.9)
<皆さんとディスカッション(続x3)(その2)>

<一韓国人>

 太田様、当時の貴重な文書をどうもありがとうございます。
 私は、台湾が親日だということは分かります。しかし、それは独立のため中国からのために、政治を思想化していることで、決して日本の「(文化破壊的の)武断植民地支配」を賛美(肯定)しているのではないです。例えば、高金素梅さんは日本の台湾人虐殺を韓国のテレビでも悲惨に語って頂いていました。さらに、韓半島の虐殺された歴史をみてみると、日本帝国主義は、否定されるはずの事をしたと感じる。それはなぜかというと、日本帝国が東学農民軍を虐殺していたのは最近の研究でわかっていて、つまり、韓国を植民地化する前から、韓国人に対して民族抹殺を行って(http://news.media.daum.net/culture/art/200710/25/yonhap/v18603532.html)。朝鮮総督府はそれで、侵略後も沢山韓民族が韓国人というだけで殺され、のちのち日本人になることに強制されました。皇民化政策とよばれるものです。ハングルもうばわれ、それに対した愛国志士達が 逮捕、投獄されて 命をなくしたりした(유관순(柳寛順)。
 そこで、質問します。
 太田様は日本の帝国主義を肯定していますか。

<太田>

 前回、まだ話の途中だったのですが、まあよろしいでしょう。
 日本帝国による植民地化ないし植民地統治(以下、「植民地統治」と言う)は、宗主国が殺戮した原住民の割合、統治中に餓死等不慮の死を遂げた原住民の割合、及び宗主国による収奪度が、他のいかなる列強による植民地統治よりも小さかったことはほぼ間違いないでしょう。
 また、日本帝国の植民地統治は、原住民への教育投資の大きさ、原住民文化の尊重・振興といった点で、他の列強の植民地統治には見られぬユニークなものであったこともほぼ間違いありません。
 つまり、日本帝国の指導層は、安全保障の観点から、アングロサクソン的文明開化の担い手として、その恩沢を広く分かち合ってもらうために周辺地域の植民地化を推進したのであって、周辺地域の収奪を目的として植民地化を推進したのではない、ということです。
 いちいちコラム番号は挙げませんが、ぜひ英国のインド等統治、米国のフィリピン統治、そして日本の朝鮮半島統治などの関連バックナンバーに目を通していただけたらと思います。
 ただし、原住民側から見れば、それはいらぬおせっかい以外の何物でもなく、とりわけ、それまで日本に対して華夷秩序的世界観の下で優越感を持っていた朝鮮半島の当時の原住民の一部が、日本帝国ないし日本人に対して憤怒の感情を抱いたことは当然でしょう。
 とにかく、分かっていただきたいのは、日本帝国・・正式に発足したのは大日本帝国憲法が施行された1890年・・の指導層は、日本の文明開化を推進したのと、同じ立場、同じ情熱を持って台湾や朝鮮半島の文明開化を推進した、ということです。
 その成果が、現在の経済的に繁栄した自由民主主義的日本であり、台湾であり、韓国なのです。
 一般に台湾は親日的だが韓国は反日的だと言われていますが、毎日、朝鮮日報の日本語版と英語版を読み続けている私は、時に韜晦的言辞が弄されるとはいえ、韓国の人々の無意識的コンセンサスを踏まえていると思われるところの、その論調の親日的姿勢をはっきり感じ取ることができています。
 それは当然のことであり、反日(反日本帝国)であることは反文明開化(反経済的繁栄・反自由民主主義)を意味し、それは日本人、台湾人、韓国人のいかんを問わず、自己否定以外の何物でもないからです。
 だからこそ、私は一日本人として、このように文明開化の歴史を共有したところの旧日本帝国領の住民の子孫の人々に限りない親近感を覚えるのであり、しかるがゆえに、彼らの無条件での日本への移住容認を提唱しているのです。(なお、chunさんのコメントは、コラム#270、271を踏まえたものです。)

<ikeda> 

 太田さんの防衛庁時代の米露中の機関員と思われる方々との思い出話(コラム#2165(未公開))を興味深く読ませていただきました。
 既に、自衛隊員の中国への無断渡航等、新聞で報道されている記事を読んでましたが、あれは氷山のごく一部なんでしょうね。
 スパイ防止法や日本版CIAなど作ってほしいものですが・・
 ところで、最近の太田さんのコラムでは、米機関が小沢氏を脅した可能性大だと書かれてますよね。
 古い話ですが、あの70年代の「ロッキード事件」もやはり米国発の疑獄だったのでしょうか? (いろいろな所で、今も言われてますが)

<MS>

 コラム#2159(小沢辞任)に関して質問<があります。>
 小沢さんを脅迫することによる米国のメリットは何なのでしょうか?
 私には、自衛隊の給油活動自体が、米国にとってそれほど重要だとは思えません。単に小沢さんにお灸をすえるだけなら、安倍首相の在任時に、なぜ同じ事をしなかったのでしょうか?
 今回の騒動で一番得をしたのは、福田さんのように見えます。安倍さんと福田さんの最も大きな違いの一つが対アジア政策であることを考えると、米国の思惑に沿った形で、例えば「日朝国交正常化」を行うことを福田さんが確約した上での、米国からの援護射撃の意味があったのではないでしょうか?
 太田様はどのようにお考えですか?

<太田>

 ロッキード事件については、自分で調べたことがないのでお答えは控えさせていただきます。
 つい最近も申し上げましたが、米国は1980年頃から一貫して、日本を、集団的自衛権を行使できるようにした上で、拡大NATO的なものに加盟させるという対日戦略を推進してきました。
 私はインド洋での給油は、事実上の集団的自衛権の行使であり、本格的な集団的自衛権行使への第一歩であると考えていますが、米国の認識も同様であると思います。
 しかも、補給艦に随伴している護衛艦は、これまた事実上収集した諸情報を周辺の米艦艇等に提供しているはずであり、このような意味でも日本は事実上集団的自衛権の行使に踏み込んでいることになります。「
 (この関連で、オーストラリアのアデレード大学のジャイン(Purnendra Jain)教授は、米国等は日本政府に対し、給油及びその他の活動をインド洋において継続するように強い圧力をかけている」と指摘している(
http://www.atimes.com/atimes/Japan/IK09Dh01.html
。11月9日アクセス)ところ、「その他の活動」とは言い得て妙だと思いませんか。)
 ですから、日本が補給艦と護衛艦をインド洋から撤収するということは、上述のような米国の対日戦略の一大蹉跌を意味するのであり、米国は小沢さんの動きに苛立ち「お灸をすえ」ざるをえないであろうと私は見ているのです。
 なぜこの時期に、という点ですが、大連合に向けての動きは安倍首相辞任前後から既にあったようです(典拠失念)から、その頃から既に米国は「お灸」をちらつかせて小沢さんに迫っていたのではないか、と私は推測しています。

<かわにゃ>

 始めまして。HNで失礼します。
 軍学者の兵頭二十八氏や神浦氏は、北朝鮮には核実験能力はない、と断言していました。2007年秋現在、そのことについてはだんまりです。
 日本が核武装する事に賛成の国民は15%です。対して韓国は65%が賛成しています。
 核武装のネックはこの通り世論です。自民党が核の選択をしたら、選挙で大敗しますから、核武装は不可能でしょう。
 先に台湾と韓国が、核開発のかなりのところまで行ってしまうのでしょう。
 それを指をくわえて眺める日本、というのが10〜20年後の極東でしょう。
 以上です。

<Michisuzu>

 私は日本はアメリカにとって安全保障上地理的(極東防衛)にも各種防衛上(資金力技術力)も決して欠くことが出来ない存在にもともとあると思うのですが?どうも其れを日本人は普段忘れているのかどうなのか?すぐにアメリカに捨てられたらどうするの?って思想に振り回されているように思うのですが?
 そこのところどうなんでしょうか?
 日本がアメリカとも世界とも対等に話が出来るようにするのは簡単ですよね。
 核兵器を20個も独自で所持すればすぐ済むのに?
 日本の技術ならば1年もすれば簡単なはずです。
 実際には無駄な専守防衛の為に5兆円もの防衛費を使うくらいならば、半分にして残りで核兵器の開発所持、ミサイルの開発にまわしたほうが本当に日本国民の為になると思います。
 核に対するアレルギーは実際には戦後生まれがこんなに増えたらもはやそれほど大きくは無くなっています。
 ご意見伺いたく思います。

<太田>

 私は消極的核武装論者です。
 そもそも、私は防衛庁を防衛省にすることにも消極的に賛成するにとどめました。
 なぜか、そんなことより、国民世論の理解を得た上で、日本の自立、そして安全保障に政治家や防衛省や外務省等が真剣に取り組む体制を作る方が先決だからです。
 軍事に無関心で日本版CIAもスパイ防止法もない日本、そして米国の保護国たる日本が、核武装して一体どうしようというのですか。
 子供に拳銃を持たせるようなものです。
 いささか極論ながら、パキスタンの核武装の方が、諸外国はまだ安心しておられるのではないか、と言いたくなる私の気持ちを分かってください。

(一応、完)

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