太田述正コラム#2141(2007.10.23)
<防衛省不祥事報道に思う(続x3)>

1 始めに

 テレ朝(関東では10チャンネル)での昨夜の録画撮りの冒頭、私はインタビュー相手の記者にこう言いました。
 「テレ朝だって日本の癒着構造の一端を担っています。本日のインタビューの編集は心してやってください。私の発言のどの部分を、どんな形で取り上げるのか、私の元々の発言に照らし、後で私のブログで採点しますよ」と。
 本日の防衛省不祥事報道コラムは、まずここから始めましょう。

2 テレ朝

 本日朝のテレ朝「スーパーモーニング」で守屋問題がとりあげられ、私の発言がその中で紹介されました。
 視聴しただけなので正確ではないけれど、次のような感じでした。

 ナレーション:「癒着はこれにとどまらないといいます。」
 太田:「防衛省<キャリア>・・は狭い分野の仕事しかしていない」「防衛省のキャリアは全員守屋なのです。」「守屋はこれからも次々に生まれてくるでしょう。」

 さて、私の元々の発言は、「全省庁が業者と癒着関係にあります。(それに更に自民党系の政治家がたかっています。)守屋の場合、それが余りにカリカチュア的な癒着であったために世間を騒がせてしまったというだけのことです。問題はどうしてそんな形のヘマを守屋がやらかしたか、です。防衛省キャリアが世の中の動きが分かっていないからです。分からないのは、彼らが世の中から切り離されており、かつ狭い分野の仕事しかしていないからです。」といった趣旨のものであり、比べるとその違いは明らかですよね。
 まあ、テレ朝が可哀想だから採点は止めておきますが、同じ番組の中で、旧大蔵省出身の伊吹自民党幹事長の「<守屋氏は>本当に困った人だ」というコメントが紹介されていました。 
 この意味するところはお分かりですよね。

3 新聞
 
 (1)民主党

 「民主党の小沢一郎代表の二つの政治団体が、防衛省の守屋武昌・前事務次官との不透明な関係が明らかになった防衛専門商社「山田洋行」(東京都港区)から寄付を受けていた問題で、両団体の事務所は22日、総額が600万円であることを明らかにした。事務所担当者は毎日新聞の取材に「山田洋行と特別な関係があるわけではないが、誤解のないようすべて返金する」と話している。」
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071023k0000m010145000c.html
(10月23日アクセス。以下同じ)

→キタキタ! 
 だからこそ自民党がすんなり守屋喚問を認めたわけです。東元自由党衆議院議員を山田洋行に顧問として「天下り」をさせたのも小沢さんのようですね。どう考えても小沢さんは「山田洋行と特別な関係がある」としか思えませんねえ。
 小沢さんと山田洋行を結びつけた人物も大体想像がつきます。
 民主党が防衛省不祥事を知っていて半年以上にわたって取り上げようとしなかった理由もこれでほぼはっきりしました。
 民主党の心ある人々に向かって早く小沢おろしをやれ、と私がこのコラムで呼びかけていたのに聞かないからこんな窮地に立たされるのです。
 そもそも、旧自由党は、自民党の中の最もダーティーな人々が棲息していた政党です。 どうしてこんな自由党と合併したのよ。
 これじゃ、自民党壊滅の前に民主党壊滅かもね。
 民主党よ。せめて、自民党を道連れにして壊滅してください。
 
 (2)米国

 「新たに不正経理疑惑が浮上しているのは、山田洋行の米国現地法人「ヤマダインターナショナルコーポレーション」。米ワシントンに本社を置き、 ニューヨークやロサンゼルスにも支店がある。同社の元社長(70)は、元専務の側近と言われる。元専務が昨年6月に山田洋行を辞めた後、元社長も退任し、元専務が設立した「日本ミライズ」(港区)の米国本社「日本ミライズUSA」(ロサンゼルス)の代表取締役に就任した。複数の山田洋行関係者は、「ヤマダインターナショナルは、元社長の在任中、不正な経理操作で数億円の裏金を捻出し、その一部を米国に出張した旧防衛庁幹部や米国の防衛関連企業幹部らの接待に使っていた疑いが強い」と指摘。また、ヤマダインターナショナルにプールされていた資金のうち 約1億円は、元社長がミライズ側に移籍後、行方が分からなくなっているという。」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071023it01.htm?from=top

→なるほど。GE等の米国企業にとって商社を介在させるメリットがこんなところにもあったのですね。GE幹部もタダメシ・タダゴルフのご相伴にあずかっていたわけです。そのほぼすべての原資が日本国民の税金から出ている、というのは何ともしゃくに障りますが・・。

 (3)防衛省への便宜供与

 「防衛専門商社「山田洋行」(東京都港区)が、自衛隊の将官クラスを含む旧防衛庁幹部OBの天下りを継続的に受け入れていたことが、・・明らかになった。現在、所属している天下りOBは計八人。多い時には十数人の再就職を受け入れていた。過去五年間に同社が防衛省から受注した契約高は計百七十四億円。守屋武昌前防衛事務次官(63)へのゴルフ接待が明らかになった同社の元専務(69)が、OBの受け入れを積極的に働きかけていた。巨額受注の 見返りに、同社が天下りを受け入れていた実態が浮かび上がった。・・防衛省からの受注で上位を占める三菱重工業や川崎重工業など大手メーカーも、同様に同省OBの天下りを受け入れている。しかし、他のメーカーなどと比べると、社員約百二十人の山田洋行の天下り受け入れ率は際立っているという。OB以外にも、同省職員の家族も採用していた。同社に現在、天下りしているのは陸自三人、空自三人、海自一人、旧防衛庁本庁一人の計八人で元陸将や空将もいる。肩書は顧問や相談役。このうち自衛官OBの主な業務は、自衛隊の記念式典の際、自分が所属していた部署に顔を出したり、同社の社員が防衛省にあいさつに行く際、口添えをしたりする程度だが、年収は七百万−八百万円に上るという。」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007102302058474.html

→平均年収750万円として、8人で年6,000万円のヤミ年金が国民の税金から支払われている勘定です。もっとも、これ以外に「天下り」でない防衛省OB・・元専務も元自衛官です・・山田洋行や日本ミライズに多数勤務しているとも言われており、このほか、防衛省職員の家族も働いていると言うことなので、この両社を併せて年1億円以上防衛省に貢いでいると考えて良いのではないでしょうか。(東元議員に支払われている顧問料はカウントしていません。)(太田)

 「元専務から受けたゴルフ接待は1997年ごろから2005年までに二百数十回に上る・・関連会社の運営するゴルフ場のプレー代は、ビジター料金で1人あたり2万5000円程度。守屋氏夫妻は会員権を持っていなかったが、元専務の取り計らいで、ゴルフ場側は1人8000円の会員料金にしていたという。ビジター料金との差額は、数百万円に上る。また、倫理規程が定められた00年以降、ゴルフ場の利用者台帳には、守屋氏夫妻は「佐浦丈政」「松本明子」という偽名で記載されていたという。」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071023i101.htm?from=main1

→仮にこの計算を認めたとしても、・・というのは、私はゴルフ代は守屋(夫妻)が全額払っていたとみなすべきだと考えているからです・・タダ酒・タダメシや娘さんへの便宜供与等を含めて全部をカネに換算して、ゴルフ代:(15,000円-8000円)x2人x250回=850万円、それにプラスアルファで1000万円にはならないのではないでしょうか。
 しかも、これは10年間くらいにわたっての話ですから、一年あたり100万円です。
 要するに、山田洋行(日本ミライズを含む)による防衛省に対する便宜供与総額のうち、守屋氏の取り分は、どう大きく見積もっても100分の1内外にしか過ぎないということになります。
 ですから、守屋氏への便宜供与より以上に問題にすべきなのは、防衛省の山田洋行への天下りの方なのです。
 そして更に言えば、本当に問題にすべきは、すべての防衛関係企業への防衛省OBの天下りの方であり、全省庁におけるOBの関係企業への天下りの方なのであり、それにたかっている自民党系政治家達なのです。(太田)

 (海自の、いわゆるデータ隠し(20万ガロン/80万ガロン)問題を次回取り上げます。)
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 有料版のコラム#2142(2007.10.23)「あの英帝国を興し滅ぼした米国(その2)」のさわりの部分をご紹介しておきます。
 コラム全文を読みたい方はこちらへ↓
http://www.ohtan.net/melmaga/

 (コラム#2141のうっかりミス・・10年分の話を1年の話として誤記した・・をブログで訂正してあります。)

3 大英帝国の終焉

 いつ大英帝国が終焉を迎えたかについて、英国内では様々な意見があります。
 ・・
 ・・私に言わせれば、・・大英帝国の終焉の時期は、日本軍による1942年2月のシンガポール陥落か、1944年3月のインパール作戦発動に伴う英領インド侵攻か、そのどちらか一方を選ぶべきなのです。
 ・・
 ただ、・・終焉の時期については様々説がありえても、既に大英帝国が存在していないことはみんな知っています。
 それではどうして大英帝国は終焉を迎えることになったのでしょうか。
 ブレンドンは、これについて、今一つ腑に落ちない以下のような趣旨のことを記しています。

 1897年のビクトリア女王就任60周年の記念日・・の時期の前後に、英国人の間で帝国終焉の予感が生じ始めたのだ。
 ・・
 そしてこれらの予感は的中した。
 第一次世界大戦でたくさんの帝国が姿を消し、英国もほとんど破産状態に陥った。
 その後にやってきた戦間期には、英国中に悲観論が充ち満ちた。
 しかし、信じがたいことに1939年に至っても、なお大英帝国は屹立しているかのように見えた。
 ・・
 しかし、実際のところ、大英帝国は既に名存実亡状態だったのだ。

 これに対し、書評子の一人であるマックラム(Robert McCrum)は、ブレンドンは米国が英国の衰亡に果たした役割に十分注意を向けていない、と批判しています。
 ・・
 私見では、大英帝国を終焉に導いたのは米国です。
 では、米国はいかにしてそれを成し遂げたのでしょうか。
 そして、日本は大英帝国の終焉に、単に猿回しの猿として関与した、というだけのことだったのでしょうか。
 このあたりのことは、機会を見て、改めて論じたいと思います。
(完)

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