太田述正コラム#2115(2007.10.10)
<海自艦艇インド洋派遣問題(続)(その3)>

 (コラム#2113の「3(2)ア」の最終段落を全面的に差し替えたものをブログに再掲載してあります。)

 ISAFは、集団的自衛権を発動してアフガニスタンに駐留していた多国籍軍のうち、カブール周辺の治安維持を担っていた部隊を切り離す形で、国連が安保理決議1386(2001年12月20日)でオーソライズしてスタートしたものです。
 このISAFの司令部機能は国別に6ヶ月交替で担われていましたが、2003年8月からはNATOが恒久的に司令部機能を担うことになりました。これは、NATOが史上初めて欧州・北米以外に配備されたことを意味します。
 そして、安保理決議1510(2003年10月13日)により、ISAFの管轄(Area of Responsibility)がカブール周辺からアフガニスタン全土に拡大されます。
 管轄がインド洋にまでは拡大されていないことに注意が必要です。
 (以上、
http://en.wikipedia.org/wiki/International_Security_Assistance_Force
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%B2%BB%E5%AE%89%E6%94%AF%E6%8F%B4%E9%83%A8%E9%9A%8A#.E8.A8.AD.E7.AB.8B.E6.A0.B9.E6.8B.A0
(どちらも10月9日アクセス。以下同じ)による。)

 2006年1月からは、ISAFが、米軍に代わってアフガニスタン南部で不朽の平和作戦に従事し始めます(
http://en.wikipedia.org/wiki/War_in_Afghanistan_%282001%E2%80%93present%29)。
 更に2006年10月からは、ISAFが、アフガニスタン全土における不朽の平和作戦に従事し始め、これに伴い、この作戦に従事していたアフガニスタン残留米軍の指揮権も掌握します。
 ここでも、ISAFがインド洋における海上阻止行動には従事していないこと、従って海上阻止行動に従事しているいかなる国の艦船にも指揮権を持っていないことに注意が必要です。
 (以上、
http://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Enduring_Freedom
による。)

  ウ 小沢氏が言っていること

 国連軍(国際連合軍=United Nations force)とは、本来、これまで組織されたことがない国際連合憲章に基づく正規の国連軍を指すのですが、現実には、在韓国連軍等の、国連のオーソライズの下で各国が自発的に組織する多国籍軍を指します。
 ISAFは、このような意味における国連軍です。
 (以上、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%80%A3%E8%BB%8D
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%B2%BB%E5%AE%89%E6%94%AF%E6%8F%B4%E9%83%A8%E9%9A%8A#.E8.A8.AD.E7.AB.8B.E6.A0.B9.E6.8B.A0
(上掲)による。)
 
 同様、やはり国連憲章に基づく正規の国連軍ではありませんが、国連自身が組織し、国連事務総長が(原則として)指揮し、国連からも経費が支弁される(典拠省略)軍隊が、平和維持活動(PKO=Peace-Keeping Operations)に従事するところの平和維持軍(PKF=Peace Keeping Force)です。
 ちなみに、強制措置の実施は、平和維持軍ではなくて高度な軍事力を持つ国連軍の役割であると考えられています。
 (以上、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%92%8C%E7%B6%AD%E6%8C%81%E8%BB%8D
による。)

 他方、不朽の自由作戦の海上阻止行動(OEF‐MIO)は、このどちらでもなく、国連のオーソライズはあるけれど、組織されていない、各国がバラバラに参加している軍事的活動です。(組織されているか否かのメルクマールは、単一の指揮官・司令部の存否です。) 日本の給油活動は、この海上阻止行動の後方支援なのです。

 さて、小沢氏は、国連によってオーソライズされているISAFへの参加は許されるけれど、オーソライズされていないOEF‐MIOへの参加は、その後方支援を含め、許されないという主張をしています。
 しかし、以上見てきたように、OEF‐MIOだって国連によってオーソライズされている点では何ら国連軍であるISAFと変わりはないのですから、オーソライズ云々の部分に関しては小沢氏の主張はナンセンスです。
 それでもなおかつ小沢氏は、ISAFに参加した場合の自衛隊部隊の行動は、日本による軍事指揮権の行使、すなわち日本の主権の行使ではないので集団的自衛権の行使にはあたらないのに対し、OEF‐MIOに従事している自衛隊部隊の行動は日本による軍事指揮権の行使、すなわち日本の主権の行使であって、集団的自衛権の行使にあたるので許されない、と抗弁することでしょう。
 
 私自身は、日本の憲法第9条は集団的自衛権の行使を禁じていないという見解なのですが、仮に集団的自衛権の行使が禁じられているとしても、海上自衛隊がインド洋でやっていることは、個別的自衛権の行使か集団的自衛権の行使かを論ずるまでもなく、そもそも自衛権の行使ではないと考えています。
 要は、軍隊・・自衛隊も軍隊です・・とは何ぞや、ということです。

(続く)
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 有料版のコラム#2114(2007.10.9)「魔女狩り(その1)」のさわりの部分をご紹介しておきます。