太田述正コラム#1724(2007.4.8)
<宗教を信じるメリット?(その1)>(2007.10.6公開)

1 始めに

 動物と人間を画然とわけるメルクマールと考えられてきたことには、次々と疑問符がつきつけられてきています。
 類人猿も人間と共通する倫理感覚を持っていることについては既にご説明したところです(コラム#1701)。
 また、火を使うことこそできなくても道具を使う動物もいるし、しゃべったり書いたりすることこそできなくても初歩的言語能力を身につけることができる類人猿もいます(典拠省略)。
 しかし、人間にはあって動物には絶対にないものがあります。
 それは宗教です。
 一体、人間が宗教を信じるメリットはどこにあるのでしょうか。
 いまだ完全には解けていないこの難問に迫ってみましょう。
 
2 異界たる米韓

 一般的にあまり信心深くない日本人から見ると、米国や韓国は時に異界に見えることがあります。
 米カリフォルニア州北部のフレモント選出のスターク(Pete Stark)民主党連邦下院議員(1973年選出)は、3月12日、世俗主義の団体である米国世俗者連盟(the Secular Coalition for America)の要請に応え、「自分は神(a supreme being)の存在を信じていない」と宣言しました。
 彼は、無神論者・・反宗教的ニュアンスがあるatheistや、神不可知論者であるagnosticとは区別するために、最近米国ではnontheistという言葉が推奨され始めている・・であることを公に認めた最初の米連邦議会議員である(注1)とともに、無神論者であることを公に認めたところの、これまでで米国で選挙で選出された最も位の高い公務員である、ということになります。

 (注1)米連邦議会の議員の数は上下両院合わせて535名だ。

 本年2月に米国で実施された世論調査によれば、大統領にふさわしい候補者が、カトリック教徒であれば95%、ユダヤ教徒であれば92%、モルモン教徒であれば72%が投票すると答えたのに対し、無神論者であれば投票すると答えたのは45%しかおらず、投票しないと答えたのは53%にのぼりました。
 53%という数字は、同性愛者には投票しないと答えた43%、72歳の人物には投票しないと答えた42%、三度目の結婚をしている人物には投票しないと答えた30%、モルモン教徒には投票しないと答えた24%、女性には投票しないと答えた11%よりも多いのです。
 これは、2002年に米国で実施された世論調査で、宗教の信者であることが善人になるための必要条件であると47%の人が答えていることを考えれば、不思議ではありません。
 ちなみに、ある研究によれば、米国人のうち無神論者の人は3%しかいませんし、ある世論調査によれば、「無宗教、無信仰、無神論者、または神不可知論者」と答えたのは11%だけですし、別の世論調査によれば、無信仰であると答えたのは9%だけです。(ただし、12%が良くわからないと答えています。)
 このような中で、スターク議員が無神論者であることを認めることができたのは、彼がたまたま、米国では異例なほど世俗的な選挙区選出であるためです。
 他の連邦議会議員達の中にも必ず無神論者はいるはずですが、スターク議員に倣ってそのことを認める議員が出てこないのは当然ですね。
 (以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/politics/la-na-atheist13mar13,0,6065304.story?track=mostviewed-homepage
(3月14日アクセス)、及び
http://www.latimes.com/news/opinion/la-ed-stark15mar15,0,3687277.story?coll=la-opinion-leftrail
(3月16日アクセス)による。) 

 「韓流スター、チェ・ジウが海外宣教活動を行う。――――――チェ・ジウの関係者は<2006年10月>29日、チェ・ジウが30・31日に東京・淀橋教会と大阪・NHKホールで2日間かけて行われる韓国の宣教専門衛星放送、CGN TVの日本支局開局イベントに出席することを明らかにした。CGN TVはオンヌリ教会が運営しており、熱心なクリスチャンとして知られるチェ・ジウは現在、この教会に通っている。チェ・ジウは「ラブ・ソナタ」というテーマのイベントで、信仰告白をする予定だ。」という朝鮮日報日本語電子版の記事(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/30/20061030000013.html
。10月31日アクセス)を読んだ時は驚きました。
 議員同様人気商売である俳優が、信心深くない人が多くて、韓国に比べればキリスト教徒がいないにも等しい日本で、キリスト教の特定のセクトの宣教に一役買うというのですから。
 おそらく、韓国ではこんなことは少しもめずらしいことではないのでしょうね。

 信心深くないという点では典型的な日本人である私から見ると、米国や韓国は異界であるとしか言いようがありません。
 一体全体、米国や韓国の多数派や日本の少数派が、何のメリットがあって宗教を信じているのだろうか、という疑問を解明したくなるのは、私だけではありますまい。

(続く)