太田述正コラム#2105(2007.10.5)
<オバマの核政策>

1 始めに

 バラック・オバマ(Barack Hussein Obama。1961年〜)とヒラリー・クリントン(Hillary Diane Rodham Clinton。1947年〜)両米上院議員の民主党大統領候補争いは、現在クリントン圧倒的優勢となっています。
 今年6月に公表された世論調査で、劣勢だったオバマがついにクリントンと肩を並べたということもあった(
http://www.usatoday.com/news/politics/election2008/2007-06-04-poll_N.htm
。10月5日アクセス)のですが、10月の頭に公表された世論調査では、民主党員及び民主党シンパの人々を対象にした世論調査で、53%対30%とクリントンに大きく水を空けられるに至っています(
http://www.foxnews.com/printer_friendly_story/0,3566,299146,00.html
。10月5日アクセス)
 しかし、私はまだまだ先行き予断は許さないと思っています。
 今回は、私が注目しているオバマの核政策に触れたいと思います。

2 オバマの核政策

 (1)核の先制行使不可論

 オバマは今年8月2日、アフガニスタンとパキスタンにまたがるテロリストがらみの目標に関し、「私はわれわれが核兵器を用いることはいかなる状況下においても大いなる過ちだと思う。」と述べ、「それが一般市民を巻き添えにするものならば・・」と付け加えました。
 クリントンは、このオバマ発言について、すぐに「<米国の>大統領<たらんとする者>達は核兵器の使用ないし不使用について議論するにあたっては常に慎重の上にも慎重を期すべきだ。冷戦の始まり以降大統領達は平和を維持するために核抑止力を用いてきた。だから私は、いかなる大統領であれ、核兵器の使用ないし不使用に関して雑駁な(blanket)声明を発するようなことがあってはならないと信じている。」と批判しました。

 (以上、
http://blog.washingtonpost.com/earlywarning/2007/08/nuking_osama_wrong_wrong_and_w.html?nav=rss_blog
(8月14日アクセス)による。)

 (2)核廃絶論

 またオバマは10月2日、自分は米国が一方的に核軍縮をすべきだとは思わないが、諸外国と協働しつつ核物資をコントロールしながら核兵器を次第に削減して行くべきだと思っているとし、米国の政策は既に消滅したソ連と対峙していた時代のままであり、ならず者国家やテロリスト達の核脅威と戦うものになっていないと述べた上で、「米国は核兵器のない世界を求める。米国の安全を確保する最善の方法は、テロリスト達を核兵器で脅すことではなく、テロリスト達に核兵器や核物資を渡さないことだ」と語りました。そして、核廃絶が実現するには長い年月がかかるのであって、一人の大統領の任期では達成できない、と付け加えました。

 これに対し、米共和党全国委員会は、オバマの提案は米国の安全を損なうものであり、オバマは民主党の少数意見の持ち主達の機嫌をとっている、と批判しました。
 しかし、このオバマの考え方は、共和党の元国務長官であったキッシンジャー(Henry Kissinger)とシュルツ(George Shultz)の賛同を得ているのです。

 (以上、
http://www.taipeitimes.com/News/world/archives/2007/10/04/2003381659
(10月5日アクセス)による。)

3 所見

 オバマの核廃絶論を見ると、その核先制使用不可論が決して思いつき的な発言でなかったことが分かります。
 私はこれらのオバマの核政策に全面的に共感を覚えます。
 それは恐らく、被爆国である日本の大部分の国民の共感も呼ぶことでしょう。
 従来の米大統領達はもとより、大統領候補達が一人も口にできなかったことを口にしただけでも、オバマの勇気と先見性は大したものです。
 願わくば、オバマが民主党の大統領候補となり、更に米国の次期大統領になれますように。