太田述正コラム#2043(2007.9.5)
<防衛次官人事問題(続x8)>

<太田>

 7月19日にある記者の取材を受けたのですが、昨年、防衛施設庁不祥事で施設本庁にガサ入れした時の資料一式を検察はまだ返還せず、ずっと捜査を継続しているのだそうです。
 施設庁不祥事・・官製談合事件・・は、キャリア官僚や政治家には全くお咎めナシで裁判も終わり、一件落着したはずなのにどうしてだ、と不思議がられているのだそうです。
 この記者は、どうも検察は、政治家がらみの装備調達をめぐる大不祥事を追っかけているフシがあり、上記資料もそのような観点から調べているのではないか、と言っていました。
 但木検事総長は知人であり、人となりはよく分かっていますが、あるいは本当に頑張ってくれているのかもしれませんね。
 ここは声援を送っておきましょう。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 8月9日に友人に原宿で会ったら、日刊ゲンダイの記事を見せてくれました。

 ・・小池防衛相のトップダウン人事で、クビを切られた守屋武昌事務次官(62・・)。4年を超える異例の長期在任により、省内で"防衛省の天皇 "と畏怖されるほど強い影響力を持っていた。・・背景には検察の動向が見える。東京地検特捜部が「近々、防衛利権にメスを入れる」との情報が駆け巡っているのだ。「検察が重大な関心を寄せているのは、空自の次期輸送機CXの搭載エンジンの納入利権のようです。総額1000億円にも上る利権をめぐり、老舗防衛省者の山田洋行と、同社の経営陣が分裂して設立した新会社の間で熾烈な利権争いが勃発。・・ゴタゴタの裏側で『背広組や政治家が跋扈したのでは』とマークされているのです」(検察事情通) 検察のターゲットには「守屋氏の名前も取りざたされている」(司法関係者)と言われている。・・

 ついに出ましたね。
 (私が取材を受けた社はゲンダイではありません。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 8月16日に取材を受けたのですが、サンデー毎日9月2日号(8月21日発売)に私がちょっと登場しています。

 「改造後に着手? 防衛利権捜査の最大標的
 防衛施設庁の官製談合事件はピーナツのような小さなもの。防衛利権の最たるものは”防衛装備”です。装備の調達は相対取引で、プロパー官僚と政治家が群がっているのです」 そう指摘するのは、元防衛庁防衛審議官で評論家の太田述正氏(58)。「防衛省の天皇」こと守屋武昌事務次官とは同期入庁で防衛庁に30年間在籍した。・・前出の太田氏も、「守屋氏が4年も次官を続けてこられたのは、歴代防衛庁長官や防衛相の強い意向が働いたからです。守屋氏が政治家の弱みを握っていたと勘ぐられても仕方がない」と言う。・・」(同誌25頁)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 8日29には、今度は某TV局の取材を受けました。
 地検が捜査を継続しているのは間違いないのだそうです。

 私から、検察も、今度本件で政治家と役人と企業人を摘発すれば、安倍内閣どころか、自民党政権が瓦解するのが必至なだけに、大きな決断が求められよう、と言っておきました。

<有料読者K>

 FACTA9月号にも防衛庁関連の記事がありますね。

<太田>

 聞いていますが、(8月30日現在、)まだ読んではいません。
 なお、FACTAをやっている阿部重夫は高校時代の同級生です。
 「選択」の編集長時代には、私の論考を二回掲載してくれました。
 彼は、イラクについて(イラク戦争が始まる前ですが)中公新書から著書を出しています。
 そんなことを知らずに彼と(イラク戦争が始まってから)議論をしていて、えらくイラク事情に詳しいなと舌を巻いたことがあります。

<有料読者K>

>「選択」の編集長時代

 雑誌の作りが「選択」に似ていると思ったのですが、そういう経緯なのですか。
勉強になりました。
 有料の雑誌なので、中身については深くは書きませんが、防衛庁の歴代の実力者と山田洋行の関係を書いており、防衛庁の知識のない私には、勉強になる記事でした。

<読者H>

 防衛省の守屋事務次官が、退官を前に最後の記者会見に臨み、「国民の支持があったから防衛庁が省になった。それが一番嬉しかった」と、4年あまりに及んだ任期を振り返りました。
 国民の多くは支持していない。公務員と公務員に付いていい気になってる連中が支持しただけだ。
 いい歳をして、公務員は自らの責任を国民に転嫁する子供じみたマネは止めてもらいたいですね。

07.8.31 TBS「防衛省・守屋次官、退官を前に会見」
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3646571.html

<太田>

 9月1日、また別の新聞の記者の取材を受けました。
 どうも、防衛庁不祥事の捜査もプレスの取材も壁にぶち当たっている印象を受けました。
 9月4日には、この前と同じTV局の別の記者から取材を受けました。(どうなっとるんじゃ!)
 何でも、検察は松岡農相(当時)の担当を全部防衛省担当に回してしゃかりきに捜査を続けているのだそうです。
 ただ、今回、政治家まではあえて手を伸ばさず、防衛官僚に焦点をしぼっているとのこと。
 検察もだらしないし、そうなるとその防衛官僚に同情したくなってきますね。

<バグってハニー>

 「フォーラム21」用の記事(近日ブログにも公開。太田)はすごくよかったです。実は私も全く同じこと考えていたんですよね。小泉前首相の最大の功績は日本の政治にトップダウンの手法を持ち込んだことにあると思っています(外務省の方針に反して拉致被害者を帰朝させなかったことや郵政解散)。この分かりやすいやり方に政治に無力感を抱いていた国民が喝采を送ったのだと思います。小池氏がやろうとしたのはまさしくトップダウンの決断であって、根回し・調整という因習にとらわれた「抵抗勢力」が猛烈に拒絶反応を示したんでしょう。
 守屋前次官は「山田洋行...の経営陣が分裂して設立した新会社」から受けとったお金で娘を米国留学させている、なんて噂を見かけました。ひょっとして小池VS.守屋のバトルはまだまだ続くかもね。小池、塩崎の両氏が内閣を去ったのに、守屋前次官は厚顔無恥にも常勤顧問として防衛省に居残るそうです。いやあ、官僚ってすごい世界だ。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070830ia26.htm  
 「守屋氏はかつて(自身の後任人事を報じた新聞の)朝刊を見てびっくりしたことがあったそうだが、わたしはきょう新聞を見てびっくりした。」(新聞報道で守屋氏の顧問就任を知った高村正彦新防衛相の弁)
http://news.livedoor.com/article/detail/3289695/

<太田>

 このやりとりを見ていたかのように、阿部君がFACTA9月号を送ってきてくれました。
 「「防衛省の天皇」解任の裏側」という記事に、何度も記者諸公から聞いていて耳タコの守屋氏に関する不祥事疑惑と、やや目新しい、那覇防衛施設局長の佐藤勉氏(8月31日付退職)に関する不祥事疑惑とが載っていました。
 この記事の中身をご紹介すること自体には、何ら問題はないと認識していますが、紹介しただけでこのご両名から名誉毀損を問われる懼れがある以上、控えておいた方が無難でしょう。
 面白いことに、私の書いた「フォーラム21」用の記事とこの記事とは、同じ事柄を扱いながら、全く中身が重なっていません。
 マクロ的アプローチとミクロ的アプローチ、あるいは、「学問的」アプローチと「ヤジウマ的」アプローチの違いの典型例である、とあえて言わせてもらいましょう。