太田述正コラム#1997(2007.8.14)
<防衛次官人事問題>

 (本篇は情報屋台用のコラムを兼ねており、即時公開します。)

1 始めに

 防衛事務次官人事をめぐって一悶着起きています。
 この問題をどう考えたらよいか、私見を申し上げましょう。

2 防衛次官人事問題のあらまし

 防衛次官人事問題のあらましは以下のとおりです。

 「<防衛庁1971年採用の>守屋<武昌(62)>氏は2003年8月に<防衛>事務次官に就任。防衛庁の省昇格のほか、米軍再編特措法の制定、自衛隊のイラク派遣などの強力な推進役となった。「自分の気に入った人間ばかり登用する」などと批判もあるが、今秋の臨時国会でのテロ特措法の審議を控え、「自分でなければ乗り切れない」と続投に意欲満々だった。>
 小池<防衛相>は今月6日、守屋氏の在任期間が4年を超える異例の長さとなったことから退任させることを決断。後任には<警察庁1972年採用の>西川徹矢官房長<(60)>を充てることを内定した。
 しかし「寝耳に水」だった守屋氏は、・・猛反発。小池氏が後任に指名した西川氏が警察庁出身であることにも異を唱え、守屋氏自らの退任が避けられない場合でも、後任を防衛省生え抜き<で1974年採用の山崎信之郎運用企画局長(60)>に差し替えるよう要求、<小池氏の訪米中、自民党国防族議員や官邸に次官人事の白紙撤回を訴えて回った。こうした動きを受け「閣議にかけられた形跡もないものが独り歩きしている」(自民党の山崎拓安全保障調査会長)と小池氏への批判も出て、与党を巻き込む事態に発展。>
 さらに、首相補佐官時代の小池氏と外交面での主導権争いなどからしばしば対立してきた塩崎長官が「相談を受けてない」として、守屋氏と歩調を合わせている。小池氏が人事を15日の閣議で決定したい考えだったのに対し、内閣改造後に先送りするよう主張。13日、首相官邸を訪れた小池氏と会談し、こうした考えを伝えた。次官の任命権者は所管閣僚だが、制度上、官房長官が主催する閣議人事検討会議に諮る必要があり、塩崎長官が会議開催を拒否すれば、人事は事実上凍結される。小池氏が内閣改造で留任しない場合、内定した人事が覆る可能性もある。
 小池氏は<「案をのんでもらえないなら私にも決意がある」と辞任をちらつかせ>・・て13日夜、首相官邸に安倍首相を訪ね、人事方針に理解を求めた。・・政府筋は同日夜、小池氏の人事方針自体に変更はないとの見通しを示したが、27日に予定される内閣改造・自民党役員人事以降に手続きが先送りされる可能性も出ている。」 

 (以上、電子版の中では最も詳細な記事を掲載し、内容的にももっともらしい
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070814k0000m010149000c.html
をベースに、
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070814ia01.htm
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070814AT3S1301I13082007.html
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007081301000796.html
http://www.asahi.com/politics/update/0813/TKY200708130321.html
(いずれも8月14日アクセス)で補足した。防衛省内部事情に詳しいはずの産経はどうした?)

3 コメント

 (1)「低次元」のコメント

 守屋(62)氏が年齢といい、在任期間といい、とっくの昔に退任していなければならなかったのは当然として、西川、山崎ご両人とも「高齢」であることが気になりますね。
 それはさておき、山崎氏は単なる当て馬かも知れませんが、西川氏とどちらが次官として適任なのでしょうか?
 私は無条件で西川氏に軍配を挙げます。 

 拙著『防衛庁再生宣言』の冒頭の章に出てくるIT問題で、完全なIT音痴でありながら、庁内守旧派の言うがままに担当課長(総務課長)として、担当審議官であった私の案に強硬に反対し、私の案を葬り去ったものの、私が仙台防衛施設局長に転出した後、そして彼もポストを変わってから、結局私の案が採用されるに至ったこと一つとっても、山崎氏は、他省庁であれば、次官どころか有力な課の課長への就任すら疑問符がつく人物です。
 他方、西川氏は、当時審議官として警察庁から出向してきたばかりでしたが、防衛白書担当としては私の後任であり、引き継ぎをする際に、(ITについては他の審議官が引き継ぐことになっていたけれど、警察庁時代にIT担当として辣腕を振るったと聞いていたこともあり、)上記IT問題を説明して側面から私の案の実現に向けて動いてくれないかと依頼したところ、快諾してくれた人物です。

 現在の日本のキャリア官僚は省庁を問わずおしなべて無能でやる気がないところ、特にひどいうちの一つが防衛庁(省)プロパーの官僚であることから、防衛庁(省)プロパーの官僚は当分の間、誰であれ、防衛事務次官にしない方がよいとまで私は考えています。

 (2)「高次元」のコメント
 
 8月10日付(9日発行)の日刊ゲンダイに、

 「・・小池防衛相のトップダウン人事で、クビを切られ<ることになっ>た守屋武昌事務次官・・。4年を超える異例の長期在任により、省内で"防衛省の天皇 "と畏怖されるほど強い影響力を持っていた。・・<今回の人事の>背景には検察の動向が見える。東京地検特捜部が「近々、防衛利権にメスを入れる」との情報が駆け巡っているのだ。「検察が重大な関心を寄せているのは、空自の次期輸送機CXの搭載エンジンの納入利権のようです。総額1000億円にも上る利権をめぐり、老舗防衛商社の山田洋行と、同社の経営陣が分裂して設立した新会社の間で熾烈な利権争いが勃発。・・ゴタゴタの裏側で『背広組や政治家が跋扈したのでは』とマークされているのです」(検察事情通) 検察のターゲットには「守屋氏の名前も取りざたされている」(司法関係者)と言われている。・・」

という記事が出ましたが、これこそ今回の人事問題の真の背景の一端を示している、と私は考えているのです。
 より一般化して申し上げれば、防衛官僚中、「出世」している人間の多くは、日米関係のことなどそっちのけで、自民党系政治家達と癒着しつつ、防衛利権にたかっている人物であり、かねがね米ブッシュ政権もそのことを苦々しく思っていた、とすれば、今回の人事問題の本質が理解できる、ということです。

 すなわち、小池氏は、外交担当の首相補佐官として、米国の気持ちを肌で感じており、検察の動向を奇貨として、防衛相就任と同時に、防衛庁内外の防衛利権にたかる人々の影響力を一掃しようと考え、次官更迭をプレスにリークした上で、宗主国米国に了解を得るべく電撃訪米を行い、チェイニー副大統領やライス国務長官らが諸手を挙げて小池氏を歓迎した(太田述正コラム#1991。情報屋台掲示板に転載)ことが示しているように、目論見通り米国の了解を得た、と私は見ているのです。
 とすれば、もはや勝負ありです。
 小池氏の防衛相続投は確定的ですし、森元総理も強く示唆している(
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070812i107.htm
。8月14日アクセス)ことからも逆に塩崎官房長官の降板は避けられず、早晩小池人事は原案通り実現することでしょう。
 
 小池百合子(1952年〜)はマジ首相の器かもしれませんよ。