太田述正コラム#1845(2007.6.30)
<北朝鮮をいたぶる米国(続x4)>(2007.8.10公開)

1 最近の状況

 マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)に凍結されていた資金の送金問題がおおむね解決したと思ったら、ヒル米国務次官補が6月21、22日の両日、北朝鮮の要請を受け容れて電撃的に北朝鮮を訪問しました。
 これは2002年10月に同じクラスの米高官であるジェームス・ケリー氏がが北朝鮮を訪問して以来のことです。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/06/21/AR2007062100454_pf.html  
(6月22日アクセス)による。)
 今回、ヒル氏は北朝鮮の迎賓館に相当する百花園招待所に泊まったのですが、ここは2000年の南北首脳会談の際、韓国の金大中大統領(当時)一行が泊まった所です。これは、2002年にケリー米国務次官補が訪朝した時には高麗ホテル泊であったことからすれば、今回ヒル氏は北朝鮮に破格の待遇を受けたといえるでしょう(
http://www.chosunonline.com/article/20070623000011  
。6月23日アクセス)。

 ポールソン米財務長官が、14日、BDA資金送金問題で北朝鮮に協力するのは今回限りであり、北朝鮮を国際金融システムに復帰はさせない、という趣旨の発言をあえて行った(
http://www.chosunonline.com/article/20070616000016  
。6月16日アクセス)というのに、それにもかかわらず、ここまで北朝鮮が米国に媚態を示したことは、金正日が、米国からどれだけいたぶられようと、六カ国協議での合意事項を、当分の間は遵守する方針をとることにした、ということなのでしょう。
 合意事項中、初期段階に実施することになっているIAEA査察下での核施設の封鎖の見返りとして得られる韓国等からの援助(
http://www.chosunonline.com/article/20070623000013  
。6月23日アクセス)を、北朝鮮が喉から手が出るほど欲しがっている、ということなのかもしれません。
 ただし、だからといって北朝鮮が、核開発を止めたわけではありません。
 六カ国協議合意以降も、北朝鮮は核物質を兵器化し小型化するなどの核開発を推進し続けており、このことを米国は把握しています(
http://www.chosunonline.com/article/20070616000005  
。6月16日アクセス)。
 北朝鮮のパトロンの中共政府自身、北朝鮮が本当に核計画の廃棄をするかどうか疑問視しています(
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-norkor26jun26,1,2828837,print.story?coll=la-headlines-world  
。6月27日アクセス)。

2 米国の乱暴ないたぶり方

 それにしても、米国は乱暴に北朝鮮をいたぶっているものです。
 6月6日に米国政府は国連開発計画(UNDP)に対し、北朝鮮によるUNDP援助資金の新たな横流し疑惑を指摘した、と以前(コラム#1807で)申し上げたところですが、28日にUNDPはこの米国の指摘に対して、事実無根であるとして全面的な反論を行いました。
 国連の経済制裁を受けていたフセイン統治下のイラクに対し、イラクの石油とイラクへの食糧等の援助を交換する計画推進に当たって国連事務局が不祥事まみれであったことが判明している以上、今回の国連側の反論も全面的に信用するわけには行きませんが、米国の指摘が相当杜撰なものであったこともまた間違いないようです。
 (以上、
http://www.nytimes.com/2007/06/29/world/asia/29nations.html?pagewanted=print  (6月30日アクセス)による。)
 米国の諜報能力が落ちており、まだ回復していない、ということもあるのでしょうが、さほど根拠がなくても、北朝鮮に対するいたぶりに利用できる事は何でも利用するのが現在の米ブッシュ政権の方針だ、ということなのではないでしょうか。

 金正日重病説がまたも囁かれています(
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=88671&servcode=500§code=500
。6月30日アクセス)が、今度という今度こそは、米国の執拗ないたぶりによって金正日が心因性の疾患で重篤になっている可能性はかなり高い、と私は見ているのです。