太田述正コラム#1899(2007.8.9)
<民主党へのアドバイス(続)(その1)>

 (本篇は情報屋台の掲示板への投稿を兼ねており、即時公開します。)

1 始めに

 テロ対策特別措置法(テロ特措法)をめぐる、シェーファー米大使との会談の際の小沢民主党代表の発言を聞くにつけ、民主党の心ある人々は、小沢おろしを急ぐべきだという感を深くしています(注1)。

 (注1)讀賣は社説で、「民主党に政権担当能力はない、と判断されても仕方がないだろう。」とした(
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070808ig91.htm
。8月9日アクセス)が、讀賣は、小沢氏が党首のままで民主党に政権を担当させるわけにはいかない、と書くべきだった。

 このことを少し詳しくご説明しましょう。

2 小沢・シェーファー会談

 (1)会談でのやりとりのポイント

 小沢:私たちは日本国憲法9条について「自衛権を行使するのは、日本が攻撃を受けた場合、あるいは急迫不正の侵害を受けた場合に限る」と解釈している。平和を維持するための活動には積極参加するが、あくまで国際社会の合意の上で、国連の活動として参加するということだ(注2)。

 (注2)讀賣上掲は、「小沢代表は、<2001年12月の>国連安保理決議1386に基づくアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)への参加は可能だ、との考えを示した」と報じるとともに、「米政府は再三、陸上自衛隊の輸送ヘリコプターのISAF派遣を打診しているが、日本側は「危険だ」と断っている」と注記している。なお、同決議についてより詳しくは、
http://en.wikisource.org/wiki/United_Nations_Security_Council_Resolution_1386
(8月9日アクセス)参照。

 アフガニスタンでの戦争はブッシュ米大統領が「米国のテロとの戦いだ」と言って、国際社会の合意を待たずに米国独自で始めた。日本の直接の平和や安全とは関係ない。直接的に(日本の)部隊を派遣して、米国あるいはほかの国と共同活動をすることはできない。
 大使:<今年>3月に可決された国連安保理決議では、米国を中心とした部隊の活動を国連が認め、その活動について言及している(注3)(注4)。

 (注3)国連安保理決議1746のことであり、「国際治安維持支援部隊と不朽の自由作戦(Operation Enduring Freedom)多国籍軍(coalition)を含むところの国際社会の支援を得つつアフガニスタン政府が・・タリバン・アルカ−イダその他の過激派と犯罪活動がアフガニスタンの安全と安定に及ぼしている脅威に今後とも対処することを求める」と、「不朽の自由作戦多国籍軍」、すなわち「米国を中心とした部隊」への言及がなされている。(太田)(
http://www.un.org/News/Press/docs/2007/sc8977.doc.htm
。8月8日アクセス)
 (注4)海上自衛隊の補給艦は、アラビア海を中心としたインド洋で、「不朽の自由作戦」の海上阻止活動(OEF‐MIO=Operation Enduring Freedom-Maritime Interdiction Operation)に従事する米英仏独伊西蘭稀加ニュージーランド・パキスタンの11か国の米軍などの艦船に対して、洋上補給(給油・給水)を行ってこれを支援している。この海上阻止活動のねらいは、武器・弾薬やテロリスト、資金源となる麻薬などの海上輸送を阻止しようというものだ。(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E6%B4%8B%E6%B4%BE%E9%81%A3
。8月8日アクセス)

 小沢:テロに対して戦う考えは共有しているが、どういう手段で、どういう方法で参加できるかは国によって違う。湾岸戦争の際、ブッシュ大統領の父親は、国連決議が出るまで開戦しなかった。米国にはもう少し忍耐強く、国際社会の合意を得るよう努力してもらいたい。
 (以上、特に断っていない限り
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070809k0000m010074000c.html
(8月9日アクセス)による。)

 (2)小沢発言の問題点

  ア アフガニスタンへの軍事介入は、国連安保理決議なしで2001年10月に米国が英国等と始めたことは事実(
http://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Enduring_Freedom
。8月8日アクセス)ですが、小沢氏自身も認めているように、安保理は2001年12月時点で、ISAFのアフガニスタン派遣を決議しているのであって、これは、国連が積極的に米国等による軍事介入を追認したものであると解すべきでしょう。
 小沢氏は、アナン国連事務総長(当時)が、2003年3月の米国等による対イラク戦に対し、こちらはそれ以前の安保理諸決議に基づいて行われたと解しうる余地があったにもかかわらず、強い遺憾の意を表明したこと(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/08/07/AR2007080701076_pf.html
。8月9日アクセス)と混同していると思われても仕方ありません。
 混同していないというのなら、小沢氏は発言の仕方により慎重であるべきでした。

  イ 憲法第9条は集団的自衛権行使を禁止しているとの政府憲法解釈を厳格に受け止めつつ、他方で国連(安保理)が認める平和維持活動には無条件で参加できるとする小沢流憲法解釈に従うのであれば、小沢氏は、ISAFへの自衛隊参加を推進することを強調した上で、その代わり、(イラクへの航空自衛隊の派遣を取りやめさせることは当然として、)OEF‐MIOへの参加は取りやめさせる、と言うのが論理的だったはずです。
 もっともこの小沢流憲法解釈は民主党の党としての憲法解釈にはなっていませんし、仮になっていたとしても、ISAFへの自衛隊参加には(政府自民党ですらそれに踏み切れなったのですから、)党内から異論が続出することは避けられなかったでしょう。
 小沢氏が明言を避けたのは当然です。
 だとしたら、小沢氏は、テロ特措法問題で現時点で、このように旗幟を明確にすべきではなかったのです。(アとあいまって、)米国政府が、小沢民主党を、非論理的な反米政党だ、と見放してしまいかねないからです。
 政権をとる以前に、宗主国米国を敵に回しかねないような動きをすることは愚の骨頂ではないでしょうか。

(続く)
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