太田述正コラム#1896(2007.8.7)
<過去・現在・未来>

1 始めに

 Mixiでの読者とのやりとりの一端をご披露します。
 本篇は即時公開します。
 太田述正掲示板も活性化してきたので、ぜひ訪問してみてください。

2 読者とのやりとり

<バグってハニー>
 コラム#1892(2007.8.3)「中共の欠陥食品問題(続)」に関連して、最近、興味深かったのは段ボール肉まん事件ですね。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070726idw3.htm

 私が興味深いというのには二つの理由があります。
 ひとつは中国市民も欠陥食品問題を気にしているという点。そうでなければ、このようなニュースが中国国内でニュース・バリューを持つことはないでしょう。
 二点目は、中国の報道機関がやらせまでして、政府に都合の悪いことを報道できた、という点。つまり、中国の言論・報道は開放されつつあるのではないでしょうか。
 中国の経済がグローバル化することによって、それ以外の制度や組織もグローバル化するということなのではないでしょうか。所詮、経済体制だけ自由主義のつまみ食いをすることなど許されないということなのでしょう。
 ですから、私の考えは「中国共産党一党独裁体制を支那が擲って自由・民主主義化しない限りこの問題を克服することはできない」、あるいは「今の経済体制を維持する限り中国は早晩、自由・民主主義化する」ということになります。

<太田>
 おなつかしやバグってハニーさん。
 そろそろ、消印所沢さんの消息も分かる頃かも。

 さて、肉まんダンボールやらせ事件も、仮に本当にやらせだったとすれば、TVニュース(ドキュメンタリー?)が欠陥商品であったということであり、必ずしもバグってハニーさんのおっしゃたような読み方はできないのではないでしょうか。
 いずれにせよ、以前にも申し上げたように、私は「中国共産党一党独裁体制を支那が擲って自由・民主主義化しない限りこの問題を克服することはできない」とも「今の経済体制を維持する限り中国は早晩、自由・民主主義化する」とも考えていません。
 後者の点については、改めてコラムで書きたいと思います。

 なお、
 トウ小平体制原因論を詳細に述べたニューズウィークの記事
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070803/131649/?P=1以下

は参考になります。
 この記事では、10年後もこの体制は変わっていないだろうと予想していますが、果たして?

<バグってハニー>
 私には中国には報道統制がきついという印象があったので。インターネットの検閲とか日本から見れば信じられないですよね。ですから、段ボール肉まん事件は、たがが緩んできた証拠かなと思いました。

 ところで、#1875(2007.7.22)「CIAの実相(その1)」に絡むことです。

 このコラムで名前の挙がったFBIのRobert Hanssen(旧ソ連のスパイだった)を題材にした「Breach」という映画を最近見まして、非常に面白かったです。
http://www.breachmovie.net/

 クリス・クーパー演じるところの老獪なハンセンを相棒の新米FBI捜査官エリックが追い詰めていくというストーリーです。スパイものにつき物の派手な銃撃戦とかないのですが、その分、本当のスパイとはかくありなん、という感じでよかったです。クライマックスはハンセンの捕り物劇なのですが、エリックはその場にも居合わせず、ポケベルでハンセン逮捕の報を受けるという地味な演出なのですが、手に汗握りました。よろしければご覧ください。

<バグってハニー>
 コラム#1895(2007.8.6)「10の決断と第二次世界大戦(その2)」について、前に同じこと書いたかもしれないですが一言。

 「日本が仏印(正確には南部仏印)侵攻を1941年7月に「決断」した時の首相は近衛文麿であり」

 その数ヵ月後に日本は乙案でこの南部仏印進駐を取りやめるとあっさり引き下がったんですよ、石油禁輸の解除を条件に。石油を止められて「タンマ!今の手は無しにして!」みたいなもんですよ。こんな見境のない外交はないです。
 北部仏印進駐によって日本はすでに鉄を止められていたわけで、さらに南進を続ければ米国がどのような対応をとるかなんて、少し考えれば分かるようなことです。まったく、当時の日本の指導者の「非理性的な決断」にも困ったもんです。
 ところで、国民党や共産党をファシズム呼ばわりするのは別にいいですが、三国同盟で正真正銘の本場のファシストと手を組んだ日本はそれでも民主主義的だったのですか?松岡のやり方は民主主義的だったの?

<太田>
>ところで、国民党や共産党をファシズム呼ばわりするのは別にいいですが、三国同盟で正真正銘の本場のファシストと手を組んだ日本はそれでも民主主義的だったのですか?松岡のやり方は民主主義的だったの?

 当時現在より更に甚だしい国際情勢音痴であった米国でも、さすがに日本の敗戦時点までに中国国民党を見限るに至りましたが、遡れば、米国は、中国国民党ではなく日本をこそ後押しすべきだったのです。いわんや米国は中国共産党については、一貫して敵視すべきであったのです。
 まあ、米国は仕方がないとしても、あの骨の髄から共産党嫌いのチャーチルだって、正真正銘の本場のスターリン主義のソ連とつるんでナチスドイツにあたったわけで、敵の敵は味方だ、というのはいつの世にも常識でしょう。敵の敵とつるむのは緊急避難的措置だということですよ。
 日本がナチスドイツと協力したのも、(松岡のように心底からそれを追求したバカもいたけれど、)マクロ的に見ればそれ以上でも以下でもありません。敵である米国の敵がたまたまナチスドイツだったということです。

<バグってハニー>
 コラムとは関係ないですが、こちらをご覧ください。
http://www.kunaicho.go.jp/gaikoku/300linneaus%20.html

 英国リンネ協会における天皇陛下による基調講演の原稿です。驚くべき博識と科学的洞察力に満ちています。しかも「原文【English】」ですよ。もちろん、誰か手助けする人はいたとは思いますが、正直びっくりしました。非常に頭が良い方なのですね。普段の寡黙は爪を隠してるだけみたいです。この講演の抜粋は

Essay: Linnaeus and taxonomy in Japan
Doctors at the Dutch Trading House on Dejima were a conduit for science into and out of Europe.
His Majesty The Emperor of Japan

として、Natureの7月12日号に掲載されました。このEssayというセクションは私の知る限りその分野の超大物だけが寄稿しています。世界の王族広しといえどもNatureとScienceに寄稿しているのは我らが天皇陛下だけではないでしょうか。想像ですけど。

<太田>
>天皇陛下<には>・・正直びっくりしました。非常に頭が良い方なのですね。普段の寡黙は爪を隠してるだけみたいです。

 言及された今上天皇の講演の概要は日本の新聞の電子版で読みました。
 確かBBCだったかが、Natureの上記へリンクを貼っていましたよ。

 ところで、今上天皇については私も同意見であり、このことは、私のコラムで今上天皇(皇太子時代を含む)を何回も採り上げている(コラム#214、215、824、934、939、1718)ことからもお察しいただけると思います。

 これらのコラムで、今上天皇が、支那事変の原因が支那側にあることを強く示唆されておられること、その一方で靖国神社参拝を昭和天皇同様、行おうとされていないことを指摘してきたところです。
 靖国神社を参拝されないのは、天皇家を国内外の政争から守るため、そして、昭和天皇同様、今上天皇も松岡のようなバカ(注)(狂人?)・・A級戦犯だが東條らと違って死刑にもなっていない・・を靖国神社が合祀していることに強い違和感を覚えておられるため、であろうと推察されます(
http://www.asahi.com/national/update/0804/TKY200708030506.html
(8月4日アクセス)、及び
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%B2%A1%E6%B4%8B%E5%8F%B3
(8月7日アクセス))。

 (注)松岡は、1941年12月6日、日米開戦の方針を知り「三国同盟は僕一生の不覚であった」、「死んでも死にきれない。陛下に対し奉り、大和民族八千万同胞に対し、何ともお詫びの仕様がない」と無念の思いを周囲に漏らし涙を流した(
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20070107i202.htm?from=main2
。1月7日アクセス)

 いずれにせよ、その松岡だって、(普通選挙で選ばれた議員で構成される)衆議院で、外相として答弁しなければならなかったのですよ。
 どう考えたって当時の日本は、民主主義的な国家でした。