太田述正コラム#0078(2002.11.21)
<共産党第16回全国代表大会後の中国>

 隣国中国の、閉会したばかりの共産党第16回全国代表大会の意義をどう見たらよいのでしょうか。

 胡錦涛総書記以下の新党首脳部を平和のうちに整斉と選出したことなぞは重要でも何でもありません。
改訂された中国共産党規約の総綱の中で、「中国共産党は中国労働者階級の前衛部隊であると同時に、中国人民と中華民族の前衛部隊であ」るとした上で、「中国共産党はマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、クt]平理論と「三つの代表」という重要な思想をみずからの行動の指針とする。」と「三つの代表」(HE THREE REPRESENTS)論を謳った(http://j.people.ne.jp/2002/11/19/jp20021119_23436.html。11月20日アクセス)ことこそ注目されるべきなのです。
 「三つの代表」論とは、2000年の初めに江沢民国家主席が提起した、中国共産党が、私企業を含め、中国の最も生産的な諸勢力を代表すべきものとする理論です(http://www.cnn.com/2002/WORLD/asiapcf/east/11/18/willy.column/index.html。11月20日アクセス)。
 そして、この理論に基づき、私企業の経営者が共産党員になれることになりました。

 この点をとらえて、英米のメディアは、中国のファシズムが一層進展した、或いは確立したと指摘しています。
 英BBCは、「持てる者と持たざる者との格差は、共産党が権力を握った頃よりも大きくなった。・・私企業の経営者達・・も党に取り込まれてしまった。・・中国が世界の中で大きなパワーになればなるほど、その政府はよりファシスト的になってきた。北京オリンピックに向けての準備が進んでいるが、1930年代におけるベルリンが思い起こされる。」と報じました(http://newssearch.bbc.co.uk/2/hi/programmes/from_our_own_correspondent/2481323.stm。11月18日アクセス)し、米ニューヨークタイムズは、ニコラス・クリストフ記者の「中国の指導者達は共産主義者というよりファシストだ。なぜなら彼らは、軍事力を用いて反対派を圧殺しつつ、巨大な国家統制部門を伴った資本主義経済システムを統括しようとしているからだ。・・ファシストと呼ぶことで、彼らはいいお仲間とお近づきになれるというものだ。共産主義諸国は経済的に停滞し、やがて崩壊したが、ファシスト諸国(スペイン、台湾、韓国、チリ)は経済的に繁栄し、中産階級を育み、やがて一層の民主化へ向けて進化を遂げる柔軟性をを示したからだ。」という論説を掲載しました(http://www.nytimes.com/2002/11/19/opinion/19KRIS.html。11月19日アクセス)。

 クリストフ記者のあげたフランコ統治下のスペイン、蒋家統治下の台湾、軍部の支配下の韓国、ピノチェト統治下のチリに、本家本元のファシスト国家たるムッソリーニのイタリアとナチスドイツを加えておさらいをしてみると、中国のように、共産主義国家が自発的にファシスト国家に転換したケースは史上初めてであることが分かります。(ちなみに、フランコ将軍は独伊両ファシスト国家の支援を得て内戦で共産党系の統一戦線政権を打倒しましたし、ピノチェト将軍は米国の支援を得て軍事クーデターで共産党系のアリェンデ政権を打倒しました。)
 大変な回り道をしたあげく、中国はようやく蒋家統治下の台湾の時代、しかも私が思うにその初期の時代、に追いついたことになります。
 中国は世界の四分の一もの人口を擁する最後の帝国(=植民地を抱える国)であり、中国を民主化に向けてソフトランディングさせることは、21世紀における人類最大の懸案の一つです。
 我々としては、ファシスト中国の民主化を期して、中国の台湾に対する軍事恫喝を非難するとともに、中国がイタリアやドイツのような対外拡張路線をとる兆候を見せたときには厳しくこれをチェックし、中国の植民地政策の行き過ぎをたしなめ、かつ中国に法治・自由・人権・民主の観念が根付くように粘り強く働きかけることとすべきでしょう。