太田述正コラム#0268(2004.2.23)
<台湾の法的地位(続X3)>

 (今回も、「細かい」話が続きますが、もうしばらくご辛抱ください。)

3 台湾「独立」派の主張

 (1)台湾主権帰属未定説
対日平和条約発効に伴い台湾の法的地位は未定となったので、住民の自決権を認めた国連憲章ないし国際人権規約第一条に則り、台湾の住民は台湾の主権の帰属先を決定でき、決定された時点で米国による軍事占領は終了する(戴天昭教授の説。戴天昭前掲)。これは、1979年までの米国の主張でもあった。

 (2)台湾主権台湾人民帰属説
対日平和条約発効に伴い、日本が台湾の主権を放棄したので台湾の主権は台湾住民に帰属したが、台湾は中華民国という外国(の亡命政権)の軍事占領下にある(李登輝前中華民国総統及び陳水扁中華民国総統らの主張。Hertzell前掲及び(http://www.taipeitimes.com/News/edit/archives/2003/10/08/2003070884(10月8日アクセス))。

(3)台湾主権中華民国先占説
 対日平和条約発効に伴い台湾の法的地位は未定となったので、台湾を占領して実効支配していた中華民国が先占の法理に則り1952年に台湾の主権を獲得した(陳鴻瑜教授の説。http://www.taipeitimes.com/News/edit/archives/2003/11/04/2003074562(11月5日アクセス))。

4 コメント

 以上、台湾の法的地位をめぐる様々な主張を見てきましたが、どうして米国がれっきとしたポジションペーパーを公表したことがないのかお分かりになりましたか?
 それは、朝鮮戦争が勃発した1950年あたりを境にして、米国のスタンスが明確に変わった・・ローズベルトのカイロ宣言をトルーマンが否定した・・からです。
 つまりは、敗戦国日本の(国際法に則った正しい)言い分が通ったということです。
 そんな、先の大戦中の米国の言動は間違っていましたと白状するに等しいことを、戦後の米国政府が公文書にするわけにはいきません。
 実はもう一つ理由があります。
2の結論部分で紹介したのは米国の主張とは言っても、行政府の主張であり、この行政府の主張が、1979年以降議会の主張と乖離している(注6)ため、米国政府としての統一的なポジションペーパーがつくれないのです。

 (注6)米議会には、議会が自主的につくったところの1979年の台湾関係法(Taiwan Relations Act)を改正しようとする動きは全くなく、その法律の中に、台湾住民の人権の擁護にコミットしたParagraph (c) of Section 2( "Nothing contained in this act shall contravene the interest of the US in human rights, especially with respect to the human rights of all the approximately 18 million inhabitants of Taiwan. The preservation and enhancement of the human rights of all the people in Taiwan are hereby reaffirmed as objectives of the US.")と、台湾における体制変革を認めたようにも見えるSection 15, Paragraph 2 ( "The term `Taiwan' includes, as the context may require ... and the governing authorities on Taiwan recognized by the United States as the Republic of China prior to Jan. 1, 1979, and any successor governing authorities (including political subdivisions, agencies, and instrumentalities thereof).")が盛り込まれている以上、議会は3の(1)で紹介した台湾主権帰属未定説(1979年までの米国行政府=議会の主張)に依然立っている(前掲http://www.taipeitimes.com/News/edit/archives/2003/10/08/2003070884を参考にした)。

 興味深いのは、中共は1で紹介した主張をしつつも、陳水扁政権による台湾住民投票実施を阻止させるよう米国に働きかけたことによって、2で紹介した米国(米国行政府)の主張・・台湾は、中共の潜在的主権下にあるが、引き続き米国の軍事的占領下にある・・に中共が事実上同意した、と考えられることです(http://www.nytimes.com/2004/02/06/international/asia/06TAIW.html。2月6日)。

(続く)