太田述正コラム#0449(2004.8.22)
<変化の端緒が見られる韓国(その7)>

 (追い抜かれて13位に落ちてしまいましたが、それ以前の上位2メルマガとの票差はじりじりつめています。同じIPアドレスから6時間おきに投票できますので、明20日にかけての残された時間、
http://cgi.mag2.com/cgi-bin/mag2books/vote.cgi?id=0000101909
で繰り返し投票をお願いします。)

C 台湾・高句麗・間島(コラム#439の補足)

 敬愛するデービッド・スコフィールドがまたまた興味深い論考をアジア・タイムスに載せています(http://www.atimes.com/atimes/Korea/FH19Dg01.html(8月19日アクセス)。以下、特に断っていない限り、この論考による)ので、この論考の要旨を、補足を加えつつご紹介しましょう。

 最近中共が突然高句麗史は支那史の一環だと言い出し、韓国が朝野を挙げて抗議をする騒ぎになっているが、同じようなことを中共は前にも行ったことがある。台湾が支那の一部だと突然1942年(つまり1941年の大西洋憲章で米英両国の、日本の海外領土をすべて否定する意志が明らかになった時点以降)から言い出したことだ。
 当時の国民党政権、及び中共は、1943年のカイロ宣言(コラム#247、249、260、268、269)によって、台湾が支那の一部だとする彼らの(突然言い出した)主張が正式に認められたとし、これが中共の現在のスタンスとなっている。
 この台湾をめぐる中共のスタンスの豹変はよく知られているところだが、その裏付けが改めて今年、米タフト大学フレッチャー・スクールのワックマン(Alan M Wachman)準教授によって提示された。
 すなわち彼によれば、中共は、1932年の支那を描いた切手では台湾を表示しておらず、1939年の地図では台湾を支那の域外として、朝鮮、カンボジャ、ビルマと同じ色で表示している。そして、1911年以降チベットと外モンゴルは国民党政府の支配下を離れていたにもかかわらず、この両地域は地図やレトリックにおいて支那の一部とみなされ続けていたというのに、1928年の中共第6回全国代表大会議事録、及び1931年の中華ソビエト共和国憲法には、台湾の住人を支那人ではないとする記述、・・「漢人(Han Chinese)とは異なる少数民族」・・があり、1935年12月25日の中共中央委員会決議では、台湾を朝鮮と同列に位置づける記述・・「朝鮮、台湾、及び日本本土の労働者と農民、及び全ての反日勢力は統一戦線を組まなければならない」・・がある、という。

 では、中共の高句麗史をめぐるスタンスの豹変には韓国はどう対応したらいいのだろうか。
 間島問題を持ち出すことだ。
 韓国の国定の高等学校歴史教科書には「19世紀後半以後、韓民族は間島地方(注11)に大挙して移住し、開拓した。・・清国<との間で>間島帰属問題がおこった<が、李氏朝鮮>政府・・は・・間島を咸鏡道の行政区域に編入し管理していた(注12)。しかし乙巳条約でわが国の外交権を奪った日本は、満州の安奉線の鉄道敷設権を手に入れる代価として、間島を清国の領土として認める間島条約(注13)を清国との間に締結した(1909)。」と記述されている(http://members.jcom.home.ne.jp/yanbian/date01/info01.htm。8月19日アクセス)。
つまり、日本は清と大韓帝国(李氏朝鮮)との間島帰属紛争を、間島を清国領とする形で決着をつけたわけだ。

 (注11)現在の中国延辺朝鮮族自治州と長白朝鮮族自治県にあたる(http://www.jacar.go.jp/incident.htm#kantokyoyaku。8月19日アクセス)。面積は4万3000平方キロであり、現在100万人近い朝鮮族が住んでいる。
 (注12)先月、延世(ヨンセ)大学東西問題研究所のキム・ウジュン教授は、1718年に清朝が作成した初の西洋式地図である「皇輿全覧図」の三つのヨーロッパ版において、間島地方が朝鮮の領土として表記されていることを明らかにし、「地図にあるとおり、当時の中国の王朝も間島地方を朝鮮の領土として認識していた」と主張した(http://japanese.joins.com/html/2004/0707/20040707184832700.html。8月19日アクセス)。
 (注13)間島協定(Jiandao (Kando) Agreement。1909年9月4日)(http://www.jacar.go.jp/incident.htm#kantokyoyaku上掲)

 中共にとって悩ましいのは、中共が台湾の領有権を主張している根拠は、明治維新以降の日本が締結した領土に係る条約をことごとく違法で無効としたカイロ宣言にあるところ、この論理では間島協定に基づく中共の間島領有権も無効になってしまうことだ。(正確に言えば、間島の帰属が法的には未定、ということになってしまうということ。)

 韓国政府は、間島問題を持ち出すことによって、高句麗史問題と間島問題を相打ちにして決着を図るべきだ。つまり、韓国は間島の領有権問題を引っ込める代わりに、中共も高句麗史の新解釈を撤回する形で決着を図るべきだ。

(続く)

<読者X>
太田氏、またまた変な発言。官僚らしいというか、悪い意味で、・・。事なかれ主義。
 中韓で問題になっている、歴史問題。間島領土問題と歴史問題を、取引に利用しろという事です。
 中国は、韓国との間で現在問題になっている「歴史問題」で妥協。韓国は、間島の領土問題を提起し、それを取引材料に使い、その領土問題を妥協することと引き換えに歴史問題の解決を図れ。というものらしい。
 太田氏は、領土問題の重要性を理解していないし、歴史問題・・・の取り扱い方を理解していないらしい。
 宦官的な官僚思考。

<読者Y>
独りよがり

<読者Z>
気になったので、質問させて下さい。
間島条約が無効と韓国が言ったとしても、中国にしてみれば「該当地域の帰属については北朝鮮との間で解決済み」で終わりじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

<太田>
蛇足から始めさせていただきます。
読者Zにはお分かりのような気がするのですが、読者Xと読者Yは、間島協定が登場したコラム#449が、単にデービッド・スコフィールド論考の要約紹介(補足付き)であって、私の見解を述べたものではないこと、を誤解されています。(紹介文であることは、本来私が用いる「ですます調」ではなく、「である調」を用いていることからも明らかだと思うのですがね・・。)
なお、かねてから私がカイロ宣言の法的効力はないと指摘してきている・・換言すれば、日本の朝鮮半島領有や台湾領有は有効であると指摘してきている・・ことからすれば、間島協定が無効であるとするような見解に私が与するはずがありません。

さて、そういうわけなので、読者Zのご質問についても、「スコフィールド氏に聞いて下さい」と回答すべきところですが、しいて私の独り言を申し上げれば、
1 北朝鮮が間島条約の有効無効に係る見解を明らかにしたことはないのではないか。
2 韓国についても同様、と考えられる。(無効だと言っているとすれば、中共が韓国と国交樹立することは躊躇したであろうと考えられるし、有効だと言っているとすれば、スコフィールドはあのような趣旨の論考を書かないはず。)
3 仮に北朝鮮が「間島協定は有効だ」、或いは「間島の領有権は争わない」、と過去に言明したことがあったとしても、大韓帝国(ただし、外交権は当時日本が持っていた)の承継国は北朝鮮と韓国の両国であり、一方の北朝鮮の言明は、もう一方の韓国の国際的権利義務に影響を及ぼすことはないと考えられる。
4 よって韓国は間島協定の無効性を主張できる。
といったところでしょうか。

<読者Z>
いやいや、すみません。僕も誤解していました。デービッド・スコフィールド氏の意見だったのですね。申し訳ありません。
しかし、ついでにといっては何ですが、強いての意見にさらに質問というか意見です。仮に北朝鮮と中国との間で国境が既に定められている場合、韓中修交共同声明で「領土保全の相互尊重」と「平和的に統一」を謳っている以上、間島協定の無効性を主張するのは難しくないでしょうか?
(韓中修交共同声明:http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/CHKR/19920824.T1J.html

<太田>
「平和的に統一」(韓中修好共同声明第5条)は、朝鮮半島が平和的に統一されることを中共が支持する、と言っているだけのことであり、間島問題とは何の関係もありません。
「領土保全の相互尊重」(同第2条)については、日中共同声明(1972年。http://list.room.ne.jp/~lawtext/1972Japan-China.html)にも全く同じ文言が登場(第6条)しており、このような文言があるからといって、「平和的」に領土紛争を提起することに問題があると中共が全く考えていないことは、その尖閣諸島の領有権の主張からも明らかでしょう。

<読者α>
http://www.akashi.co.jp/Asp/details.asp?isbnFLD=4-7503-1920-1
日本帝国主義の朝鮮侵略史(1868―1905)
サブタイトル  征韓論台頭から乙巳五条約(保護条約)捏造まで
著・訳者名 朴 得俊編 梁 相鎮訳
本体価格  2000円

ぜひ読むべき本です。

http://210.145.168.243/sinboj/j-2004/05/0405j0824-00001.htm

<読者β>
> 著・訳者名 朴 得俊編 梁 相鎮訳

偽証が氾濫する法廷(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/02/13/20030213000039.html

 2000年の場合、韓国で偽証罪で起訴された人が1198人であることに比べ日本は5人だった。韓国と日本の人口の差を考慮した場合、国内の偽証が日本の671倍に達するというのが最高検察庁の分析だ。 

 偽証がこのように多い理由は、嘘を大したことと思わない社会の風潮と、「情」にもろい韓国の文化が最も大きな理由だと判・検事は話す。 

<太田>
読者β、面白い記事を教えていただき、ありがとうございました。
 (英語版には載っていませんでした。)
 読者αが紹介された北朝鮮の学者執筆本(邦訳)については、ご自身による書評をご披露いただけるとありがたいですね。

<読者β>
私も一冊紹介しておきましょう。
日韓併合―歴史再検証 韓民族を救った「日帝36年」の真実
崔 基鎬 (著)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4569617042/reviews/ref=ed_er_dp_1_1/249-2997368-8121100

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