太田述正コラム#649(2005.3.5)
<日立製作所(その4)>

 友人から連絡があり、フェア(上記)で当初の予定通り、私が口利きをしてい
た主力製品が出品されたというのだ。
 ただし、出品元はセクションではなく、日立の子会社であったこと、また、セ
クションの職員もその場にやってきていたこと、も教えてくれた。
 話が違う。セクションは業務を縮小したというが、取り扱い製品を日立本社か
ら日立子会社に移しただけで、オール日立としては同じではないか。(どうせ売
れそうもないだろうから)私の商権が侵害されたとまでは言うつもりはないが、
私に何の断りもなく、なぜそんなことができるのか。
 私が既に手を引かされていることを知らないまま、約束通り私のために尽力し
てくれていたこの友人に、私は謝罪した。
 調べてみてもう一つぶったまげた。
 元セクション責任者のAが首になるどころか、しかるべきポストに異動にな
り、米国出張中だというではないか。
 これでは、口利き先に対し、「社内ベンチャーたるセクションを立ち上げた責
任者が首になったためにセクションの業務が大幅に縮小されることになり、これ
に伴い日立と私との関係も終了したが、日立は私に大変感謝している。お世話に
なりました」という気の利いた説明ができなくなる(注9)。

 (注9)Aの名誉のために付言するが、私がその後得た情報によれば、少なくと
も彼自身は、一時本当に首になると思っていたようだ。

 ということは、私は日立の悪口を言わざるをえないということだ。
 それは、そんな日立の口利きを行った私のアホさかげんが明らかになることで
もある。
 しかし、日立ははるかに大きな打撃を受けるはずだ。日立の大分の事務所の責
任者の顔等が浮かんだ。
 そこで、セクション経由で米国出張中のAに私のメールを転送してもらった。
 メールの内容は、年内に私に会って、事実関係のすりあわせを行い、日立IT部
門のしかるべき人に私との経緯を説明した上で、(レベルを上げて)担当取締役
以上から感謝状(注10)を私に発出してもらって欲しい、というものであり、こ
れは日立のためでもある、と付け加えておいた。

 (注10)今回の感謝状の趣旨は、セクションの感謝状の趣旨(コラム#648)と
同じ趣旨+法令遵守・情報公開により配意した方がよいとアドバイスしたことへ
の謝意+口利き先等が日立に悪感情を抱かないように配慮したことへの謝意、
だ。もとより、「担当取締役以上からの感謝状」というのは最大限要求であり、
私は担当取締役からの口頭の謝意の表明くらいで手を打つつもりだった。

 しかし、今度も返事はなかった。
 年が明けてすぐ、私はある公益団体幹部で知人であるCを仲介者として、同様
の要求を日立IT部門の総括部局にぶつけてもらった。その際、私が日立と円満に
別れたと周囲に説明できるようなストーリー(ウソの話しでよい)をつくってく
れるように、併せて頼んだ。
 先週末、C経由で返事が来た。全面拒否回答だった。
<以上、経緯終わり>

 さて、ここまで読んで来られた読者はお分かりだと思いますが、この「紛争」
の過程で、私は、何も求めていない状態からスタートして、セクションからの感
謝状が欲しい、いや取締役以上からの感謝状だ、と要求を「エスカレート」させ
てきたところ、この過程で私が失ったものは殆どありません。好意が何度も無に
されて頭には来ましたが・・。しかし、最終的に日立は大きな打撃を受ける結果
を自ら選択しました。ぎりぎりのところで合理的な判断ができる日立(のIT部
門)、という私の認識(コラム#647)は間違っていたのです。
 一体、日立はどうしてそんなばかげた選択をしたのでしょうか。
 私の分析をご披露しましょう。

4 日立の愚行の解明

 (1)セクション責任者A
 Aが営業経験に乏しく法令遵守感覚がなかったという私の見立ては誤っていな
かったと思います。問題は、それにもかかわらず、彼が誰にも相談せずに、(私
があるに違いないと考えているところの)裏マニュアル通りの対応を私に対して
行った点です。
 恐らくそのマニュアルには、口利きを頼むときには、極力契約書はつくらず、
たとえつくったとしても、できるだけ一般条項を用いて具体的な契約条件は明示
するな、と書いてあったはずです。
 また、契約条件等についてやりとりする際には、記録の残るメールの使用はひ
かえ、口頭でやりとりすることとし、その際もできるだけ言質を与えないように
せよ、とも書いてあったはずです。
 どうしても契約条件等に関し、メールをやりとりしたり、言質を与えたりする
必要がある時は、権限のない者を使って後でしらを切れるようにせよ、とも。
 なぜこのようなAの対応に問題があったのでしょうか?
 私が将来とも日立との関係に依存せざるをえない人間、つまりは日立から見て
の弱者(泣き寝入りせねばならない者)ではなかったことです。
 そもそも、私が契約書をつくることを何度も要求した、という点だけとって
も、少なくとも私が自分を弱者ではない、と考えていたことは見て取れたはずな
のに・・。(契約書をつくらないならやーめた、と私が言わなかったことをもっ
て、弱者だと誤解したのでしょうね。)
 私とは、契約書をかわすべきだったのです。
 対等の相手である以上、契約書があることは日立を守ることにもなるからです。
 契約書があれば、例えば、契約終了条項も入っているはずで、その条項に従っ
て、私と協議しなければならず、協議さえしておれば、淡々と後腐れなく私との
契約関係を終了させることができたはずです。
 契約書を交わさず、従って契約条件も確定していなかったことでもう一つ日立
が後々困ることになったのは、一体私との契約が、口利き先と商談がまとまった
時だけ口銭を払うという条件(販売委託契約)なのか、それとも口利きそのもの
にも謝礼を払うという条件(コンサルタント契約)なのか、不明確だったことで
す(注11)。

 (注11)私自身は、当然のように前者の認識でいた。後者を潔しとせず、と
いったところだ。今から思えば、いささか潔すぎ、これも相手をして私を弱者と
誤解させることにつながった、と反省している。

(続く)