太田述正コラム#722(2005.5.14)
<人類最古の職業(その2)>
3 売春と人身売買

 世界的に見れば、売春がらみの最もホットな話題は、女性の国際人身売買です。
 欧州においては、モルドバ・ルーマニア・ウクライナが主要「原産地」であり、彼女達は、ブルガリア等を中継点として、欧州の先進諸国に送り込まれているといいます。

 その背景には、中央アジアとコーカサス以外の旧ソ連・東欧諸国では、強制売春の女性一人当たり売り上げが年間23,500米ドルに過ぎないのに、欧州の先進諸国や米国では、67,200米ドルにもなる、という現実があるというのです。
 (以上、http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/4532617.stm(5月12日アクセス)による。)

 上記BBC報道は、ILOのレポートに拠っているのですが、この報道に対する、BBCサイトへの読者の書き込みのいくつかが指摘しているように、こんなことは、人身売買でも強制売春でもなく、「被害者」の暗黙の同意に基づく正常な国際商取引に過ぎない、という見方もできそうです。

 私自身、どちらかというと、このような見方に賛成です。
 さもないと、日本の旧軍のいわゆる慰安婦についても、やっぱり人身売買に基づく強制売春だった、ということになりかねないからです。

4 米国史の恥部

 しかし、これからご紹介する米国のケースは、いかなる言い訳も許されない、文字通りの人身売買に基づく強制売春です。

 米国では1664年にメリーランド州が、初めて白人と黒人との間の婚姻を禁じる法律を施行しました。19世紀中には、米国の大部分の州で同様の法律(anti-miscegenation statute、anti-race mixing law。ただし、対象が黒人以外のすべての非白人へと拡大された)が施行され、1960年代に至るまで41の州でこれらの法律が生きていました。

 実にこの状態は、1967年に米最高裁がこの種の法律を違憲と断じる判決(Loving v. Virginia)を下すまで続いたのです。
 (以上、http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A17600-2005Feb11?language=printer(2月13日アクセス)による。)

 何度も申し上げているように、いかに米国が異常な国であり、できそこないの(bastard)アングロサクソンか、分かりますね。
 そして改めて、日本と先の大戦を戦った当時の米国が、(大部分の州でこれらの法律が生きていた点に端的に示されているような、)ひどい人種差別国家であったことを忘れないようにしたいものです。

 さて、上記法律が大部分の州で施行されており、かつ奴隷制がなお合法であった1850年から1860年の間に、黒人奴隷の数は約20%増えたのですが、奴隷たる白黒混血児(mulatto)の数は何と67%も増えました。
 これが意味するところは明らかです。

 黒人奴隷の持ち主である家の主人やその家族の男性は、その家の女性の黒人奴隷と盛んに性交渉を行っていた、ということです。
 人身売買されてきた、移動の自由のない女性、しかも要求を拒むことを許されない(拒んだら殺されても文句を言えない)女性が性交渉を行うわけですから、これぞ強制売春そのものです。
 そもそも、奴隷商人は、女性の奴隷をしばしばレイプしてから販売したと言われています。

 そしてもちろん、こんな話が米国の教科書には載っているはずはありません。
 (以上、http://www.csmonitor.com/2005/0504/p09s01-coop.html(5月4日アクセス)による。(注4))

(注4)この論説の筆者まで、この米国での強制売春のケースを日本の慰安婦と同様のものだと言っているのには開いた口が塞がらない。これにひきかえ、最近韓国で、日本によって強制徴用されたのは慰安婦の2割に過ぎず、8割は貧しさに由来する普通の売春婦だったと主張する勇気ある評論家が現れた(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200504/200504140028.html。4月15日アクセス)ことには敬意を表したい。強制徴用された慰安婦など全くいなかった、と主張する韓国人が現れるまで、後一歩だ、と信じたい。