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太田述正コラム#9422005.11.11

<日本が破綻させた日米韓同盟(その3)>

4 破綻した日韓「同盟」

 (1)日韓の憂うべき状況

 今年6?7月に日韓両国で同時に実施された世論調査を通じて日韓の現状を見てみましょう。

 (以下、世論調査結果はhttp://www.nrc.co.jp/rep/rep20050815.html11月3日アクセス)による。)

日韓はそれぞれ米国と同盟関係にあり、米国を介して日韓も事実上の同盟関係にあります。

 当然のことながら、日本人で韓国を軍事的脅威に感じる人は0.7%とほとんどいません。(日本人にとっての軍事的脅威は、北朝鮮(65%)、米国(11%)、中共(8%)の順。)

 ところが、韓国人にとっては、日本は北朝鮮(36%)に次ぐ軍事的脅威(22%)なのです。(ちなみに、3番目は米国(20%)、4番目は中共(11%)でした。)

 しかも、2001年の世論調査と比べて、日本人では韓国に親しみを感じる人は53%から32%に減り、他方韓国人では日本に親しみを感じる人は30%から18%に減っています。(今回の世論調査では、日本人で韓国に親しみを感じない人は41%、韓国人で日本に親しみを感じない人は79%でした。)

 韓国人の日本観については、そんなものかと思う一方で、日本人で韓国に親しみを感じる人がこれだけ減っているということは、韓流ブームがこの4年の間に日本を席巻した(注4)ことを考えると、ちょっと不思議です。

 (注4)日本における韓流ブームは、韓国料理や朝鮮語に対するブームまで引き起こしているというのに・・。ちなみに、日本における韓流ブームの端緒をつくったペ・ヨンジュンについて、「日韓関係の改善に、大使10人が束になってもかなわないほどの貢献をした。・・彼こそまことの愛国者だ。」という声が韓国にある。(http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-bae2nov02,0,6321801,print.story?coll=la-home-world11月3日アクセス)

 (2)手はある

しかし、日本が日韓関係改善のためにとれる手はあります。

日本では余り報道されていませんが、今、韓国の若者達の間では日本の若手女流作家の小説が大変なブームなのです。

以前から村上春樹、村上龍、浅田次郎の小説は人気がありましたが、このところ、江國香織、吉本ばなな、綿矢りさ等が大人気で、ソウル国立大学図書館で最も貸し出しの多い本20冊中8冊、高麗大学でも同じく20冊注8冊が日本の小説です。また、韓国のインターネット書店であるアラディンでは、今年1月から8月までの日本の小説の売り上げが、昨年の同時期に比べて130%も増えています。

(以上、http://english.chosun.com/w21data/html/news/200511/200511060006.html11月7日アクセス)による。)

韓流ブームと上記「日流」ブームは、日韓両国間に朝鮮半島が日本の植民地であった時代に醸成された共通性があったところへ、韓国が経済面等で急速に日本にキャッチアップしてきたことによって招来された、と考えられます。

ただし、韓流ブームの方は、一昔前の日本を思い起こさせる懐かしい心象風景が、(韓国が豊かになったおかげで)日本とほとんど同じセッティングの中で韓国人の美男美女俳優によって紡ぎ出されることが、日本の中年の男女を惹き付けているのに対し、日流ブームは、リアルタイムで、韓国の若者達が、日本の若手作家が描く、日本の若者達の日常と感性に共感している、という違いがあり、日流ブームの方がより注目されるべきでしょう。未来は若者達のものだからです。

前出の世論調査でも、韓国人全体では、「日本に関心がある」人は43%で、「関心がない」人(41%)と拮抗しているものの、20歳?29歳の若者をとれば、それぞれ56.5%27.7%であり、若者達の日本への関心が高いことが分かります。

この若者達は、ノ・ムヒョン現大統領に投票した人々であり、対支事大主義や米国離れや対北朝鮮太陽政策(宥和策)を当然視している人々でもあります。

彼らを主たるターゲットとして、日本政府が、日本を代表する知性や文化人、あるいは英米の日本学者を動員して文化攻勢をかけることによって、彼らを名実共に日本シンパにした上で、彼らを通じて韓国の対支事大主義や米国離れや対北朝鮮太陽政策の行きすぎの是正を図る(注5)ことは、決して不可能ではない、と思えてならないのです。

(注5)ブッシュ政権や同政権に近い米国の識者の間では、韓国の対北朝鮮宥和政策は、北朝鮮の独裁体制の非人道性に目をつぶり、その延命に協力するものとして極めて評判が悪い(http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-boot21sep21,0,2455130,print.column?coll=la-util-opinion-commentary。9月22日アクセス)。日本は、韓国の行きすぎをたしなめるとともに、米国に対北朝鮮宥和政策への理解を求めることが望まれる。

 それにしても、日本の外務省の対韓文化外交は何をやっているのでしょうか。少しも目に見えませんね。

(続く)

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