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太田述正コラム#9442005.11.12

<フランスにおける暴動(その1)>

 (10月(11日)?11月(10日)のHPへの訪問者数は、23677人でした。先月は24681人であり、前々月は25735人(最高記録)だったので、二ヶ月連続しての減少です。太田ブログ(http://ohtan.txt-nifty.com/column/)への月間アクセス数も、2544にとどまり、前月の2662より減少しました。今月は前月より一日多いことを考えると、残念な結果に終わった、と言わざるをえません。一方、メーリングリスト登録者数は、前回より29名増え、1385名に達しました。累計訪問者数は、524,776人です。)

1 始めに

先月末からフランスで、イスラム教徒たる移民並びにその子孫(以下、「移民」という)の若者達の暴動が起こり、さすがに沈静化に向かいつつも、いまだに続いています。

国内で黒人問題を抱え、つい2ヶ月前にも、被災したニューオーリンズの黒人達による掠奪があったばかりの米国では、人ごととは思えないということでしょうか、さまざまな論評がなされています。

そのうちのいくつかをご紹介します。

その上で、最後に日本の朝鮮人「差別」問題に触れるつもりです。

2 ニューヨークタイムス

 最初に、ニューヨークタイムスのパリ特派員とおぼしきCRAIG S. SMITHの論評です。

 その概要を以下に掲げます。

 米国の黒人問題は、何世紀にもわたる背景があるが、フランスの移民問題はせいぜい三世代の時間的背景しかない。おかげで、米国の黒人街に多く見られるスラムは、フランスの移民街では見られない(注1)。

 (注1)米国で黒人は人口の11%を占めている(http://www.asahi-net.or.jp/~yq3t-hruc/flag_JA.html#America)のに対し、フランスでイスラム教徒たる移民は人口の8%を占めている。

他方、米国では差別解消のために、アファーマティブアクションを含めたさまざまな対策がとられてきたところ、フランスでは、差別解消のための対策がこれまで殆どとられてこなかった。

 だからフランスでも適切な対策がとられるようになれば、問題は容易に解決する、ということには、遺憾ながら必ずしもならない。

 というのは、米国の黒人問題は、エスニシティーの問題だけだが、フランスの移民問題は、これに(イスラム教という)宗教の問題がからんでいるからだ。

 しかし幸いなことに、今回の暴動に関して言えば、それは宗教戦争といったものでは全くなく、差別の結果、社会的・政治的に疎外されている移民の若者達による通過儀礼的な鬱憤晴らしの域にとどまっている。

 もう少し、米国での黒人と、フランスでの移民の境遇を比較してみよう。

 フランスの移民が受けている教育は、国が取り仕切っているだけに、地方税収入によって左右されるところの、米国の黒人が受けている教育より充実している。また、フランスの福祉は米国よりもはるかに充実している。

フランスでは、たとえ就業者がいても、四人家族が国家補助があるアパートに住んでいる場合、月3?400米ドルしか家賃を払う必要がないし、あれやこれやで月1,200米ドルもの補助金が与えられる。就業者がいない場合は、推して知るべしだ。それに誰でも医療費と教育費は無償だ。

にもかかわらず、フランスの移民の差別状況は深刻だ。

 まず、就職や仕事にいおける差別的取り扱いが禁じられている米国と違って、フランスでは、移民ははっきり差別されている。

 また、米国では、黒人であれ非黒人であれ、黒人が米国人であることはみんな当然視しているというのに、フランスでは、(フランス国籍を取得していて、しかも移民してきてから三代目にもなっていても、)移民は、非移民からは、アフリカ人やアラブ人とみなされ、移民自身は、アフリカ人やアラブ人でもなければ、フランス人でもないというアイデンティティークライシスに陥っている(陥らされている)。

 (以上、特に断っていない限りhttp://www.nytimes.com/2005/11/06/weekinreview/06smith.html?pagewanted=print11月6日アクセス)による。)

 一体、どうしてそんなことになったのだろうか。

 一つには、フランスでは、平等のタテマエが強調されるあまり、エスニシティーや宗教の存在について、国は関知しないものとされてきたことだ。関知しないのだから、エスニシティーや宗教に係る公式の統計がフランスにはない。

 統計がない以上、実態として存在する差別の現況を把握する手段がない。いわんや、差別の解消を図る施策も講じられない、ということになる。

 そして二つには、過酷な植民地統治を行ったという負の遺産をフランスが引きずっていることだ。

 例えば、アルジェリア独立戦争にフランスは敗れた。だから、(先祖が)アルジェリア出身だ、と聞いただけで、フランスの非移民は、不快な気持ちをその移民に抱くというわけだ。

(以上、http://www.nytimes.com/2005/11/11/international/europe/11france.html?pagewanted=print1111日アクセス)による。)

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