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太田述正コラム#10032005.12.16

<日中関係の現状(その3)>

「第2回 まぐまぐBooksアワード」の投票が、21日まで行われています。

http://books.mag2.com/dynamic/m/0000101909/index.htmlをクリックして、ぜひとも本コラムへの人気投票をお願いします。なお、24時間置きに投票できますので、投票締め切りまで、繰り返し投票していただければ幸いです。本日もまた、朝方は10位にあがったけれど、昼前には11位に下がり、夜にかけて票差がどんどん開いて行っています。何とかこのサイクルを断ち切りましょう!)

 まず自覚すべきは、日中両国間の経済交流の著しい進展です。

 昨年、日中貿易は1,680億米ドルに達し、先の大戦以降初めて、支那が米国を抜いて日本の最大の貿易相手国になったことはよく知られていますが、在中日本企業で100万人の支那人が働いており、日本企業の下請け企業で、更に920万人が働いていることはご存じでしたか。

 もはや、日本と支那は、経済面で切っても切り離せない関係にあるのです。

 支那における日本ブームも、もっと注目されてしかるべきです。

 私は以前に(コラム#557で)、「中共国民の反日感情の「悪化」はタテマエの世界の話であって、彼らのホンネは違うのではないでしょうか。一例だけ挙げれば、現在の中共における、日本のベストセラー作家である村上春樹のブームです。・・現在日本では「韓流」が中年以上の男女を席巻しており、これは(日本から見た)日韓関係の新たな時代の到来を示すものであると私は考えていますが、村上ブームは、(中国から見た)日中関係の本当の実態を示す現象である、と私は考えているのです。」(「中国」は「中共」に改めた)と申し上げたことがあります。

 また、昨年10月には北京で第6回目のWorld Cartoon Conference(通称、manga summit=マンガ・サミット)が開催され(http://www.artbomb.net/blog/2004_08_01_archive.html1216日アクセス)、日本の大衆文化であるマンガが改めてクローズアップされたこともあり、就職に有利だとしてもともと人気があった日本語を、中共の大学で(第一外国語の英語に加えて第二外国語として)勉強する学生の数が増える一方です。

 少し古い2003年のデータですが、中共で日本語を学んでいる人は、387924人に達しており、1998年と比べると14万人以上増えています。また、中共の大学で日本語を学んでいる学生は204843人で、1998年より10万人以上増えています(注8)(http://www.peoplechina.com.cn/maindoc/html/200408/teji-1.htm1216日アクセス)

 (注8)もっとも、これは必ずしも中共だけの現象ではない。世界的に、日本語学習者が急速な伸びを示していることについて、コラム#223参照。

立教大学法学部(中国政治史)の高原明生教授(兼米ハーバード大学の客員研究員)は、「強固な親日本感情が中国、とりわけ都市部において形成されていると思う」と述べていますが、私も全く同感です。

4 日中両政府関係改善の方策

 それでは、どうして日中両政府間は険悪なのでしょうか。また、関係を改善するためにはどうしたらよいのでしょうか。

 新アメリカ財団(New America Foundation)のシニア・フェローで日米関係専門家のクレモンス( Steven Clemons)は、日本が米国からもっと独立することだ、と日本の政治家達に直言しています。

 日本はいつまで米国の顔色ばかり窺っていたら気が済むのか。そんな日本に中共はあきれかえっている。日米安保条約は維持しつつも、日本は一刻も早く、自分自身の頭で、軍事面を含め、日本が何をなすべきかを決められる国になるべきだ。というのです。

 更に彼は、このままでは、日本の大衆が、米国が日本を臣従させてきたこと・・実は日本が勝手に臣従してきたのだが・・に怒りを爆発させ、日本に反米政権が生まれかねない、と憂慮しています。

(以上、http://www.atimes.com/atimes/China/GL15Ad01.html1215日アクセス)による。)

このクレモンスの、中共も米国も、日本の吉田ドクトリン克服を希っている、という率直な指摘に、自民党や民主党の政治家は真剣に耳を傾けて欲しいものです。

 なぜ小泉首相が中共の首脳達に嫌われているか、このあたりで私の考えを明かしておきましょう。

 小泉首相が、安全保障、就中軍事のことに全く関心がなく、安全保障、就中軍事のことが全く分かっていない人物(コラム#226)だからだ、と思います。

 他方、中共の最高ポストは、中国共産党中央軍事委員会主席であり、共産党総書記、国家主席の上位にあります。(現在、胡錦涛がこの三つを兼務しています。)

 これは、支那の歴史において、歴代の王朝が、(元等、ごく少数の例外を除いて)軍事を軽視しすぎてきたことへの反省に立ったものです。(反省し過ぎか(?!))

 中共当局のこの姿勢に影響されたか、中共国民の間でも、軍事オタクがゴマンとおり、日本国民のごく少数の軍事オタクでは、到底太刀打ちできない状況です。

 (以上、コラム#103参照。)

 そんな中共の首脳らから見れば、この期に及んでいまだに米国に安全保障・軍事を丸投げしたままで平気な顔をしている日本の政治家達が全く理解できないところへもってきて、小泉首相はそもそも、安全保障・軍事について完璧な音痴ときているのですから、彼らに相手にされないのは当たり前だと言うべきでしょう。

 (民主党の前原代表については、既にご説明したとおり、安全保障・軍事のプロと自称しつつ、トンデモ発言をしてすっかり男を下げた、ということです。)

(完)

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