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太田述正コラム#11962006.4.21

<緊迫化する竹島問題(その3)>

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<最新情勢>

 韓国側からは、韓国の外交通商第1次官が、測量船が韓国の主張するEEZに侵入した場合、拿捕も検討していることを明らかにしたり、韓国の最大野党ハンナラ党が、竹島周辺海域を両国が共同管理する「暫定水域」とした1999年発効の日韓漁業協定の廃棄と日本との再交渉を求める決議案の国会提出を決める等、強硬意見が聞こえてくる反面、同じ外交通商第1次官が、「我々は6月に提案すると発表したことはない。(日本側が)オーバーアクションした面がある」と述べたり、潘基文(パン・ギムン)外交通商相が、日本側がまず調査計画の撤回を表明すれば韓国式名称の提案時期を延期することもあり得るとの考えを示唆したり、歩み寄り姿勢も見られます(http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20060421NTE2INK0420042006.htmlhttp://www.asahi.com/politics/update/0421/003.html、及びhttp://www.asahi.com/politics/update/0421/003.html(いずれも4月21日アクセス))

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4 再び朝鮮日報の論調について

 21日付の讀賣新聞電子版の「日本が竹島周辺海域で予定している海洋調査について、韓国メディアが「指揮を執っているのは・・「超保守」<の>・・安倍官房長官」と一斉に報じている。9月の自民党総裁選を前に保守勢力からの票集めを刺激する<という>・・政治的思惑がある・・というものだ。」という記事(http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060420id26.htm。4月21日アクセス)も、こと朝鮮日報に関しては誤報に近い、と言わざるをえません。

 本件に係る安倍官房長官についての朝鮮日報の記事については、既に(コラム#1194で)取り上げましたが、この記事が、「拉致問題で強硬姿勢をとったことが契機となって<安倍氏>が首相候補として急浮上した」と指摘していたことを思い出してください。

 21日付の朝鮮日報日本語電子版は、「18日午後、・・<韓国>の国会・・の・・会議室の中はまるで日本の・・<国会>にでもなったかのように日本のマスコミ各社でごった返した。NHK・フジテレビ・NTVTBS・テレビ朝日などほとんどすべてのテレビ局と、朝日・読売・毎日など大手新聞社の特派員たちがレコーダーとペンを突き付けた。この日の聴聞会出席者は北朝鮮に拉致された金英男・・さん家族。金さんは北朝鮮拉致被害者の日本人、横田めぐみさんの夫だと最近確認された人物だ。・・国会だけではない。日本の記者たちは金英男さん拉致に加わったと伝えられた金光賢・・氏宅の前でも、もう5日連続で張り込んでいる。自国民保護を大切に考える日本人に、無謀にも北に連れて行かれためぐみさん拉致事件は重要な関心事だ。日本政府は北朝鮮をさまざまな角度から圧力を加えたあげく、2002年には北朝鮮の金正日・・総書記<から>拉致を認める発言を引き出し、日本人は横田夫妻によるめぐみさん救出努力に署名運動で応えている。日本人拉致被害者は21人。韓国の拉致被害者の23分の1だ。分断以来50年間、南で北に拉致された人は公式に確認されただけで485人だ。不慣れな土地で自国民拉致者に関する手がかりが一言でも得られるかと東奔西走する日本人の姿を見て、今更ながら私たち自身を振り返るようになった。」という記事(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/20/20060420000047.html。4月221日アクセス)を掲げています。

つまり、「拉致問題で強硬姿勢をとったこと」は、安倍氏に対する讃辞なのであって、朝鮮日報が安倍氏を「超保守主」などと考えてはいないことは明らかなのです。

だめ押しをしておきましょう。

同じく21日付の同紙日本語電子版のもう一つの記事(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/20/20060420000026.html。4月21日アクセス)は、「安倍官房長官・・が今年9月の自民党総裁選挙をにらんで主導しているとの<上記>分析」について、「「あまりにも一面的な説明」との見方が専門家の間では支配的だ」と切り捨てた上で、「盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権発足以来、・・<韓国では>韓米日同盟関係に対する認識が希薄になり、<ために>米国<は、そ>の対北、対中政策<において>韓国と距離を置くようになっている<という>状況の中、・・「韓半島に中国の影響圏に入る統一国家が樹立したら日本は孤立の危機に陥る」という情勢認識が、「中国脅威論」の高まる日本では説得力を持って広まっている。」とし、「韓国が反日、親中国国家になったら、日本の安全保障の最前線は竹島になるほかない」という論議が日本で出てきており、だからこそ、「小泉首相<は>・・北方領土、・・尖閣諸島(中国名・釣魚島)などに比べ、これまで関心を持たれていなかった・・独島<の>問題を、わずか1年で北方領土や尖閣諸島の水準に格上げした」と分析して見せています。

 これが、穿ちすぎた分析であることは、書いた記者自身が分かっているはずです。

 この記事は、「韓米日同盟関係・・希薄化」政策ないし「反日、親中国」政策、より端的に言えば、「韓半島」を「中国の影響圏」に入れる政策を追求しているノ・ムヒョン政権に対する批判を真の意図としている、と理解しなければならないのです。

同じ記事の中の、「匿名を名乗る日本の韓半島問題専門家は「小泉首相の退陣を控え、今こそ日韓関係を再調整する絶好の時期ではないか」と話した。」というくだりでは思わず笑ってしまいました。

「匿名を名乗る日本の韓半島問題専門家」とは記者自身であり、朝鮮日報はここでも、ノ・ムヒョン政権に対し、対日政策等の抜本的転換を強く促しているのです。

(続く)

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