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太田述正コラム#12082006.4.29

<戦う朝鮮日報(その3)>

4 対米外交

 「<ブッシュ大統領と>の面会で加藤良三駐米日本大使が同席した一方、・・駐米韓国大使の姿は見あたらなかった。・・<また、>27日米下院国際関係委員会のヘンリー・ハイド委員長が早紀江さんと韓国側の証人らを呼んで面談した際にも、駐米日本大使館の副大使は参加したが、韓国の外交官の姿はなかった。・・これについて駐米韓国大使館の高位関係者は「韓国も今回の計画を知ってはいたが、北朝鮮との関係を総合的に考慮せねばならないため、沈黙するしかなかった」と話した。・・<しかし問題は、大統領との面会>の現場を取材する記者についても、米国側の対応<が>日本と韓国で異なった<ことだ>。日本人記者については駐米日本大使館の協力のもとで読売新聞と共同通信の2社の記者が取材できるよう配慮したが、韓国人記者の取材は許可されなかった。 ・・<韓国>政府内には「北朝鮮の人権に対する韓米日3カ国の姿勢の違いが象徴的に表れた事件」として憂慮する意見もあるという。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/29/20060429000023.html前掲)

 これは、韓国の人々に対し、米韓関係がいかに冷却化しているかを知らしめ、注意を喚起することを目的とした記事であると言えるでしょう。

 この記事は、何と3月25日から29日午前中まで日本語版に掲載されていた下掲記事(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/03/25/20050325000070.html)に代わって掲載された、と考えられます。

 「韓国国際政治学会が25日に主催した国際学術会議で、ダグ・ベンド米カント研究所研究員は、「米国において韓国は莫大な費用と犠牲を注ぐほどの死活的な利益の対象ではない」とし、「韓米両国は友好的な決別を準備しなければならない」と述べた。先日、「韓国は敵が誰なのかハッキリさせるべき」と要求した米下院外交委員長の特別補佐官は「米議会で米日修交150周年記念決議案は圧倒的多数で可決されたが、韓米同盟50周年の決議案は推進する議員が存在せず廃棄された」と話した。 ブルース・ベクトル米空軍参謀大学教授は「大韓帝国が日本によって併合されたことや韓国戦争が勃発したのは、すべて韓国が同盟戦略で失敗したため」と分析した。・・韓米関係は現在、後戻りできない地点に徐々に接近しており、最近韓国政府が表明した「在韓米軍の北東アジア起動軍化反対」「韓米日安保3角体制を離脱し、北東アジアのバランサーを自任」といった方針に則って韓米両国の距離は一層急速に疎遠になる兆しだ。韓国国民は、現在自ら選択した大統領が独自の判断によって新しい戦略的選択を推し進めてきた2年間にもたらされた結果を目の当たりにしている。その結果とは、ある駐韓ヨーロッパ大使がセミナーで大韓民国と大韓民国国民に投げかけた質問に克明に現れている。「韓国は果たして信頼できる同盟国が一つでもあるのか」」

 この記事とほとんど同じ記事が、既に昨年3月の時点で英語版に掲載されており(コラム#708)、いかに朝鮮日報がノムヒョン大統領の対米外交に危機感を募らせ、警鐘を鳴らし続けてきているかが良く分かります。

 最近の記事をもう一つあげておきましょう。

 「米国の財務省は<3月>30日、北朝鮮の大量破壊兵器の拡散を支援したスイスの企業の米国内資産を凍結した。米ホワイトハウスの報道官は、中国が脱北者のキム・チュンヒさんを北朝鮮に送還したことについて、「中国の対応に強い懸念を抱いている」と明らかにした。米国の北朝鮮人権特使は、「今年が北朝鮮難民収容の転機になるだろう。北朝鮮の開城工業団地の<韓国企業に雇われている>労働者の労働条件を調査する予定」と述べた。また、これより先の<3>月29日、米上院・法制司法委員会は、北朝鮮をはじめとする、ならず者国家(rogue state)の大量破壊兵器や偽造紙幣といった犯罪行為に関する、重大情報を提供する者に特別ビザを発給する内容の法案を成立させた。米国行政府と議会が、わずか2日間<の間に>北朝鮮関連の措置を次々と打ち出したのだ。これらの措置は、北朝鮮の政権維持費用として使われる偽造紙幣および兵器の輸出経路を遮断し、北朝鮮の住民弾圧体制に圧力をかけることに焦点が絞られている。「北朝鮮の核開発問題とともに犯罪、人権問題も同時に解決していこう」と主張した米国が、もはや核問題は棚上げし、犯罪、人権問題を前面に掲げて北朝鮮に圧力を加えている。米国が北朝鮮体制に変容(trasformation)、ないしは転換(change)を起こすため本格的に乗り出したのだろうか?・・<韓>国民にとっては不安を抱かざるを得ない衝撃的な雰囲気だ。北朝鮮の核開発問題解決を優先視し、犯罪・人権問題は、その足かせとならないようにしたいというのが本音だった韓国政府は、今何を考えているのだろうか。本音は違っても、建前は協力を掲げていた韓米両国が、もはや完全にそれぞれの道を歩み始めた。正確に言えば、米国が、考え方の違う韓国と二人三脚の真似をすることに、もうこりごりしたという意思表明をしたものと受け止められる。・・ことがここまで悪化した理由は、韓国だけで韓半島問題を主導できると信じている韓国政府の自閉的状況判断や、そうした考え方がもたらした韓国の同盟内での孤立状況のためだ。そのため、北朝鮮を鞭で懲らしめようする米国を、傍観するしかない立場に追い込まれてしまったのだ。韓国と米国がこのようにそれぞれの道に歩む場合、その果てにはどんな結果が待っているだろうか。その結果に対する責任はいったい誰が負うのだろうか。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/01/20060401000001.html。4月2日アクセス)

 ところで、ノムヒョン政権は反米ですが、韓国民は圧倒的に親米なので、話はややこしくなります。

  韓国で昨年末に実施された20歳以上を対象にした世論調査によれば、「「韓国に有益である国家」では米国が81.7%を占め、圧倒的多数を占めた。続いて中国(6.1%)、北朝鮮(5.4%)、日本(4.5%)の順とな<り、>このような米国に対する信頼は、すべて年齢帯に渡って幅広く見られ、20歳代でも77.5%を占め」ました(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/20/20060320000014.html。ただし、3月20日アクセス)。

また、韓国の人々の米国留学熱にはすさまじいものがあります。

「留学ビザを取得して米国の中学・高校や大学・大学院で学ぶ韓国人留学生の数が86,626人に上ることが・・明らかになった。これでインド(77,220人)を抜き、初めて国別の1位となった。3、4位は中国と日本だった。ところが、対象を大学生・大学院生に限ると韓国人留学生の数は5万3,358人と、中国に続く3番目となる・・。これは、韓国人留学生には中学校や高校に通う「早期留学生」の数が多いことを意味している。正規の留学ビザを取得して留学する早期留学生は、その多くが私立学校へ通う。私立学校でなくてはビザが発給されないからだ。米国の私立学校の年間の授業料は一般的な私立学校で1万5,000ドル(約170万円)、寄宿学校(ボーディング・スクール)で3万5,000ドル(約400万円)程度だ。しかし寄宿学校に通わせたいという保護者が引きも切らない。米国の寄宿学校協会は毎年韓国で合同学校説明会を開く。ホームページに韓国語による学校紹介を載せている私立学校もある。また、同伴家族ビザや観光ビザで米国の学校に通う韓国の小中高生も多く、その数は把握のしようがない。最近は「養子留学」という抜け道を使う例もあるという。子どもを、教育環境のよい地域に住む在米韓国人や、親戚などの在米韓国人の養子とするのだ。そうすれば、公立学校に無料で通わせることができる。大学に進学する際にも、現地の学生と同じ枠で出願でき、奨学金などの対象ともなる。「養父母」には月に3,000ドルほどの謝礼を渡すという・・。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/28/20060428000029.html

その背景には、熱狂的な英語教育熱があります。

3月末に実施された世論調査によれば、チャンスがあれば子供の外国語教育(大部分は英語教育)のために家族ごと外国に移民したいと考えている人が25.2%、子供だけを早期留学させたいと考えている人が21.8%、キロギアッパ(=子供の早期留学のため外国に住んでいるその子供と母親のため韓国で単身働く父親)をしたいと考えている人が12.0%いることが分かっています(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/31/20060331000049.html。ただし、4月1日アクセス。)

私から見ると、韓国人は、必死に韓国・・狂った北朝鮮との接壌国にして反米政権下にある・・から米国等の英語圏に逃げだそうとしているとしか思えません。

(完)

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