太田述正コラム#1370(2006.8.9)

<裁判雑記(続々)(その2)>


 最後に原告に申し上げておきたい。
 様々な媒体を通じて広く流布しているところの、原告の職務怠慢疑惑が、原告主張のとおり、事実無根であるとしよう。

 私が原告の立場であれば、原告同様、自分の名誉回復に向けて、あらゆる努力を行うに違いない。

 しかし遺憾ながら、この訴訟に関する限り、原告の努力が実を結ぶことはありえない。

 仮に万が一原告が勝訴する形でこの訴訟が確定したとしても、被告の私に原告の職務怠慢の有無そのものを争う意志が全くない以上、原告の名誉が回復することはないからだ。

 かかる観点から私は、原告が、「平成10年7月17日最高裁判例」を引用しつつも、この判例において、雑誌掲載記事によって名誉毀損による不法行為が成立しているとして、損害賠償請求と同誌への反論文掲載請求が行われたところ、不法行為は成立しないとされ、従ってまた損害賠償請求と反論文請求も認められないとされたにもかかわらず、「故意か過失かは定かではないが」、原告が、準備書面(1)で「引用した<この>判例から」、反論文掲載請求に係る「部分を割愛していることは極めて不合理である」と指摘しておきたい。

 このことともあいまって、原告が反論文掲載請求を行っていないにもかかわらず、しかも私自身は名誉毀損が成立しないと主張しているにもかかわらず、私が原告に対し、私のホームページ(時事コラム欄または掲示板)への原告による反論文掲載を認める、という破格の和解提案を行っていることについて、原告が一顧だに与えていないことは、私には到底理解できない。

 私としては、この提案を原告が多とし、名誉回復を図る絶好の機会を与えられたと受け止め、提案を受け入れた上で、反論文掲載を試みることを強く促したい。
 この反論文において、原告は、私が執筆した評論(コラム)における著作の引用紹介(要約紹介)、が「全体として正確性を欠く」という主張を行うこともできるが、より重要なのは、原告が自分に職務怠慢はなかったという主張を(具体的な根拠を挙げて)行うことだ。

 もとより、原告のかかる主張が、私や第三者による批判に晒される可能性はあるが、真実は議論によってしか究明されえないことにかんがみ、原告は、本当に自分の職務怠慢疑惑が事実無根であると信じ、名誉回復を図りたいというのであれば、私の提案を受け入れ、臆することなく反論文掲載を試みるべきであろう。(批判に対する原告による再々反論等も歓迎する。)