太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#1454(2006.10.18)
<日本にすがりつく中共?>

1 始めに

 安倍首相が靖国神社参拝を行わない旨約束しないのに、中共は、その訪中を受け入れたと思ったら、今度は、実力者でも何でもない扇千景参院議長に対して破格の厚遇をしました。
 「15日、・・中国公式訪問のため北京入りした扇千景参院議長<と>・・中国共産党の序列1??5位までの指導者のうち胡錦濤国家主席をはじめ4人が・・会う」というのです(
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20061016AT3S1500Y15102006.html
。10月16日アクセス)。
 この時、ある仮説(後述)が脳裏をよぎりました。
 次いで、胡錦濤国家主席が17日、この扇千景参院議長との会談の場で、「核実験を実施した北朝鮮に対し、「国際社会の強烈な反応を知らしめる必要がある。・・多くのチャンネルを通じて働きかけ、実験を行わないよう求めたが、遺憾なことに北朝鮮は、われわれの話を聞かなかった」と・・発言した。<北朝鮮の>友好国・中国のトップが、北朝鮮を明確に批判する発言<を行ったの>は異例だ。」という記事(
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20061018/mng_____kok_____005.shtml
。10月18日アクセス)を読んで、私の仮説はますます本当らしいと思い始めました。
 北朝鮮の核実験を受けて日本国内に核兵器を持つべきとの意見が出ていることについて、中共外務省(外交部)の劉建超報道官は17日、「日本が『核拡散防止条約』の締結国として、条約の義務を厳格に履行し、非核三原則を守り、地域の平和と安定を守る上で責任ある態度を取るよう望む」と抑制的に述べるにとどめた(
http://j.peopledaily.com.cn/2006/10/17/jp20061017_64011.html
。10月18日アクセス)、ということも、私の仮説と符合するように思えました。

2 仮説の内容

 この仮説とは、先般(コラム#1434で)、「中共政府が、汚職の蔓延という深刻な病に冒され、民衆の怒りにうろたえて、人権抑圧に血道を上げるに至った<。すなわち、>東アジア情勢は確実に暗転しつつあ<る>」と申し上げたところ、胡錦涛政権は、このままでは中国共産党による支那の支配を維持することは困難だという危機意識を抱いている、というものです。
 これまで中共当局は、経済の資本主義化を推進するとともに、政治についても法の支配と民主主義の進展を図るポーズをとってきました。
 しかし、経済の資本主義化に伴う経済高度成長が地域格差や貧富の差の拡大をもたらしたこともあって、中共の市民は中共当局に対する不満を噴出させつつあり、胡錦涛政権としては、いまや、法の支配と民主主義の進展を図るポーズをかなぐり捨て、市民の不満を力で抑え込むほかないと考えるに至ったのではないでしょうか。
 しかし、このような逆コースをとると、米国や日本等の自由民主主義諸国と中共との間の政治的関係は冷え込まざるを得ません。政治的関係が冷え込めば、早晩経済関係も冷え込み、中共は高度成長を続けられなくなる可能性があります。これまた、中国共産党による支那支配の終焉をもたらしかねません。
 このような背景の下で、胡錦涛政権は、日本における政権交代を好機として、日本との政治的関係の修復に全力を挙げているのだ、と私は見るのです。
 この仮説が正しいとすると、核実験後の米日の対北朝鮮制裁に、中共がよろめきつつも追随していることについて、次のように理解することになります。
 すなわち、対北朝鮮制裁に協力すると、北朝鮮に体制変革や体制崩壊が起こり、中共に難民が押し寄せたりする懼れがある上、北朝鮮が韓国に併合されて中共が朝鮮半島での影響力を失う可能性さえある一方で、対北朝鮮制裁に協力しないと、米日両国の怒りを買って中共経済に悪影響が生じる可能性がある、というわけで、胡錦涛政権内部で制裁反対派と制裁賛成派の間で激しい議論が行われているが、制裁賛成派が次第にリードを広げている状況である、と見るのです。だからこそ中共は、検問を行わないと言ってから検問を行う方向に方針転換したし、中共の銀行や企業も、ばらつきはあっても対北朝鮮貿易・投資を抑制しつつある(コラム#1453)、と見るわけです。
 
3 終わりに

 以上ご説明してきた私の仮説が正しく、中国共産党による支那支配が本当に危機に瀕しているとすれば、日本にとって、北朝鮮情勢も深刻ではあるけれど、経済的に強い相互依存関係にあるだけに、中共情勢の方がより深刻だと言えるでしょう。
 何度も申し上げているように、こういった情勢分析を的確に行うため、日本は、一刻も早く諜報機関を設立するとともに、深刻な情勢下においても、日本国民の生命財産を守り、世界の平和と安定を確保するため、憲法上の制約を撤廃し自衛隊の戦力化を図る必要があります。そして何よりも、その前提として、日本は米国からの独立を果たす必要があるのです。

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/