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太田述正コラム#1456(2006.10.19)
<北朝鮮核実験(続)>

1 プルトニウム爆弾

 16日、ニューヨークタイムスは、北朝鮮が実験した核爆弾はプルトニウム爆弾であったとする米政府筋の発言を報道しました。
 プルトニウム爆弾の開発は、合意枠組みによって凍結されていたのに、隠れてずっと続けていたはずのウラン爆弾より先にプルトニウム爆弾の方を実験したということは、北朝鮮がまだウラン爆弾を開発できていないことを示すものである、と見られています。
 プルトニウム爆弾の原料であるプルトニウムの在庫が北朝鮮にどれだけあるかは、IAEAの査察が長期間北朝鮮の原子炉に対し行われていたこともあって、かなり正確に推計することができることから、われわれにとっては幸いなことに、現時点では、北朝鮮は、せいぜい6??10個のプルトニウム爆弾、つまりはせいぜい6??10個の原爆しか保有していないであろうことが、これで判明したわけです。
(以上、
http://www.nytimes.com/2006/10/17/world/asia/17diplo.html?pagewanted=print
(10月18日アクセス)による。)

2 北朝鮮の核「保有」への軌跡・補足

 以前(コラム#1450で)、北朝鮮の核「保有」への軌跡を一渡りご説明したところですが、この際、補足しておきます。
 1994年にクリントン政権が金日正政権との間で締結した合意枠組みで、北朝鮮が、核開発を凍結し、NPT体制の下にとどまることとした見返りに得たものは、軽水炉の建設とこの軽水炉が完成するまでの間の石油の供給、そして米国が核恫喝や核攻撃を北朝鮮に対して行わないという誓約でした。
 その後も、機会あるごとに、クリントン政権は、NPT体制にとどまっている限り、米国はその国を核恫喝や核攻撃の対象にしない、という誓約を繰り返してきました。
 ところが、ブッシュ政権は、北朝鮮がイランに対し、イスラエルに到達可能な弾道弾を輸出しており、北朝鮮自身、米国に到達可能な弾道弾を開発していることから、2002年1月、北朝鮮を、イラン・イラクと並ぶ悪の枢軸に名指ししたのです。金正日は、米国が北朝鮮を体制変革ないし体制崩壊させるぞと宣言した、と受け止めたに相違ありません。
 更に、北朝鮮が密かにウラン爆弾の開発を行っていることについての傍証を得たブッシュ政権は、同年9月、北朝鮮を問いつめ、その事実を認めさせました。
 金正日にしてみれば、ここまで米ブッシュ政権から追いつめられれば、NPT体制から離脱し、ウラン爆弾とプルトニウム爆弾両方の核開発に全力を傾注する以外に方法はなかった、ということになるのかもしれません。
 いずれにせよ、それをねらっていたかどうかはともかくとして、2002年11月に北朝鮮がNPT体制から離脱したことにより、ブッシュ政権は、北朝鮮に対し、核恫喝ないし核攻撃するフリーハンドを得たことになります。
 (以上、
http://www.atimes.com/atimes/Korea/HJ19Dg01.html
(10月19日アクセス)による。)
 ブッシュ政権が北朝鮮の体制変革・体制崩壊を追求してきたことは、2003年4月の米・中・北朝鮮による三カ国協議の直前、ラムズフェルド米国防長官が米国政府関係者に回覧したメモで、「米国の目標は北朝鮮政権の崩壊であって、金正日政権との対話ではない」と記し、三カ国協議の場において、米国代表が北朝鮮代表とサシで協議をしないように強く求めた、という事実に照らしても明らかです
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/15/20061015000008.html
。10月15日アクセス)。
 このブッシュ政権の対北朝鮮戦略に沿って、朝鮮半島周辺の米海空軍力、就中米海軍力の配備が増強されてきています。
 例えば、米海軍の原子力潜水艦が寄港する国内の3基地のうち、2000??2005年の平均寄港回数は、冷戦末期の80年代に比べ、佐世保基地(長崎県)で約6倍、ホワイトビーチ(沖縄県)で5倍弱に増え、最大の寄港先だった横須賀基地(神奈川県)とほぼ並ぶに至っています。
 しかも、米海軍は今年2月に発表した「4年ごとの国防政策見直し(QDR)」で、太平洋に展開させる原潜の比率を現在の40%台から60%台に高める方針を打ち出しており、日本国内への寄港は今後も増えると考えられるのです。
 (以上、
http://www.asahi.com/national/update/0625/SEB200606250032.html
(6月26日アクセス)による。)
 もちろん、これら原潜は、北朝鮮だけでなく中共もにらんでいるわけですが、いずれにせよ、朝鮮半島有事の際には、これら原潜から、在来型弾頭を搭載した巡航ミサイルが北朝鮮内の目標に向かって一斉射撃されることでしょうし、北朝鮮が核兵器を韓国や日本に対して使った場合は必ず、そして化学兵器を使った場合でも多分、核弾頭を搭載した巡航ミサイルが北朝鮮に向けて飛んでいくことになるでしょう。

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