太田述正コラム#1464(2006.10.23)
<日本の核武装をめぐって(その2)>

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 (1)日本の核武装能力
 アリソンもグロッサーマンも日本の核武装能力を当然視していますが、ここで簡単にこのことを説明しておきましょう。
  プルトニウムは、天然にはほとんど存在していませんが、ウランを原子炉の燃料として原子力発電を行う過程で副産物としてつくられます。
 日本は、米、仏に次ぐ世界第三の原子力発電大国です。
 その日本は現在、45トンのプルトニウムを保有していますが、プルトニウムの利用の方はまだほとんど始まっていないため、へたをすると2020年には日本のプルトニウム保有量は145トンにも達する可能性があると指摘されています。
 核爆弾1個をつくるために必要なプルトニウムの分量は8キロ程度とされています。
現在米国が保有する全核兵器のプルトニウムを合算しても100トンにしかならないのすから、145トンという量の巨大さが分かると思います。
 これだけの量の核爆弾の「原料」を日本は持っているのですから、一旦決意すれば、日本は、その科学技術力ともあいまって、恐らく6ヶ月もあれば、かなり高度の核爆弾をつくることができ、しかもその後短時間で、保有数を大幅に増やすことができると考えられています(注3)(注4)。
 (以上、注の部分も含め、
http://www.realcities.com/mld/krwashington/15550443.htm
(10月22日アクセス)、及び、
http://www.atimes.com/atimes/Japan/GI09Dh03.html
(2005年9月9日アクセス)、並びに、
http://sta-atm.jst.go.jp:8080/dic_0107_01.html
http://www.jnfl.co.jp/business-cycle/5_kongou/kongou_03/_03_01.html
http://www.jcp.or.jp/faq_box/001/200205_faq.html
http://kakujoho.net/npt/words2r.html#id2
(いずれも10月23日アクセス)による。)

 (注3)日本では、原子炉の燃料カスを再処理して分離回収したプルトニウムを高速増殖炉で使う予定であったところ、1995年に起きた高速増殖原型炉「もんじゅ」の事故の影響で、その実用化が2030年以降になる見通しとなったため、その間、MOX (Mised-Oxide)燃料(=混合酸化物燃料=再処理により回収された(酸化)プルトニウムと、天然ウランもしくは同じく再処理で回収された(減損酸化)ウランと、を混ぜて作った燃料で、ウラン・プルトニウム混合燃料ともいう)を、通常の原子力発電所(軽水炉=Thermal Reactor)で使う計画が進められている。これを、プルトニウムの「プル」とサーマル・リアクターの「サーマル」をとってプルサーマル計画という。しかし、安全性への懸念が生じたこともあり、この計画も予定通り進捗していない。
 (注4)日本は、使用済み核燃料の再処理をフランスと英国の両国に委託して行ってきたが、青森県の六ヶ所村に再処理工場が建設され、既に今年から使用済み核燃料の再処理の試験操業を開始しており、日本は非核保有国としては世界で唯一、(核保有国たる英仏露とともに)プルトニウムの商業生産能力を持つ国となった。
 
 その上、日本は衛星打ち上げに用いてきた、液体燃料ロケットと固体燃料ロケットの製造能力を持っており、固体燃料ロケットの方は、即時発射が可能なので核弾頭搭載用途に転用でき、しかも、日本のM-Vロケットは、固体燃料だけで打ち上げるロケットとしては世界最大級のものである(
http://www.universe-s.com/junior/rockets/japan_j.html
。10月23日アクセス)ことから、日本は、核爆弾をある程度小型化できれば、衛星の代わりにこの小型核爆弾を搭載することで、核弾道弾を保有することができるのです。
 もとより、日本が、陸上の核基地に対して核兵器による先制攻撃を受けた場合でも確実に生き残る反撃用の核戦力、すなわち本格的な第二撃核戦力、を持つためには、原子力潜水艦を保有する必要があり、原子力潜水艦の開発は一朝一夕にはいきません。
 しかし、原子力潜水艦を保有するまでのつなぎとして、海上自衛隊の潜水艦の標準装備となっている米国製のハープーン巡航ミサイルに搭載できる程度に核爆弾を小型化できれば、近く就航を始めるところの、最新型のAIP(Air Independent Propulsion System=大気独立型機関)を積んで潜水航続距離や潜水待機時間を大幅にアップした海上自衛隊潜水艦(
http://www.geocities.jp/dumbo_seal/dumbosseal_006.htm
。10月23日アクセス)が3隻??6隻そろったところで、核搭載ハープーンを装備させた上で、交代で東シナ海に常時1??2隻を派遣することが考えられます。
 中共の対潜水艦能力は極めて低いし、北朝鮮に至ってはゼロに近いので、在来型潜水艦であっても、簡単には撃沈されないでしょうから、こうすれば日本は、中共・北朝鮮に対して、第二撃核戦力を事実上持つことになります(注5)。

 (注5)イスラエルが核ハープーンを搭載した在来型潜水艦を3隻保有している、という話をコラム#169でしたことがある。ハープーンは射程が80マイル超(128キロ超)しかないが、中共の沿岸地域(含む北京)や北朝鮮の相当部分をカバーできることも、その時指摘した。
 
(続く)