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太田述正コラム#1487(2006.11.4)
<台湾での大スキャンダル(その2)>

2 台湾の人々の声

 まずは、台湾の人々の声に耳を傾けてみましょう。
 英BBC電子版が4人の声を紹介しています(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/6113480.stm
。11月4日アクセス)が、驚くべきは、それぞれ若干のニュアンスの違いはあるものの、全員が冷静にわれわれとしても首肯できる意見を述べていることです。台湾の自由民主主義の成熟度が推し量れます。
 この4人の中では知識人に属する42歳のある大学教授は、「すぐ気づくことだが、これは台湾が本当にとても民主的な社会になったことを示している。われわれがこうなることを望んで懸命に努力してきたことからすれば、このような地点まで到達したことを祝うべきだろう。現役の大統領が社会のあらゆるセクターから批判されているというのに国家は機能している。これは奇跡に近いと言うべきだ。」という喜びようです。
 英ファイナンシャルタイムス電子版の記事(
http://www.ft.com/cms/s/4722d11c-6b6f-11db-bb4a-0000779e2340.html前掲)でも、台湾の別の大学教授が、「本日は我が国が胸を張れる日だ。・・多くの国では、何か違法行為を犯したからといって、検察が大統領とファーストレディーを追及することなどできないからだ」と言っています。

3 中共の反応

 まさに、同様の声が中共の心ある一般市民の間からわきあがっています。
 陳総統の義理の息子が起訴された時、人民日報と新華社がこの事件を、台湾が腐敗している証拠として報道したところ、ネット上で、台湾の民主主義は本物でうらやましい、それに比べて中共はひどいものだ、といった趣旨の中共の一般市民からの書き込みが相次ぎました(
http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2006/06/20/2003314533
。6月21日アクセス)。
 これに懲りたからと思われるのですが、今回のスキャンダルについて、中共のメディアはろくに報道していません。にもかかわらず、中共のネット上では、台湾の民主主義は支那人の誇りであり、台湾の人々を祝福したいとか、台湾同様、中共においても、地方レベルだけではなく中央レベルの腐敗を追及できるようにならなければならない、といった書き込みが続いています(
http://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2006/11/04/2003334760
。11月4日アクセス)。
 これでは、中共当局が危機意識を持つはずです。
 中共が、何事によらず、このところ台湾に対して声を潜めているのは、日本との関係修復に血眼になっている(コラム#1454)ことと同様、この危機意識の表れだと私は見ています。
 今週初めに、陳総統は英ファイナンシャルタイムス(FT)のインタビューの中で、現中華民国憲法を改正せず、「凍結」するだけにとどめつつ、それに代わる基本法的なものを定め、事実上、中華民国体制からの離脱、すなわちいわゆる台湾「独立」、を追求する意向を表明したというのに、中共当局が、インタビュー記事を掲載したことをFTに抗議しただけで、肝心の陳総統の発言内容そのものについては沈黙を保っていること(
http://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2006/11/04/2003334745
。11月4日アクセス)は、中共当局がいかに追いつめられているかを示すものです。

4 国民党の偽善性

 このように見てくると、ついに陳水扁総統、ひいては民進党政権を打倒するチャンスが到来したと小躍りしている台湾の国民党及び親民党(
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2006/11/04/2003334785
前掲)の小ささとアホさかげんが哀れになってきます。

5 それでも総統は辞任を

 民進党が起訴された党員の党籍を剥奪する方針をとってきた(
http://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2006/11/04/2003334758
。11月4日アクセス)こと一つとっても、事実上起訴されたに等しい陳水扁総統が自らに厳しい処分を課さないわけにはいきません。
 台北タイムスが社説で主張している(
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2006/11/04/2003334785
前掲)いるように、ここは潔く辞任し、憲法の規定に則り、副総統を総統に昇格させて後事を託すべきでしょう。副総統を急遽呼び返したのは、そのためだ、と信じたいところです。

(完)

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