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太田述正コラム#1592(2006.12.27)
<フランスの男女差別をめぐって(その1)>

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<ある有料読者からのメール>
 太田述正 様、貴兄が博識で優秀な頭脳の持ち主だということは、明らかです。しかし、「なぜ書くのか」という、貴兄の目的がよく分かりません。
 僭越だとは思いますが、「有料問題」を、かくも毎日読む立場の気持ちをお考えになったことがあるのでしょうか?質問します。
 言い換えれば、最近の世相は、動物性器官(指示表出)からもたらされ頭の「大脳思考」が、利己的なレイシオの“損得の精神”=「使用価値」に重きを置き過ぎているので、植物性器官(自己表出)という、「内臓思考」がもたらす無意識の“感覚・心情”=交換価値」の劣化(アイデンティティ)の再生が必要です、ということが私の「橋頭保bridgehead」です。・・・・三木成夫『内臓のはたらきと子どものこころ』(築地書館)、『胎児の世界』(中公新書)、『ヒトとからだ』(うぶすな書院)、その他:吉本隆明[『言語にとって美とは何か』(角川文庫)から意訳。これは、故・三木成夫の後輩である養老孟司氏が『バカの壁』で述べた、行間の含意はそういうことだろう、と思います。その他参考本として、崎谷 博征(著)『グズな大脳思考、デキる内臓思考』(アスカ出版2006/10)参照。
 そういう視点で、私は貴兄の文章を読んでおりますので、貴兄の「有料化」の冒頭文は、大脳思考の占める割合が多すぎて、「内蔵試行」に、幼稚性を感じております。
 若い友人から、「ビルダーバーグ」の情報をもらっています。彼は「私は『情報発信』とか『政治的活動』を主(目的)としてやっているのではなく、まして“情報”で金銭を得ようというつもりも微塵もなく、“書く”ことの意義(理由)を、私がやっているのは『情報収集と集積』『事象の認識と分析』『論理の追及と構築』『忘れないように書き残す』‥‥などであるということでした」、と今年の総括として伝えてきました。本人は、「書くことの目的」は、まだ自覚できていない、というのですが、私は、彼の「自覚」にすでに目的が見えます。
 太田さんは、この点についてどうお考えですか?情報としては、大変勉強になりますが、上記が不満な点です。
 最近の「産業革命」についての例で言えば、論考も掘り下げてください。メルマガの数なんか問題ではないのです。広く啓蒙したい時事的ニュースは、手が届きませんから、大変勉強になります。質も量もバランスがとれるのは、難しいことだとは存じます。しかし、「Garde City」(日本では「田園都市」と、なぜ翻訳したのか?)その当時、「産業革命」時の英国の平均寿命は25歳でした。日本の役人の意図的情報操作に、あきれました。また、National Trusutなる運動の誕生は、日本の庭園や伝統建築物や自然の豊かさという「文化」に触れての運動でもあります。「文化も、言葉も響き合う」という視点でないと、ナショナル・トラストを日本でも普及させよう、という「権威者」が出て色々とのたまうので、呆れてしまいます。
 太田様には、耳触りの悪いことを申し上げましたが、先ほど東京から帰宅して、下記の問い合わせ(注)に愕然としました。12/28までに「振り込む準備」をしていましたが、ここまでのメイルが届くとはおもいませんでしたので、ご寛恕ください。明日1日「継続」については、考えます。

 (注)私が25日午後に送った「まだ、来期の会費を振り込まれていませんが、継続されるご意思があるのであれば、その旨ご返事下さい。」というメールを指す(太田)。

 また、太田様には、こんな読者はいらないということであれば、その旨のご支持をくださいませ。

<太田>
 どうも、おっしゃっていることは、私の側の問題というよりは、あなたの側の問題のような気がします。
 そもそもあなたは、太田が提供する情報に半年分で5,000円以上の価値があると思われたから有料会員になられたのではないのですか?
 最近太田が提供する情報の質が劣化して、半年分で5,000円は惜しい、と思われておられるのなら、継続されなければよろしいし、まだ5,000円以上の価値があると思われておられるのなら、継続されればよい、とここまでは単純な話だと思います。
 しかし、仮にあなたが太田提供の情報の価値が現在でも半年分で5,000円以上であると思っておられるとしても、太田が、情報のほとんどを公開しているため、毎日2,000??3,000人の人が無償でこの情報にアクセスしていることをどう考えるか、という問題は残ります。
 あなたが、太田が情報のほとんどを公開していることを結構なことだとお考えなら、私に完全有料化させないことに寄与するのですから、当然あなたは講読を継続すべきだし、あなたが太田が情報のほとんどを公開していることはけしからんとお考えなら、一旦講読を中止した上で、太田述正コラムが完全有料化した場合には改めて有料読者登録を行い、現状維持ということになった場合には改めて有料読者登録をするかどうかを慎重に決定すべきだ、ということになります。
 最後にあなたに残る疑問として考えられるのは、どうして私がそんな決断を有料読者の皆さん(ひいては全読者の皆さん)に強いているのか、ということでしょうね。
 完全有料化には、私にとって経費節減とリスク激減というメリットがあると申し上げているところですが、それだけでは説明不足であるとお感じになっておられるのかもしれませんね。
 残念ながら、あなたは地方在住の方のようですので、30日のオフ会には出席されることは困難でしょうが、出席されれば、あなたに完全に納得していただけるような説明ができるつもりですが・・。
 最後に、その後更に2名新規申込があり、これで新規申込者は12名になりました。
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1 始めに

 コラム#1525(有料版)で「自由民主主義度は高いけれど男女格差は大きいという点で日本と似通っているフランスのケースとを誰かが比較研究して欲しいものです。」と申し上げたところですが、英国人と米国人がフランスの男女差別の原因をどのように考えているかをご紹介し、併せてフランスにおける男女関係の現在について触れたいと思います。

2 元凶のルソー

 英国人女性のムーア(Lucy Moor)は、その上梓されたばかりの著書の中で、フランス革命の泉源はルソー(Jean-Jacques Rousseau)であり、そのルソーが、女性は家庭における子育てのためにこそ生まれてきたのであって公的な役割を担うべきではないと主張していた以上、革命に際していかに平等が説かれていたとしても、その中には男女平等という観念は含まれてはいなかった、と指摘しています(
http://books.guardian.co.uk/review/story/0,,1977666,00.html
。12月26日アクセス)。
 また、米西イリノイ大学(Western Illinois University)政治学科教授の男性ヘルム(Charles Helm)は、ルソーを引用しつつ、次のように指摘しています。

 <ルソーの引用>
 「男児は動きと騒音を求める」が、「女児にとっては人形は特別な玩具であって、われわれは彼女の嗜好が彼女の人生における目的によって規定されていることを見出す」
 「女性は一般に芸術を好まないし女性には天才がいない。女性は機知、嗜み、優雅さ、そして時にはほんのちょっとの哲学と推理(reasoning)、だけが求められる仕事において成功を収めることはあるが、天才の天上の炎を有することは決してない」
 「女性の理性は実際的な理性であって、与えられた結論にどう到達するかを容易に発見することを可能にはするが、自分自身でかかる結論に到達することを可能にすることはない。女性は原理を発見することはできない。男性はできる。しかし、女性は細かいところに気付くという点では男性より優れた頭脳を持っている。」
 (ここまでは、私もおおむね同意です(太田)。)
 「女性の教育はすべて男性との関係で考えられなければならない。男性を喜ばせ、彼にとって有用であり、彼に愛され尊敬され、彼が幼い時には育て上げ、彼が大きくなってからは世話をし、相談に乗り、なぐさめ、彼の生活が心地よく魅惑的になるようにする。これらこそ、いつの世にも女性の義務なのであり、これらは彼女が子供の時から教え込まれなければならない。この原則に戻ることをわれわれが拒否すればするだけ、われわれは目標からはぐれてしまい、いくら女性に格言(precept)を与えても、彼女やわれわれを不幸にするのだ」
 (これではまるで、貝原益軒がルソーに乗り移ったかのようでいやになりますね(太田)。)

(続く)

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