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太田述正コラム
   
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太田述正コラム#1642(2007.1.30)
<日本の新弥生時代の曙(その3)>(2007.3.2公開)

 (本篇はコラム#1636の続きです。)

4 新弥生時代における課題

 (1)始めに
 以上見てきたように、日本では、明治期におけるアングロサクソン(主として英国)に倣った弥生化、そして昭和における縄文化を経て、再びアングロサクソン(主として米国)に倣った弥生化が現在進行しているわけですが、今回は明治期とは違って、日本は、アングロサクソンの法制度のうちのどれを選択し、それをいかに翻案して取り入れるか、という課題だけにかかずらわっているわけにはいきません。
 日本文明は世界の諸文明の中で最もアングロサクソン文明と親和性のある文明であることから、日本はアングロサクソンと手を携えて、アングロサクソン文明がグローバルスタンダードであり続けるように応分の貢献を行う必要があるのです。
 なぜならば、かつて日本が倣ったことがある支那文明とは異なり、アングロサクソン文明は人類の最高の到達点であって、今後アングロサクソン文明が日本文明の影響等によって更に進化発展することはあっても、それに取って代わりうるような文明が出現することは考えられないところ、そのアングロサクソン文明が、現在数々の深刻な脅威に直面しているからです。
 脅威には内なる脅威と外からの脅威があります。
 内なる脅威とは、アングロサクソン文明の中心的トレーガー(担い手)たる人口の相対的減少であり、外からの脅威とは、原理主義イスラムの脅威と中共の脅威です。

 (2)内からの脅威:人口の相対的減少
 これがどうして脅威なのか、説明の必要はないでしょう。
 アングロサクソンはかなり以前から人口の世界人口に占める割合の減少に直面しています。
 アングロサクソンとは何かについては争いがあり、基本的に英米加豪ニュージーランドの5カ国の国民だけと見る多数説に対し、これにアイルランドと南アフリカの国民を加えた英語圏の諸国民と見る少数説や、それに更にカリブ海・オセアニア・アフリカ・インドで英語を主として用いる教育程度の高い人々を加える絶対少数説があります。
 このうち、最も範囲が狭い通説に拠った場合でも、1950年代には世界人口の11人に1人はアングロサクソンだったのに、現在(約4億2000万人弱)では15人に1人に近くに過ぎず、2050年には17人に1人まで落ち込むと見積もられているのです。
 (以上、
http://www.latimes.com/news/opinion/la-oe-ferguson1jan01,0,683320,print.column?coll=la-opinion-rightrail
(1月2日アクセス)による。

 残念ながら、この点については日本(約1億2000万人≒米国以外のアングロサクソンの人口=エリザベス女王を元首とする国々の人口)は貢献するどころではなく、昨年その人口が絶対的に減少を始めたことはご存じのとおりです。ここからも、日本が積極的な移民受入政策を打ち出すことが望まれるわけです。
  
 (3)つい最近までの外からの脅威:欧州文明
  ア 欧州及びロシア
 アングロサクソン文明のつい最近までの最大の脅威は欧州文明であったことは、何度もご説明してきたところです。
 20世紀の冒頭、英国は日本を準アングロサクソンと認めて日本と日英同盟を結び、ここにアングロサクソン文明と日本文明との連携が始まるのですが、英日両国を敵視したできそこないのアングロサクソンの米国の画策で日英同盟は解消に追い込まれ、米国の対日敵視政策に窮した日本が欧州文明諸国と同盟関係に入るという異常なねじれ現象が生じ、その結果先の大戦において大英帝国と大日本帝国が相打ち共倒れとなってどちらも瓦解し、アングロサクソン的文明(アングロサクソン文明+アングロサクソン文明を継受した日本文明)が完全に継受され定着しないうちに両国の植民地が過早に独立してしまいます。一方、欧州文明の方は、欧州がファシズム、欧州の外縁ロシアがスターリニズムを採択することでアングロサクソン文明への挑戦を続け、先の大戦を経てロシア(ソ連)のスターリニズムだけが生き残ります。しかしロシアは、英国を隷属させ、日本を保護国化した米国との冷戦に敗れ、ロシア帝国もまたほぼ瓦解し、ここに欧州文明は完全にアングロサクソン文明に膝を屈するのです。
 
  イ 欧州の延長:中南米
 こうして完全にアングロサクソン的文明に膝を屈したと思われた欧州文明が、最近意外なところでアングロサクソン的文明に対して牙をむき始めています。
 欧州の延長たる中南米におけるスターリニズムの復活です。
 その旗手がベネズエラの大統領のチャベス(Hugo Chavez)です。
 彼は、ポピュリストとして大統領に当選するのですが、マルクス主義的言辞を弄し、キューバのカストロ(Fidel Castro)大統領を師と仰ぎ、アンチ・グローバリスト達に誼を通じ、反米的スタンスを打ち出しているうちに次第に本格的なスターリン主義者に転じ、昨年12月に圧倒的多数で二期目の当選を果たして以来、主要産業の国有化計画を発表しました。
 そのチャベスは、イランや中共とも提携関係を推進しています。
 しかも、エクアドルの新しい大統領のコレア(Rafael Correa)も、ボリビアの大統領のマラレス(Evo Morales)も、そしてもちろん大統領に復帰したかつてのサンディニスタの頭目のニカラグアのオルテガ(Daniel Ortega)がみんな、スターリニズムがかっているのです。
 この分だと、チャベスが石油等の支援を行っているキューバでも、現在重篤とも伝えられているカストロがたとえ亡くなったとしても、スターリニズムは生き延びそうです。
 米国、すなわちアングロサクソン的文明は、まさにその裏庭の中南米において、再び欧州文明の脅威に直面しつつある、と言えるのかもしれません。
 (以上、
http://www.nytimes.com/2007/01/28/magazine/28wwln_lead.t.html?_r=1&oref=slogin&ref=magazine&pagewanted=print
(1月29日アクセス)による。)
 
 (4)新たな外からの脅威1:原理主義イスラム
 しかし、何と言っても、アングロサクソン的文明にとっての現在の最大の脅威は原理主義イスラムの脅威と中共の脅威です。
 原理主義イスラムはアングロサクソン的文明をトータルに拒絶しているのに対し、中共はアングロサクソン的文明の経済システムである資本主義を継受しつつ政治システムである自由民主主義を拒絶しています。
 まず、原理主義イスラムの脅威から始めましょう。

(続く)