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太田述正コラム#1747(2007.4.25)
<暮れゆく覇権国の醜聞(続x4)>(2007.5.25公開)

1 始めに

 またこの話かと思われる方もおられるでしょうが、ウォルフォヴィッツが世銀総裁のイスにしがみついているので、なかなかジ・エンドにできないことをご理解下さい。

2 またまた醜聞

 ウォルフォヴィッツが自ら世銀高官に任命した、エルサルバドルの前の蔵相が、マダガスカルへの世銀援助戦略策定にあたって家族計画への言及を削除しようとしたという話は前から出ていたのですが、今度は、世銀の首席科学者(chief scientist)が、上記高官が、世銀が昨年9月のシンガポールでの会議に提出した「クリーン・エネルギー投資枠組み」なるペーパーの中の「気候変動(climate change)」への言及を落とそうとしたり、「気候リスク」や「気候多様性(variability)」という言葉で置き換えようとした、と証言したのです。
 「気候変動」とは一般に「地球温暖化」等人間によって引き起こされる気候変動について用いられる言葉です。
 また、つい最近、欧州諸国を代表する世銀理事達が、新任の人間開発担当世銀副総裁に対し、上記高官及び同高官の部局が、最近同部局で編纂された文書の中で、家族計画(sexual and reproductive health)への言及がほとんど為されていないことに対し憂慮の念を表明しました。
 以上から、この高官は、米ブッシュ政権、つまりはウォルフォヴィッツ総裁の意向を忖度して、(堕胎を含むところの)家族計画や地球温暖化防止に否定的な姿勢をとっている、と勘ぐられても仕方がないでしょう。

3 狭まる総裁包囲網

 ドイツのメルケル首相の報道官は、ウォルフォヴィッツ問題が、30日にワシントンで開催される米国とEUとの間の首脳会談で話し合われることになるかもしれない、と語りました(
http://www.ft.com/cms/s/8386dedc-f1ca-11db-b5b6-000b5df10621.html  
。4月24日アクセス)。
 また、約25人の世銀副総裁達が、自分達の所の職員の大部分が総裁辞任を求めているとの文書を準備中であり、この文書ができ次第、世銀理事会に提出される予定です(
http://www.nytimes.com/2007/04/24/washington/24wolfowitz.html?pagewanted=print 。4月25日アクセス)。

3 徹底抗戦の構えの総裁

 しかし、それでも総裁は徹底抗戦の構えです。
 今週中に、世銀理事会の7人で構成されるパネルがウォルフォヴィッツが世銀の規則や倫理規定を破ったかどうかについて結論を下す予定ですが、それを前にして、総裁は、新たに敏腕の米国人弁護士を雇いました。
 この弁護士は、クリントン米大統領をモニカ・ルインスキー事件ならぬポーラ・ジョーンズ(Paula Jones)セクハラ事件で弁護した人物です。
 この弁護士費用を総裁が負担するのか、世銀にツケを回すのかは分かっていません。
 (以上、FT上掲及びNYタイムス上掲による。)
 いかにも、権利はどこまでも主張する訴訟社会の米国出身のウォルフォヴィッツ総裁らしい頑張りです。
 日本もこの点では米国化しつつあるように思われるので、ウォルフォヴィッツを見倣わなければならないのかもしれませんね。

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