太田述正コラム#1796(2007.6.6)
<中共の朝鮮半島併合戦略の現状>

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1 始めに

 近年、中共(中国政府)は、箕子朝鮮(Gija Chosun)史・扶余(Puy)(夫余(Buyeo))史・高句麗(Goguryeo(Koguryo))史・渤海(Barhae)史がすべて支那(中国)史の一環であると主張してきましたが、さすがに、新羅史・百済史・高麗史・李氏朝鮮史も支那史の一環であるとまでは主張していないと考えられていた(コラム#141、144、1401、1404、1606。特に1401)ところ、このほど、新羅史・百済史・高麗史にも食指を伸ばしていることがはっきりしました。
 中共は、このような改竄史観をひっさげて、朝鮮半島の北部、更には南部の併合に向けて次々に布石を打っていると見ることができます。
 この中共の戦略の最新状況をご紹介します。

2 新羅史・百済史・高麗史も支那史の一環

 (1)新羅・百済

 「中国政府が高句麗を中国史に含めるとした「東北工程」をめぐり、担当機関の中国社会科学院辺疆・・史地研究センターが・・ 2001年に出版した『古代中国高句麗歴史叢論・・』の<中で、>・・中国が百済(Baekje)と新羅(Shilla)を武力を使わず従順な国王や統治者を選んで懐柔する「羈縻(きび)政策」と呼ばれる方法で治めたと記述し<ていたことが判明した。>。
 羈縻政策では周辺民族の領土を中国の行政区域に編入し、自治を認定していた。
 <具体的には、>百済に対しては「・・高句麗と・・同様に古代中国の辺境にいた少数民族である夫余人の一部が興した政権」・・とし、新羅については「唐(Tang)は・・百済が滅亡した・・ 660年以前には羈縻政策を、それ以降には直接統治を行った」・・と記述し<てい>た。また、新羅は「中国の秦(Qin)の亡命者が樹立した政権」・・であり、「中国の藩属国として唐が管轄権を持っていた」<と指摘していた。>」(
http://www.chosunonline.com/article/20070604000018  
(6月4日アクセス)、及び
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200706/200706040026.html  
(6月5日アクセス))。


 (2)高麗

 「高麗(Goryeo。918〜1392年)について、「箕子朝鮮、高句麗に続き、中国が<朝鮮>半島に打ち建てた3番目の政権」と・・<主張>した<ところの、>・・吉林省社会科学院が隔月刊で発行する歴史雑誌『東北史地』<の>2007年第3号(5・6月号)に掲載<され>た「後唐の明宗が、高麗を建国した太祖・王建<(ワンゴン。877〜943年)>の族籍を明らかにした」と<題する>論文・・<の存在>が確認された。
 ・・この論文は、「王建は決して<朝鮮>半島の新羅人の子孫ではなく、中国・淮河流域から来た漢人の末裔・・」と主張し、933年に後唐<(923〜936。五代の一つ)>の<2代目の>明宗が太祖・王建に送った冊封詔書などをその根拠として提示した。冊封詔書には太祖・王建を「長淮の茂族」と呼んでいる部分があり、この論文は「長淮は淮河流域を意味する言葉で、太祖・王建の本籍地が中国であるため、高麗は中国人が建国した国」と主張している。
 これに対し、<韓国の>国民大の朴宗基(パク・チョンギ)教授は「高麗は高句麗を継承したことを自ら主張したわが民族の王朝」と反論し<ている>。」(
http://www.chosunonline.com/article/20070606000006  
。6月6日アクセス)

3 中共の朝鮮半島併合戦略の現状

 (1)対北朝鮮

 「<ある日本の研究者は、以下のように指摘している。>
 「将来の北東アジアの覇権をめぐって・・米国と中国<が>争<っている>。北朝鮮は中国の完全な属国だと米国が認めるまで問題は解決しない<だろう>。・・
 「完全な属国」とは、・・中国が北朝鮮経済の生殺与奪の権限を握り、北朝鮮を実質的に植民地化するということだ。・・
 中国が東北3省の振興を重視し、北朝鮮への投資を加速しているのも、<朝鮮>半島戦略との緊密な連係のもとに進められていることだ・・。
 その具体的な事例<だが、>、・・現在、中国・吉林省と羅津、清津港を結ぶ高速道路の建設計画が進められている。・・鉱物資源の輸送を目的とした鴨緑江河口から平壌を結ぶ高速道路の建設を決定し、北朝鮮当局もこれに同意した。・・羅津港に関しても、2年前に中朝合弁会社が50年間経営・使用する権利を獲得している。また、清津港も3つのふ頭のうち、2つが既に中国専用となっている。・・
 中国主導のインフラ整備に使用される資金はほとんどすべて中国側が提供し、北朝鮮は労働力を提供しているだけだ。
 また、インフラ整備が軍事優先で行われている点も特徴として挙げられる。鉄道・高速道路は、戦車などの軍用物資の輸送に堪えられる規格を採用している。・・
 北朝鮮が消費する原油の70%、食糧の40%以上を中国が供給している。北朝鮮の市場で売買される生活必需品の80%が中国産だ。
 北朝鮮経済は、既に中国の“瀋陽経済圏”の一部に編入されたも同然だ」<と。>」(
http://www.chosunonline.com/article/20070309000070
。3月10日アクセス)

 「<韓国の>産銀経済研究所は「中国の対北朝鮮投資動向分析」<の中で以下のように指摘した。>
 「北朝鮮に対する外国からの直接投資額のうち、中国資本が占める割合は、2002年の時点では4.6%だったのが、2005年には43.7%に急増した。投資額の規模で見ても、当初の150万ドル(約1億8000万円)からほぼ10倍に増えている。さらに非公開の経路を通じて北朝鮮に投資された中国の資本は、この額を大きく上回るものと推測されている。
 注目すべきは中国からの投資の70%が鉄、銅、モリブデンといった鉱物開発に集中している点だ。代表的なケースとして、中国が茂山鉄鉱開発に70 万人民元を投資し、その対価として50年間の採掘権を手に入れた例が上げられる。羅津港の拡張事業に3000万ユーロ(約48億1000万円)を投資して 50年間に及ぶ埠頭・・運営権を確保したのをはじめ、鉱物運搬用の埠頭や道路への投資も目立つ。・・
 北朝鮮市場における中国製品のシェアは70%以上にのぼる。北朝鮮経済が急速に中国市場に飲み込まれつつあるのは間違いない。そのため北朝鮮が遼寧省・吉林省・黒竜江省に続き中国東北地域の4番目の省になってしまうのではないかとの声が上がっている。
 北朝鮮に対する経済支援の額だけで言えば、韓国も中国に負けず劣らず多くを支援している。それにもかかわらず韓国には北朝鮮経済に対する影響力はほとんどない。韓国が北朝鮮で行った資源開発といえば、鉱業振興公社による黄海道の黒鉛(グラファイト)鉱山開発の1件しかない」<と。>」(
http://www.chosunonline.com/article/20070412000001  
。4月12日アクセス)

 (2)対韓国

 韓国と中共のTV局が共同で一昨年夏に実施した世論調査によれば、韓国人は日本(17%)より中共(50.5%)にはるかに親しみを感じています(
http://www.chosunonline.com/article/20050812000059  
。5月13日アクセス)。
 既に韓国人のハートは中共にからめとられている、と言っても過言ではありません。

 救いは、最近韓国で実施された世論調査によれば、韓国人で、緊密でなければならない国として、中共(20%)を挙げる人より米国(37%)を挙げる人の方がまだ大幅に上回っていることです(
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200705/200705170007.html  
。5月18日アクセス)。
 韓国人は、理性ではまだ中共に抗っている、ということです。

 しかし、問題は、米国の方から韓国が見放される可能性があることです。
 最近米国で実施された世論調査で、韓国が世界でプラス(positive)の役割を果たしていると思っている米国人は36%しかおらず、マイナス(negative)の役割を果たしていると思っている米国人は48%もいて、前者を12%も上回っているからです(
http://www.atimes.com/atimes/Korea/IE23Dg01.html  
。5月23日アクセス)。
 この趨勢が続けば、韓国は米国から見捨てられる懼れがあります。

4 感想

 日本には、米国のように、朝鮮半島を見限る、という贅沢は許されません。
 日本が自立を果たすまでは、宗主国の米国に懇願して、韓国を見捨てないようにしてもらうほかないでしょう。