太田述正コラム#1607(2007.1.6)
<日本の民主主義の源も江戸時代(その1)>(2007.7.4公開)

1 始めに

 日本の江戸時代には実質的にかなり自由で平等な社会が実現していたということは、既に(コラム#1600で)申し上げたところです。
 明治維新後、1889年に日本が非欧米諸国の中で最初の立憲国家(自由主義国家)になりえた、すなわち大日本帝国憲法を公布できたのは、それが、上記の実質的な自由と平等を形式的に憲法によって担保する、というだけのことだったからだ、と私は考えています。
 それでは、1925年に日本が非欧米諸国の中で最初の民主主義国家になりえた、すなわち普通選挙法を成立させることができたのはどうしてなのでしょうか。
 その理由もまた江戸時代に見いだすことができるのです。

2 江戸時代における民主主義

 (1)村役人等

 「<現在の神奈川県の>秦野地方では・・・村には村方三役(注1)(名主、組頭、百姓代)がおかれ・・・<てい>ました。三役は本百姓の中から選ばれましたが、ふつうは名主格、組頭格とよばれる家柄の者が、任命や年番(1、2年ごとに交代すること)あるいは入札(いれふだ。選挙)といった方法で選ばれました。」(
http://navi.city.hadano.kanagawa.jp/syoukai/jidai_07.html。1月6日アクセス(以下同じ))

 (注1)村役人とも言う。

 「<現在の京都府の与謝野町となっている>岩滝村<等では、村>役人の任期は、各村とも、庄屋<(名主)>は三ヶ年で・・・あった。庄屋は任期が満了すれば、退役願を代官へ差出し、後任選挙の達しのあるのを待って、村内一般の投票を行い、高点者を代官に上申した。そうすると郡会所から当選者を召喚し、代官が庄屋を任命した。」(
http://isshiki-tex.jp/edo35.htm
 「今の長野県諏訪地方の村々<では、>村役人の選出も投票(入札、いれふだ)が一般的でした。ただし、投票できるのは戸主のみです。被選挙権についても大前(おおまえ。村役人に就任できる家柄の者)と小前(こまえ。大前以外の者)とで争いがありました。小前側は、これまで大前が独占してきた村役人の被選挙権を小前にも解放せよと要求したのです。最終的には5人の村役人のうちの1人が小前から選ばれるようになりました。」(
http://www.fben.jp/bookcolumn/archives/2005/04/post_699.html
 「現在の大阪府羽曳野市の一部となっている古市(ふるいち)市では、・・・女主人の家では女性が投票していたことがわか<っている>」(石川英輔「大江戸庶民いろいろ事情」講談社文庫2005年 58頁)
 「農村ほど一般的ではなかったにせよ、町でも入れ札で役職者を選ぶ場合が多かった。岡山、名古屋、岡崎、金沢、甲府、大垣、飯田、長岡などでは、町方という地方行政の責任者を入れ札で選んでいた。」(石川 上掲 59頁)

 (2)村の寄り合いと村議定

 「百姓が、村の中で寄合う行為をします。ここで、会議をします。総会みたいなものですが、村の最終的な意思決定機関となります。これは、全員参加型が基本でありまして、そこでの決定は基本的には、全員一致です。・・・一人でも何か違う考え方を述べますと、それを取り上げて延々と議論します。強行採決というのはしません。・・・これは、大変民主的な手続きで・・・す。寄合での取り決めというのは、集団は当然遵守します。百姓たちは、その村で決めたことは、村の法律・・・村法<ないし>村議定<を>作ります。・・・それぞれの村社会が、お上の法とは違うレベルの法をもっているということです。そして、その法には、罰則規定もあります。・・・村八分というようなものも、ある意味では村法なのです。」(
http://www.manabi.pref.aichi.jp/general/10003363/0/kouza/section2.html

 (3)村・組合村・郡・国

 「村議定から、組合村議定(注2)、郡中議定(注3)、さらには、国訴(こくそ)、あるいは、国訴(くにそ)と言ったりしますが、国規模で訴訟が行なわれたりします。・・・そういったところでも、代表委任が行なわれているということです。代議制の形成というものがなされるということなのです。」(
http://www.manabi.pref.aichi.jp/general/10003363/0/kouza/section2.html上掲)

 (注2)農業用水関係、飲料水などのいろんな水の問題で、村と村が組み合わさったり、山とか原の利用とかで、村と村が組み合うこと。村からの代表を送り、組合村議定を決める。
 (注3)何十ヶ村、何百ヶ村という村々・・・の代表が数十人集まって、郡中議定を決める。

(続く)