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ブット暗殺(その4)
本日の記事等の寸評
ブット暗殺(その3)
皆さんとディスカッション(続x28)
ブット暗殺(その2)
2007年12月の記事一覧
2007年12月31日
太田述正コラム#2270(2007.12.31)
<ブット暗殺(その4)>

<鎌倉人>

 Mawdoudi(マウドゥーディー)については、大阪外語大の山根先生が詳しいらしいです。
 先生は、ウルドゥー語の専門家でパキスタンに詳しく、論文も書かれています。
 マウドゥーディーについてネットで調べると、1940年代から活躍したイスラムの思想家で、著作が140冊もあり、パキスタンへ留学した学生が、マウドゥーディーの著書を買って母国へ帰るらしいです。
 パキスタンの生みの親のような存在らしいです。
 (パキスタンが生んだ思想家ではなく、パキスタンを生んだ思想家)
 西側で知られていないのは、パキスタンの独立に際しては政治的には表舞台に立たなかったからではないでしょうか?
 思想的にはイスラム原理主義を貫いているようで、その思想がパキスタンをインドと分離する背景にあるようです。

<遠江人>

 Mawdoudiが何語かは分かりませんが、英語では"Maududi"ですね。
Abul Ala Maududi - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Sayyid_Abul_Ala_Maududi

 Maududiについては、太田述正コラム#389(2004.6.23)で既に触れられていますね。

 「 イ Jamaat-e-Islami の創設者であるパキスタンのマウドゥディ(Sayyid Abul A'la Maududi。1903〜1979年。http://www.jamaat.org/overview/founder.html(6月23日アクセス))も、同世代人であるエジプトのアルバンナ(コラム#387)と同趣旨の主張を行ったが、彼もアルカーイダやアフガニスタンにおけるタリバンの形成に大きな影響を与えている。」

<太田>

 どうもありがとうございます。
 そんな名前の人物を以前紹介したことがあると自分のコラムに検索をかけて「発見」できなかったのに、「発見」していただいてありがとうございました。
 また、グーグルでMawdoudiで検索をかけた時、フランス語サイトばかりが出てきたのを見て、ひょっとして名前の綴り方が2種類あるのではないかと疑問を持ちつつ、その疑問にこの掲示板で言及するのを忘れていました。
 それにしてもkoyukiさん、「イスラム世界の三大思想家の一人」には興味があります。少なくとも後の二人を教えていただけませんか。

<koyuki>

 あとの二人はエジプトのSayyid Qotb、イランのKhomeiniだとジルは、Jihadの中で言っています。
あなたは子供のときにカイロにいらしたそうですが、そのときに Freres musulmans(日本語でなんと訳しているのか知りません。「ムスリムの兄弟たち」という意味です)の噂なりともお聞きになったことはないのですか。とても不思議です。
 Mawdoudiは西側で知られていますよ。マイケル・ジャクソンほどじゃありませんけどね。太田さんが正しく翻訳しなかったのに、その翻訳を鵜呑みにするのはお止めなさい。太田さん、だから翻訳というのは怖いんですよ。

<太田>

>あなたは子供のときにカイロにいらしたそうですが、そのときに Freres musulmans(日本語でなんと訳しているのか知りません。「ムスリムの兄弟たち」という意味です)の噂なりともお聞きになったことはないのですか。とても不思議です。

 聞いたどころではありません。
 いずれにせよ、ここにも、英語・フランス語表記の問題と日本語表記の問題があります。
 英語表記でMuslim Brotherhood・・フランス語表記では Freres musulmansなのでしょうね。ただし、Freresにaccentをつけなければならないところ、日本語や英語環境ではつけられないのはお気の毒です・・を私は、イスラム同朋会(コラム#1087)、モスレム同朋会(コラム#1406、1411)、ムスリム同胞団(コラム#97、387、388)と三通りに日本語表記してしまっています。

 ついでに申し上げると、Sayyid Qotbは、英語表記でもフランス語表記でも、一番よく用いられている表記はSayyid Qutbではありませんか。私は、サイード・クトゥブと日本語表記しています(コラム#387、388、389)。

>Mawdoudiは西側で知られていますよ。

 MawdoudiとMaududiが同一人物だと気付かなかったことは失礼しましたが、いずれにせよ、グーグルで、Mawdoudi(フランス語表記)の検索結果は約 1,260 件しかなく、他方、Mawdudi(英語表記1)の検索結果が約 55,700 件、Maududi(英語表記2)の検索結果 約 111,000 件あります。
 かく申す私太田述正でさえ、太田述正(日本語表記)の検索結果が約58.800件、Nobumasa Ohta(アルファベット表記)の検索結果が約 2,160 件も本日現在あるのですから、Mawdoudiなんて全く知られていないと言って良いでしょうし、Mawdudi、MaududiにMawdoudiを加えたって私の日本語表記の検索結果の3倍にも達しないのだから、日本の人口の7〜8倍、英語圏やフランス語圏等を含めれば10数倍にもなろうかという「西側」世界では吹けば飛ぶような存在でしょう。(もちろんスペイン語、ドイツ語、イタリア語等の表記もあるのかもしれませんがね・・。)
 
><awdoudiの>後の二人はエジプトのSayyid Qotb、イランのKhomeini

 いやーうっかりしていました。
 あなたはMawdoudiは「イスラミスム三大思想家の一人」とおっしゃっていたのですよね。
 これを私が「イスラム世界の三大思想家の一人」と言い換えたのは不適切でした。
 こういう所を突かなきゃkoyukiさんらしくないなあ。
 MawdoudiならぬMaududiがIslamism(イスラミズム)を代表する人物であると言われたら頷かざるをえません。
 もっとも、イスラミズムを代表する人物としては、あなたが列挙した三人のほかにアフガーニ(Jamal al-Din al-Afghani)を加えるのが通例(
http://en.wikipedia.org/wiki/Islamism
)のようですが・・。

>太田さんが正しく翻訳しなかった

 私は、

Pourtant, des les annees 30, un theoricien apparaet dans l’Inde alors britannique. Il s’appelle Mawdoudi, ecrit en ourdou ou en anglais et est peu connu en Occident, mais son influence sera considerable sur les musulmans du sous-continent indien (n’oublions pas que l’Inde est, a partir du 16e siecle, le pays musulman le plus peuple du monde !).
http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p20010920/dossier/a48856-les_khmers_rouges_de_l%E2%80%99islam.html
(accentは省略した。)

のMawdoudi'est peu connu en Occident'のくだりを、Mawdoudiが「西側世界では知られていない」と受け止めたのですが、間違っていますかねえ。
 全く使っていないので私のフランス語がさびついている可能性はありますが・・。

(続く)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<新規名誉有料読者>

 お返事(コラム#2267)ありがとうございます。つたないですが、あと少し。

>市場経済を否定するバクーニン流アナキズムでは、社会構成員の勤労意欲を維
>持することが困難です。

 これはある程度はその通りだと思います。しかし、これもユートピア思想以外の何物でもないのでしょうが、そもそも、社会構成員の旺盛な勤労意欲というのは本当に必要なのだろうか?と私は考えています。
 ただし、バクーニンのいわゆる集産主義はほとんど疑いなくそこにヒエラルキー、ひいては権力が生まれてしまうはずだ、という理由から私もあまり賛成しません。
 あまり深いところまで理解できているわけではないのですが、経済的な方針という意味では、プルードンのほうが理解できます。さらにいえば、私が今一番共感しているのは、シルビオ ゲゼルの「自然的経済秩序」です。
http://www3.plala.or.jp/mig/gesell/nwo-jp.html
 最近ぼちぼち聞かれるようになってきた地域通貨というのは、シルビオ ゲゼルの論を下敷きにしているようです。

>将来世界政府ができれば、国際的社会秩序を維持する必要はなくなるものの、
>国内的社会秩序を維持する必要は残るので、将来ともプルードン流アナキズムの
>実現可能性はないでしょう。

 確かに国際的社会秩序を考慮する必要がなくなるのはこのときまでないのかもしれません。国内的社会秩序にとってやっかいなのは、いわゆるテロのようなものの実行力が、残酷なまでに大きくなってしまったことでしょうか。江戸時代とは違い、例えばオウムはその気になればもっとずっと大勢の人間の命を奪ってしまうこともできたでしょう。私はそれ以外であれば社会に内包できると感じています。笠井潔は「国家民営化論」にて、警察を全廃すべきであると論じています。
 これがこのまま答えだとは私も思わないのですが、無権力(/無国家)は無秩序である、というのはちょっと理解できません。

 (笠井潔はタイトル通り、国防も国家がやらなくていいといっていますが、これはいくら何でも危ういという気がします。その理由は相手が大きすぎる、という一点のみです)
> 私は、「近代」という言葉を産業「革命」以後の社会という程度の意味で使っ
>ていますが、近代の枠をとっぱらって考えてみると、縄文時代、平安時代、昭和
>時代と並んで江戸時代は私の言う縄文モードの時代であり、これらはすべてあな
>たのおっしゃるような意味でアナーキーな時代だったのではないでしょうか。
> (日本型政治経済体制は、産業革命後の社会を江戸時代を念頭に置いて再編成
>したもの、という捉え方もできると思います。)
> これらの時代を貫くキーワードは、「平和と小さな権力」であると私は思って
>いるのですがいかがでしょうか。
> (それ以外の時代は、弥生モードの時代であり、これらの時代を貫くキーワー
>ドは、「戦乱と大きな権力」であると私は思っているわけです。)

 こんな視点を持ったことは一度もありませんでした。昭和時代に関していうと、正直違和感がありますが、私が昭和時代に対して持っているイメージは、たかだか数十年前だから江戸時代よりは現在に近いだろう、という感じです。
 (一定方向に連続している、という観点では進歩史観に近い見方ですが。。)
 昭和がどのような時代だったのか、もう少し勉強したいと思います。

<太田>

>社会構成員の旺盛な勤労意欲というのは本当に必要なのだろうか?

 ロボットが発達してあらゆる「勤労」を人間に代わってやってくれるような時代が来れば、社会の構成員の大部分に関しては必要なくなるでしょうが、そのような時代が来たとすると、依然として「旺盛な勤労意欲」を持ち続ける一部の人達が残りの大部分の人達を支配する社会に堕してしまう懼れがありますし、さりとて「社会の構成員すべてが「旺盛な勤労意欲」をなくしてしまったらその社会は滅びてしまうと思いますよ。

>私が今一番共感しているのは、シルビオ ゲゼルの「自然的経済秩序」です。

 時間ができた時に、じっくり読ませてもらいます。

>私が昭和時代に対して持っているイメージは、たかだか数十年前だから江戸時代よりは現在に近いだろう、という感じです。

 昭和時代と言っても、私は最初の20年ではなく、戦後の44年を念頭に置いています。念のため。
 江戸時代は、ある種超モダンな時代だと思いますよ。
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太田述正コラム#2271(2007.12.31)
<映画二本:ベオウルフとリンカーン(その2)>

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2007年12月30日
太田述正コラム#2196(2007.11.25)
<本日の記事等の寸評>(2007.12.31公開)

1 始めに

 2度も昼寝をするほど疲労が蓄積していますが、本日はダウンロードした記事を久しぶりに全部読めたので、印象に残った記事等の寸評をご披露する形のコラムを書きました。

2 記事等の寸評

 (1)集団的自衛権問題

 「日本は集団的自衛権を保有しているが、行使はできない、とする政府の憲法解釈は、国際的に通用しない。こうした安倍前首相の問題意識により、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が発足した。・・懇談会では、検討対象の4類型のうち2類型について、集団的自衛権を行使して反撃・迎撃すべきだ、という意見が大勢を占めた。「公海上で我が国艦船近くの米艦が攻撃された場合」と「米国に向かうかも知れない弾道ミサイルを我が国のレーダーで捕捉した場合」だ。・・だが、懇談会は、会合を5回開いた後、3か月近く開店休業状態に陥っている。安倍前首相が退陣したためだ。しかも、参院選での与党惨敗と政権交代で、状況は一変している。」(
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071124ig90.htm
。11月25日アクセス(以下同じ))。
 「「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(柳井俊二座長)は二十四日、今秋予定していた報告書の取りまとめを年内は見送る方針を固めた。福田康夫首相が性急な憲法解釈見直しに慎重な上、海上自衛隊によるインド洋での給油活動を再開させる新テロ対策特別措置法案の国会審議への影響も考慮した。」( 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2007112502067108.html

→こんな限定的検討を行っていること自体が時間と労力のムダです。「日本は憲法上集団的自衛権を保有しており、行使もできる」と首相が言い切ればよいだけのことです。(太田)

 (2)韓国の対日トラウマ

 「1905年11月17日と2005年11月17日。ちょうど100年の時を隔てた二つの日付が韓国の「国恥」という共通点を持つとのコラムが、昨年初めに米時事週刊誌『ウィークリー・スタンダード』に掲載された。
 1905年11月17日は日本が韓国の外交権を奪った「乙巳勒約」(日本では「第2次日韓協約」と呼ぶ)が結ばれた日だ。それから100年後の 2005年11月17日、韓国政府は国連で対北朝鮮人権決議案の表決を棄権した。ハーバード大韓国研究所のイ・ソンユン教授はこの二つの事件が同じ日付に起きたことに気付き、決議案棄権は乙巳勒約に劣らぬ恥辱だと指摘。同誌コラムで「韓国政府は韓半島(朝鮮半島)の平和と安定を口実に人権決議案に棄権したが、その棄権は長い間影を落とすことになる。1905年の恥ずべき事件と同様、すぐに忘れ去られることはない」と一喝した。」(
http://www.chosunonline.com/article/20071124000033

→ものすごい譬えに苦笑するばかりです。(太田)

 (3)できそこないのアングロサクソン・米国

 「ジャクソン・・は1829年3月にホワイトハウス入りした。・・彼が最も情熱を傾けたことは、インディアンをミシシッピー河流域やそれ以遠に移送することだったが、これは<米国の>地理的拡大と白人至上主義の定型かつ先例となり、爾後長年にわたって米国の帝国的マニフェスト・デスティニー擁護者達によって援用されることになる。・・自分が法の外ないし上に位置しているとのジャクソン自身による自己イメージと記述は、フロンティア消滅後何世代にもわたって続くこととなる米国の暴力的なフロンティア文化の典型的なあらわれだ」(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/11/21/AR2007112102060_pf.html

→筆者はオックスフォード大学名誉教授の英国人らしいのですが、典型的な英国人の米国評ですね。(太田)

 (4)ナオミ・クライン

 ナオミ・クライン(Naomi Klein)は、ポスト冷戦期を俯瞰する理論を提示したという点で、フクヤマ(Francis Fukuyama)、ハンチントン(Samuel Huntington)、トマス・フリードマン(Thomas Friedman)と並び称されるべきだ。(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/11/21/AR2007112101919_pf.html

→筆者は、インド人とおぼしき元国連事務次長らしいのですが、よい意味でも悪い意味でもナオミ・クライン(コラム#500、2050、2063)についての世界的評価が定まりつつあるようです。(太田)

 (5)欧州文明

 19世紀のフランスでも20世紀初頭のロシアでも、農村では冬季には人々は、文字通りほとんど冬眠状態にあった。(
http://www.nytimes.com/2007/11/25/opinion/25robb.html?ref=opinion&pagewanted=print

→英国人歴史学者ロッブ(Graham Robb)(コラム#2055)によるムチャ面白いコラム。欧州とイギリスは別文明に属することを改めて実感させてくれます。英語のできる方はぜひ上記を読んでみてください。(太田)

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太田述正コラム#2268(2007.12.30)
<ブット暗殺(その3)>

<鎌倉人>

http://www.jaas.or.jp/pdf/49-1/5-18.pdf
 これの参考文献リストを見ると、マウドゥーディーに関する論文もありました。

<太田>

 ご教示、ありがとうございます。
 しかし、Maudowdiについては、ちょっと触れているだけですね。

<koyuki>

 こまりますねえ、太田さん。(コラム#2265で)ご提示くださったNouvel Opsは、フランス語の普通の書き方で現在形で書いているのですよ。まずフランス語をきちんと読めるようにしてください。
 Maudowdiがイスラミスム三大思想家だといっているのはGilles KEPELです。世界的に有名な中東(イスラム)政治・社会学者です。まさか太田さんほど博識なかたがご存じないはずはありますまい。
 あなたのアングロサクソン崇拝は噴飯ものですが、現在少々忙しくて、それにきちんと対応している時間がありません。来年の春以降になれば、あるいはその気になるかもしれません。

<太田>

 思わせぶりな物言いがお好きな方ですなあ。

>Mawdoudiについては、西側世界ではほとんど知られていない・・・
とりわけ、アングロサクソン世界では全く知られていない、無視されているということですね。

という私のとりあえずの判断が間違っているならきちんと理由をあげて説明していただきたいものです。

 そもそも、MawdoudiもGilles KEPELも私は知りませんが、お気に障りますか?

>アングロサクソン崇拝

 私のはアングロサクソン崇拝というより、アングロサクソン・西欧対置論ですが、ついに本格的な批判者が現れたかと心躍ります。
 できるだけ早くご高説をうけたまわりたいものです。
 その際は、思わせぶりな物言いは止めてすぐ本論に入ってくださいね。

<ホッシュジエンの国内ニュース>

 パキスタンでは、暗殺されたブット元首相の支持者らが激しいデモを行うなど、29日も混乱が続いている。
 パキスタン最大の都市・カラチでは29日、政府への抗議デモが行われているほか、暴徒化した一部の群衆が車両を焼き打ちにするなど、混乱が広がっている。
 一方、パキスタン政府が「暗殺に関与した」としたイスラム武装勢力のベイトラ・メスード司令官は29日、声明を発表し、「我々は女性を攻撃しない」と、事件への関与を強く否定した。
 パキスタン政府は親米だから対立政党の代表をアルカイダが暗殺する理由はないだろう。
 ブットの父も親米でしたが米はムシャラフを支持。
 アルカイダがブットを暗殺する理由はないですね。(・A・ )

07.12.30 日テレ「メスード氏、ブット氏暗殺への関与を否定」
http://www.ntv.co.jp/news/100315.html

<太田>

>ブットの父も親米でした

 違います。(米国も含め)反西側的言辞を弄し続けた人物です(
http://www.nytimes.com/2007/12/30/weekinreview/30bumiller.html?hp=&pagewanted=print
。12月30日アクセス)。
 ちなみに、ブット女史の後首相になり、国外退去処分を経てブット女史の後パキスタンに戻ったシャリフ(Nawaz Sharif。1949年〜 。パキスタン・ムスリム連盟=Pakistani Muslim League党首)も同様です(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/12/29/AR2007122901490_pf.html
。12月30日アクセス)。

>アルカイダがブットを暗殺する理由はないですね

 これも違います。
 ブット女史は(ブット父やシャリフとは違って)根っからの親米派であり、極めて欧米化した人物である上、民主化を追求するとともに世俗主義を掲げている人物でもあり、しかもその人物が女性ときているのですから、それだけでもイスラム原理主義者やそのシンパが目の敵にするのは当然です(
http://www.guardian.co.uk/pakistan/Story/0,,2233038,00.html
。12月29日アクセス)。
 しかも、ブット女史は、パキスタン中で最も激しくイスラム原理主義勢力批判を行っており、彼女が首相になって実権を掌握すれば、米国の意向を受けてこれまでより積極的な対イスラム原理主義勢力軍事作戦を展開すると目されていたのですからなおさらです(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/12/29/AR2007122901185.html
。12月30日アクセス)。
 だからといって、イスラム原理主義勢力が今回のブット暗殺の下手人であると断定できるわけではありません。
 ブットが1990年代に核関連物資を「輸出」したカーン博士に対する欧米の諜報機関による尋問を認めるべきであると主張しているところ、そうなれば自分達の「悪事」が暴かれてしまうことを懼れる軍部関係者が暗殺の黒幕である可能性だってあるからです(
http://observer.guardian.co.uk/focus/story/0,,2233290,00.html
。12月30日アクセス)。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(続く)
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太田述正コラム#2269(2007.12.30)
<映画二本:ベオウルフとリンカーン>

→非公開

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太田述正コラム#2267(2007.12.30)
<皆さんとディスカッション(続x28)>

<新規名誉有料読者>

 アナキズムに関するご返答ありがとうございます。
 確かに現状を考えると自衛のための権力はいずれの地域にも必要だろうと思いますし、市場主義というのも、現在の価値観から否定することは難しいでしょう。
 しかし例えば国防のための兵器は核兵器以外持たない、というような選択をし得たとするなら、国防のための権力というのを(ほとんど)なくす選択も、可能になるのではないか、と思っています。
 スケールの違いこそあれ、アナーキーな状態で自発的に起こるであろう自警団程度の権力にしかならないはずだと私は考えるのです。
 太田様が

>どちらも近代以降のいかなる時代、場所においても実現不可能であるという点では同じだと思います。

と思っておられる理由はどのようなものでしょうか?
 私は、確かに現在までどの地域でも実現されていないが、それが「近代以降」に含まれる未来においても実現しない、とは思わないし、むしろ紆余曲折はあれど、人類は少しずつそちら側に向かっていくだろうと感じています。
 (人間が何かに不自由を感じ続ける限りにおいては・・。)

<太田>

 市場経済を否定するバクーニン流アナキズムでは、社会構成員の勤労意欲を維持することが困難です。
 だからこそバクーニン流アナキズムは、市場経済を否定する点では同じであるけれども、社会構成員の勤労意欲をかき立てるために内外に敵をでっちあげて危機感を煽ったり、物理的に社会構成員を強制勤労させたりする必要があることから、強大かつ独裁的な国家権力の樹立が不可欠だと判断したマルクス・レーニン主義との政治闘争にロシアにおいてあっけなく敗れたのです。
 また、国家権力を否定するプルードン流アナキズムでは、国際的国内的社会秩序を維持するすべがないのであって、これは文字通りのユートピア思想以外の何物でもありません。
 将来世界政府ができれば、国際的社会秩序を維持する必要はなくなるものの、国内的社会秩序を維持する必要は残るので、将来ともプルードン流アナキズムの実現可能性はないでしょう。

<新規名誉有料読者>

 太田様は江戸時代についてのコラムもいくつか書かれているようですが、私は最近E.S.モースの「日本その日その日」を読みました。
 その本でも感じるのですが、江戸時代(正確にはレポートされているのは明治初期ですが)というのは今よりもはるかにアナーキーな時代だったのではないでしょうか。
 もちろん江戸時代には明確な支配者階級と明確な被差別階級が存在し、男尊女卑思想も色濃く、すばらしい時代であったと手放しでほめることはできませんが、少なくとも町人生活に関しては、今よりもはるかに自由で今よりもアナーキーな(ヒエラルキーを意識することが少ない)時代だった、と感じます。
 とはいえ、江戸時代も近代以前であるのは確かです。たかだか130年前の日本にこうまで隔世の感があるのはすごく複雑な気持ちです。

 江戸時代がよりアナーキーであったというのは近代以前と近代以降ということでご理解ください。(前段の「人類はアナーキーに向かう」の信憑性を落としている気がしますが。。)

<太田>

 私は、「近代」という言葉を産業「革命」以後の社会という程度の意味で使っていますが、近代の枠をとっぱらって考えてみると、縄文時代、平安時代、昭和時代と並んで江戸時代は私の言う縄文モードの時代であり、これらはすべてあなたのおっしゃるような意味でアナーキーな時代だったのではないでしょうか。
 (日本型政治経済体制は、産業革命後の社会を江戸時代を念頭に置いて再編成したもの、という捉え方もできると思います。)
 これらの時代を貫くキーワードは、「平和と小さな権力」であると私は思っているのですがいかがでしょうか。
 (それ以外の時代は、弥生モードの時代であり、これらの時代を貫くキーワードは、「戦乱と大きな権力」であると私は思っているわけです。)

<yoshu>

 太田さんのコラムは、多岐に渡ってるのでいつも、興味深く読んでます。核武装と原爆投下のコラム読みました。目から鱗が落ちて、もの凄い衝撃受けてます。とは言え、今のところ、日本は非核非武装でいるべきだの気持ちは変わりませんが。

<太田>

 日米安保的なものを前提にしないのであれば、核武装だけというオプションも、非核非武装というオプションもどちらもとりえません。
 前者は、非国家からのテロリスト的攻撃には無力ですし、核保有国家からのテロリスト的攻撃を抑止することも困難だからです。(誰もテロリスト的攻撃に対し、日本が核戦争を甘受して核報復をするとは思わないでしょう。)
 後者については、とりえない理由をご説明する必要もありますまい。

<大阪視聴者>

><友人TK>
>太田君のTVでの発言で恩給を復活すべしという主張は皆様どう思いますか?

 視聴者として意見を申し上げます。民間企業に勤務されている方からしてみれば、なぜ公務員だけが、と考えるでしょうね。年齢をかさね能力が低下した人は、近年民間ではリストラされることもあるからです。
 ただ、役所を退職した後の生活のため天下り先をつくり税金を無駄ずかいされるのなら、私は恩給は必要悪かな、と考えております。

>役所に希望するまで留まる仕組みに変更するのではだめですかね?(たとえば上級公務員経験者の国家戦略策定支援インテリジェンスグループ。)

 役所に民間企業では使い物にならない方が溜まっていくのは、職場環境としてよくないと思います。若い人の仕事への士気をそぐことになります。
 職場から離し、一箇所に集めて仕事をさせないで給与だけを払うというのであればいいかもしれません。実態は恩給と同じになってしまいますが。
 「国家戦略策定支援インテリジェンスグループ」は現役の優秀な人にやっていただいた方がよいのでは。失業対策としては荷が重過ぎるかなあ、と思いました。キャリア官僚は退職する時期でも、優秀な人が多いでしょうけど。

>頭脳を活かすのであれば官庁に留まっていただくのが最良と思いますが。多分給与は下がるのでしょうがモチベーションは維持できるのではないかと推測します。

 民間企業で定年があるのは、高齢になると能力が下がるという前提ですね。キャリア官僚の早期退職はどうなのでしょうか。
 外務省のラスプーチンこと佐藤優さんが、「海外の情報機関では、組織をリストラされそうになった職員がめちゃくちゃな行動をするのを防ぐため、偽装の仕事でもその分野で十分生活できる技量をつけさせる。」と書いておられます。キャリア官僚は役所を辞めても生活できる資格(弁護士など)を必ず取るか前もって取得していることを義務にすればどうでしょうか。

<太田>

>キャリア官僚は役所を辞めても生活できる資格(弁護士など)を必ず取るか前もって取得していることを義務にすればどうでしょうか。

 私は、特定の役所に勤めておれば資格を与える現行制度(税理士、公証人等)にも反対なのですが、これら食いっぱぐれのない資格を事前にとることをキャリアに求めることにも反対です。
 いたずらにキャリアのソースを狭めかねないからです。
 「必要悪」の恩給制度の復活が単純明快でよろしいのではありませんか。
 なお、私は役所におけるキャリア制度は基本的に存続させるべきだと考えています。

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2007年12月29日
太田述正コラム#2265(2007.12.29)
<ブット暗殺(その2)>

<koyuki>

 パキスタンは、イスラミスム三大思想家の一人Mawdoudiを生んだ国です。アフガニスタンのタリバンも、彼の思想から生まれたのです。
 太田さん、無職でお暇なんでしょうから、もう少しお勉強してください。

<太田> 

 グーグルでMawdoudiを検索かけてみたら、最初の2頁はフランス語のサイトばかり出てきました。
http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p20010920/dossier/a48856-les_khmers_rouges_de_l%E2%80%99islam.html
に、「タリバンも、彼の思想から生まれた」的な記述が出てきましたが、Mawdoudiについては、西側世界ではほとんど知られていない、とも記述されています。
 とりわけ、アングロサクソン世界では全く知られていない、無視されているということですね。
 それにしても、「イスラミスム三大思想家の一人」の典拠をお示しいただきたいものです。
 英独仏以外の言語の典拠であれば、恐縮ですが、ズバリの部分を訳してお示しいただけるとありがたいですね。

 無学の太田より。

<遠江人>

http://www.asahi.com/international/update/1228/TKY200712270418.html
 上記サイトの記事ですが、パキスタンの今年7月からの流れが簡潔に書かれていて、とりあえずおおまかな状況が把握できると思うので、よかったらどうぞ。

http://www.gettyimages.com/Search/Search.aspx?EventId=78622741#
 2chの某スレからの転載ですが、上記の画像サイト(?)で事件直後の現場や民衆の様子を写した画像を見ることができます。(衝撃的な画像も含まれます)

<鎌倉人>

 パキスタンの内政が不安定になると、テロ組織制圧のために、英米が軍事介入せざるをえない事態になるのではないでしょうか?
 その時、海上自衛隊は、パキスタン海軍への給油だけではなく、第一次世界大戦の際に、地中海へ派遣された駆逐艦隊のようになるのではないでしょうか?

<ホッシュジエンの国内ニュース>

 パキスタンのブット元首相が暗殺された事件で、パキスタン政府は28日、暗殺には「国際テロ組織アルカイダ」が関与した証拠があると発表した上で、暗殺直前の映像を公開しました。
 いつものようにアルカイダ登場だ。暗殺の瞬間映像もちゃんと用意されている。
 どうやらブット元首相暗殺で一番得をするのはアメリカのようですね。(・A・ )

07.12.29 TBS「ブット元首相暗殺、アルカイダ関与か」
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 最初にブット元首相の暗殺は必然だったということについてです。
 
 ニューヨークタイムスの元ニューデリー支局長(現国際経済担当記者)のワイズマン(Steven R. Weisman)は、ブットは大混乱を惹き起こすことで政権奪取を図ったと推測しています。
 ブットが帰国したのは、支持者達を立ち上がらせ、大混乱を引き起こし、暴力沙汰を頻発させ、その挙げ句軍部を介入させ、ムシャラフ大統領を軍部に打倒させて、軍部が自分を恐らくは軍人の将軍とともに政権の座につけてくれることを狙ったからだというのです。
 もちろん彼女は来るべき総選挙で勝利したいと思ってはいただろうが、たとえ選挙に勝利したとて、ムシャラフは自分に実権を引き渡さないだろうと思っていたに違いないというのです。
 このワイズマンの推測には根拠があります。
 ブットは前に一度同じことをやって成功したことがあるからです。
 牢獄から出て2年間海外で過ごした後、1986年にブットは帰国し、ラホールでパキスタン史上恐らく最大規模の大群衆を集めて大混乱を惹起することに成功し、当時のハク(Mohammed Zia ul-Haq。1924〜88年)大統領と軍部との間に楔を打ち込むことに成功しました。(ハクはその2年後の1988年、謎の飛行機事故で死亡します。)
 この時、ワイズマンはパーティーの席上でのブットととの立ち話で、ブットから、1977年の総選挙で彼女の父親のブット(Zulfiqar Ali Bhutto。1928〜79年。大統領を経て首相)首相率いるパキスタン人民党(Pakistan People's Party =PPP)は大勝利を収めたけれど、反PPP政治勢力が総決起して大混乱を引き起こしたためハク将軍率いる軍部のクーデターを招き、父ブットは失脚しその2年後には絞首刑に処せられた、という経験を踏まえて、危険だけれど今度は自分が群衆を扇動して同じことをやろうとした、そうしなければ権力奪取は絶対にできない、という打ち明け話を引き出しているのです。
 (以上、
http://thelede.blogs.nytimes.com/2007/12/27/benazir-bhutto-and-the-politics-of-chaos/
(12月28日アクセス)による。)

 ブットの期待(!)通り、彼女がパキスタンに帰国した直後の10月19日に彼女を狙った爆弾テロ事件が起こり、パキスタン史上最も多数の138人もの死者が出ました。 
 この前後から、ブットに迫る危険を察知した米ブッシュ政権はブットに対して危険情報を継続的に提供するようになっていました。
 その1週間後の10月26日、ブットは、自分の身に何かあったらそれはムシャラフの責任だと記したメールを米国在留のブットのスポークスマンに送り、自分が死んだら公開してほしいという希望を添えて米マスコミに転送させています。
 更に12月に入ってから、アルカーイダのナンバー2であるザワヒリ(Ayman al-Zawahri)がビデオで、ブットの帰国を非難するとともに来月8日に予定されている総選挙のすべての候補者への攻撃を呼びかけました。
 にもかかわらず、12月27日、演説が終わった後、ブットが群衆に囲まれた中で、防弾ガラス付きの自動車のルーフトップから身を乗り出すという無謀なことをやったのです。

 (以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-security29dec29,0,1081227,print.story
http://www.guardian.co.uk/pakistan/Story/0,,2233038,00.html
(どちらも12月29日アクセス)による。)

 何発かの銃声と爆発音が響いたのはその瞬間でした。
 結局、ブットの命を張った2度目の賭は大失敗に終わったわけですが、暗殺は起こるべくして起きたのであって、彼女の死は自業自得であると言うべきでしょう。

(続く)
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太田述正コラム#2266(2007.12.29)
<昔の文明論コラム2篇>

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