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慰安婦問題の「理論的」考察(その8)
新人材バンクのまやかし
慰安婦問題の「理論的」考察(その6)
慰安婦問題の「理論的」考察(その4)
アバウトな話:消印所沢通信14
2007年04月の記事一覧
2007年04月30日

太田述正コラム#1707(2007.3.27)

<慰安婦問題の「理論的」考察(その8)>(2007.4.30公開)





<その後の米英での動き>



 準アングロサクソンのオランダでは、同国の外務省がホームページに、「日本は1993年の声明(河野談話)で日本軍が第2次大戦で数千人の女性を性奴隷にした点を認めたが、日本政府の最近の発表ではこれらの認識に疑問が示されている。日本の新しい声明は歴史的証拠と反し、被害者やその家族を苦しめている」と記し、カナダのマッケイ外相は20日の国会での答弁で、「カナダは第2次大戦で多くの苦痛を味わった女性に対して大きな同情心を持っている。彼女たちへの誤った行動やその苦しい時代を決して忘れてはならず、この問題は放置されてはならない・・日本の外相にこの意見を今週中に伝える。日本の首相の発言に対して遺憾を表明し、女性たちに対する謝罪問題には明確な態度を要請する」と述べました。



 また、ニューヨークタイムスが社説で日本政府を非難した(

http://www.nytimes.com/2007/03/06/opinion/06tues3.html?_r=1&oref=slogin



ことについては先に太田掲示板上で話題になりましたが、今度はワシントン・ポストまで24日、社説で、安倍首相が日本軍「慰安婦」に対する日本政府の過去の立場から後退するのは「民主国家の指導者として恥ずかしい」と非難するとともに、安倍首相が北朝鮮の日本人拉致問題については執拗な一方、「第2次大戦中に数万人を拉致、性暴行し、性奴隷とした日本の責任に対して後退しているのは無礼なこと」と指摘し、更に、慰安婦問題についての「歴史的記録は北朝鮮による拉致事件に劣らず証拠がはっきりしている。歴史専門家は20万人に達する女性が韓国、中国、フィリピンなどアジア諸国から奴隷として連行され、日本軍が拉致に加担したと明らかにしている」と強調しました。

 (以上、http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2007/03/26/20070326000009.html

(3月26日アクセス)による。)



 そこへ本日、日本のメディアや韓国のメディアの電子版はほとんどとりあげなかった話を、米英のメディアが大きくとりあげました。

 26日の国会で、安部首相が、「従軍」慰安婦について謝罪をし、にもかかわらず、官憲による強制連行は再度否定したのですが、これは河野談話を踏襲しただけのことであるところ、何故これがニュースになるのかいささか理解に苦しむのですが、ニューヨークタイムスと英ガーディアンがこれをそのまま報じたのはまだしも、英ファイナンシャルタイムスと英BBCに至っては、安部首相が強制連行を再度否定したことには触れず、謝罪をしたことだけを報じたのです。



 これらメディア、とりわけファイナンシャルタイムスとBBCの報道から、アングロサクソンは、強制性の有無を問わず、慰安婦制そのものを問題にしているのではないか、という私の推測が裏付けられた思いがしました。

 この文脈で見過ごすことができないのは、ニューヨークタイムスが、「しかし、私は本件が非常にむつかしい問題であると考えており、われわれは日本の人々がこの問題に引き続き取り組み、犯した犯罪(crimes)の重さを認めるという率直かつ責任ある姿勢でこの問題に対応することを心から期待している」という異常なまでに厳しい米国務省報道官の言を報じていることです。

(以上、

http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/6495115.stm

http://www.ft.com/cms/s/c0e64506-dbb3-11db-9233-000b5df10621.html

http://www.nytimes.com/2007/03/27/world/asia/27japan.html?pagewanted=print

http://www.guardian.co.uk/japan/story/0,,2043671,00.html

(いずれも3月27日アクセス)による。)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 19世紀を迎えた頃の英国は、良く言えばバイロン、シェリーらのロマン主義の英国であり、悪く言えば、俗悪で、酔っぱらいの多い、歯に衣を着せない物言いをする、直截的にして性的放縦の英国でしたが、1937年のビクトリア女王就任の頃になると、英国は、すっかり様変わりしてしまいました。

 重苦しい中産階級的価値観が支配する、禁欲的、婉曲的、同調的にして性的抑制の国、英国へと変貌したのです。



 この180度的な大きな変化は、フランスの軍事的脅威、フランス革命伝播への恐怖、そして急速に発展する不安定な産業資本主義、が引き起こした社会的不安に危機意識を募らせ、犯罪・貧困・社会的騒擾の増大は放置できないとし、問題は貧困層や労働者階級の背徳にあると考えたところの、ウィルバーフォース(William Wilberforce。1759〜1833年)らのプロテスタント新宗派の博愛主義者達、ベンサム(Jeremy Bentham。1748〜1832年)らの世俗的な効用学派の哲学者達、及び自由市場を信奉する経済学者達が手を携えて、貧困層や労働者階級を主たるターゲットとして、性的節制・勤勉・自己抑制・洗練された行儀作法、を旨とする社会改革/道徳改革運動を展開したために生じたものです(注13)。 



 (注13)慈善事業も、貧困層の自立を促すような方法と姿勢で行わなければならないとした。



 1859年にミル(John Stuart Mill)が自由論を書いたのは、このビクトリア朝的倫理感への異議申し立てであったのです。

 やがて英国は、この禁欲的なビクトリア朝的倫理感から次第に解放されて行きます。

 ところが最近、英国では、保守党を中心にこのビクトリア朝倫理感への郷愁が高まっています。

 サッチャーは首相当時の1983年、「私はビクトリア朝的な祖母に育てられたことに感謝している。そのおかげで、われわれは勤勉、自分の何たるかを証明すること、人頼みをしないこと、浪費をしないことを叩き込まれた。これらのビクトリア朝的価値観こそ、わが英国を偉大にしたゆえんなのだ。」と宣言したものですし、つい最近も、保守党の影の司法大臣(attorney general)もビクトリア朝的価値観を褒め称えたところです。

 しかも、できそこないとはいえ、米国もアングロサクソンである証拠に、その倫理感の変遷は、以上ご紹介した英国の変遷を、タイムラグはあっても忠実に追って現在に至っているのです。

 (以上、ビクトリア朝的倫理感については、

http://www.slate.com/id/2162372/pagenum/all/#page_start

http://www.nysun.com/article/49949

http://www.amazon.com/Making-Victorian-Values-Decency-1789-1837/dp/1594201161

(いずれも3月23日アクセス)による。)



(続く)




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太田述正コラム#1705(2007.3.26)

<新人材バンクのまやかし>(2007.4.29公開)



1 始めに



 現在の人材バンクについては、以前(太田述正コラム#1669で)触れたところですが、お化けメルマガのJMMで、主宰者の村上龍氏が、「「新・人材バンク」設立を軸とする・・公務員制度改革関連法案(改正案)・・は、実際のところ、どの程度の効果があるものなのでしょうか。」という問題提起をされています。

 いずれ、常連寄稿者達の回答がJMMのメルマガで配信されるのでしょうが、一足早く私の回答をここでご披露しましょう。





2 改正案の中身





 まだ確定しているわけではありませんが、報道によれば、改正案の概要は以下のとおりです。



 (一)「人事の一環」から「再就職の支援」への転換、(二)「各省縦割り」から「内閣一元化」への転換、(三)透明性と規律の確保、の3つの基本原則に則り、各省庁による再就職斡旋を全面禁止し、再就職斡旋を一元的に「新・人材バンク」だけに認める。官僚OBの再々就職についての各省庁による斡旋も禁止する。



 罰則が設けられるのは、(一)現職官僚が別の職員の離職に際し再就職を斡旋する目的で不正な行為をした場合(2年以下の懲役)、(二)現職官僚が別の職員に斡旋目的で不正行為を依頼・要求した場合(3年以下の懲役)、(三)依頼や要求を受け、官僚が再就職対象法人に圧力をかけるため怠業などの不正行為をした場合(2年以下の懲役)、等であり、自分自身の再就職のための不正行為も同様に懲戒処分対象となる。再就職斡旋を目的に情報提供したり、情報提供を依頼したりした官僚も懲戒処分の対象となる。



 一方、官僚OBの現職官僚に対する「口利き」も禁止。離職前5年間に担当していた職務に関し、不正行為を働きかけた場合には過料を科す。契約や処分、行政指導に関して不正行為を依頼した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金とする。



 人材バンク職員に出身省庁の官僚の再就職支援に当たらせないことや、各省庁と天下り先との直接交渉を禁止すること等も盛り込まれる。

 (以上、

http://www.sankei.co.jp/seiji/seisaku/070321/ssk070321000.htm

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070323k0000m010155000c.html

http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070323AT3S2201O22032007.html

(いずれも3月23日アクセス)による。)





3 抵抗勢力との綱引き?



 自民党公務員制度改革委員長を務める片山虎之助参院幹事長は、自民党内の、各省庁と結託した抵抗勢力を代表するかのように、渡辺喜美行政改革担当相が主張する「2年」後に新新人材バンクに完全移行するというのは「短すぎて無理だ」と強調するとともに、新人材バンクのスタッフを出身省庁の再就職斡旋に関与させない政府方針については「元の省庁に帰れないノーリターンにしてしがらみを断った上で、一番詳しい出身省庁のことに関与させることも検討課題だ」と述べています(

http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2007032401000184.html

。3月25日アクセス)。



 総理の意向を受けた改革派の閣僚と自民党抵抗勢力の綱引き、という、何度も見飽きた陳腐なドラマが再び国民注視の下で演じられているわけです。



 田中秀征氏は、「天下りの弊害は、「官製談合」や「耐震強度の偽装」などに如実に表れている。官僚の不祥事のほとんどが「天下り問題」に発していると言ってよい。近年、世論の厳しい目はこの1点に集中している感がある。」と正しい認識を示しつつも、各「「省庁の関与が残るか」と、「2年以内に新・人材バンクに移行するか」、この2点を厳しく注視しよう。」と、このドラマに感情移入してしまい、改革派にエールを送っています(

http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/shusei/070322_21th/

。3月23日アクセス)。





4 種明かし



 (1)新人材バンク設置の真の目的



 まことにお目出度い限りです。

 そろそろ種明かしをしましょう。

 新人材バンクなんて、まやかし以外の何物でもありません。

 どうしてか?



 懲役、罰金、過料、懲戒処分といった罰則が科されるのは、現在でも違法行為であるところの行為を官僚や官僚OBが行った場合だけであって、肝腎の各省庁による天下り斡旋そのものには罰則が科されないことに注目してください。



 そもそも、各省庁による天下り斡旋は職業紹介であって、業としてこれを行うことは、現在の労働法制の下では、許可(民間の職業紹介会社の場合)や届出(高等教育機関の場合)がなされていない以上、違法なのであり、当然各省庁設置法によっても認められていません。



 つまり、現在でも各省庁による天下り斡旋に携わった官僚は、本来懲戒処分の対象とされてしかるべきなのです。

 それなのにどうして改革案ではこれに罰則が科されないのでしょうか。

 今後は、新人材バンクが天下り斡旋を行うことから、各省庁が天下り斡旋を行う必要がなくなるので、各省庁による天下り斡旋を(罰則抜きで)禁止だけしておけば足りる、というタテマエなのでしょう。



 しかし、官僚機構や自民党のホンネはそんなところにはありません。

 新人材バンクの設立は、各省庁に、天下り斡旋という違法行為を、新人材バンクという隠れ蓑をつくることで、引き続き隠れて、しかし安心して行わせるとともに、その権益に官邸、ひいては自民党の有力政治家達が、新人材バンクなる一元的機構を通じてたかりやすくすることこそが真の目的なのです。



 これは決して下司の勘ぐりではありません。

 先例があるからです。



 自衛官の再就職斡旋は、かつては陸海空自衛隊が、それぞれヤミで、つまりは労働法制違反を犯しつつ行っていました。

 これを合法化するための隠れ蓑をつくることを主要な目的の一つとして、1979年に財団法人・自衛隊援護協会が設立されたのです。



 新人材バンクと違って、援護協会は官僚機構の外に設けられたわけですが、これは、援護協会そのものをも自衛官や文官(内局キャリアや当時の労働省等の事務官を含む)の天下りの新たな受け皿とするために協会の組織を肥大化させる必要があった(注)ことと、この肥大化させた組織を維持するための資金を防衛産業からも仰ぐためでした。

 

 (注)従って援護協会の職員は、まさに「元の省庁に帰れないノーリターン」組だ。



 この防衛庁の権益には手を触れないということなのでしょう、新人材バンクの対象から自衛官ははずすことになっています(

http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070324AT3S2301N23032007.html

。3月24日アクセス)。



 ただし、これは援護協会がいらない、ということではありません。

 自衛官は、一般の公務員とは異なり、「任期制」か「若年定年制」の下にあります。

任期制とは一任期を2年若しくは3年として採用する制度であり、隊員の大部分は2ないし3任期の勤務の後、20歳代の前半で再び外の社会に出て行きます。

 また定年制自衛官として採用された人々や任期制自衛官から定年制自衛官に転じた人々も同様の理由からその99%は56歳以下の定年年齢(主体は54、55歳)で退職して行きます。



 このため任期制自衛官にあっては退職後の長い人生を支える再就職先の開拓、定年制自衛官にあっては年金受給年齢までの再就職先の確保が不可欠であり、本来防衛庁が業として自衛官の再就職斡旋を行ってしかるべきだからです。(このほか、再就職先の企業の理解なくしては維持できない即応予備自衛官制度もあります。)



 退職者の数だって、毎年数千から1万人とハンパな数ではありません。

 (以上、援護協会に関する事実については、

http://www.engokyokai.jp/framepage41.htm

http://www.engokyokai.jp/framepage24.html

(どちらも3月24日アクセス)による。)





 これは逆に、自衛官のような特殊事情のない一般の公務員を対象とする新人材バンクなど、(現在の人材バンク同様、)いらないということを示唆しています。

 実はこのことには、田中秀征氏もうすうす気がついているようです。

 「今回の天下り規制が基本方針通り実現しても、それはほんの一歩に過ぎない。そもそも税金を使って再就職をあっせんする必要があるのかも疑問である。」(日経BP前掲)と言っているからです。



 しかし、「本当に優れた人材なら、役所があっせんしなくても再就職先は引く手あまただろう。」(日経BP前掲)という理由付けはいただけません。

たとえ官僚としては優れていた人物であっても、まともな再就職ができるよう「人材」などほとんどいません。ですから、官僚を再就職させることなどあきらめて、年金を手厚くした上で、官庁による天下り斡旋を厳罰をもって禁じるべきなのです。(コラム#1663、1669)



<読者TY>

 基本的には定年まで役所にいてもらえばよい。後輩がやりづらいというなら、別の官庁に移ったら良いのではないですか。横の人事交流があったほうが良いでしょうし。



<読者DS>

 官僚天下り(失礼、再就職でしたね)のためにわざわざ金をかけて人材バンクを作り、しかも問題解決にまったくつながらないという視点は、どうしてマスコミに書かれないのでしょうね?

 けっきょく小泉さん時代と同じ宮内さん、南部さんの系統の仕事が増えるばかりというのは、うがった見方でしょうか。



 ところで、



>再就職させることなどあきらめて、年金を手厚くした上で、官庁>による天下り斡旋を厳罰をもって禁じるべき



 これには、反対です。それよりの早期退職制度を廃止して、官僚もきちんと定年まで勤め上げることを原則にすればいいでしょう。

そうするともちろん能力に応じて、ポストを処遇しないと組織が回らなくなるから、後輩に人事で抜かれるキャリアも多数出てくることになりますが、誇り高き方々には耐えられないことなのかな。



 60才まで勤めてもらえば年金もサラリーマン並みで大丈夫でしょう?



<太田>

>官僚天下り(失礼、再就職でしたね)のためにわざわざ金をかけて人材バンクを作り、しかも問題解決にまったくつながらないという視点は、どうしてマスコミに書かれないのでしょうね?



 マスコミも多くの大企業も、それぞれが官僚のそれと似た天下りシステムを持っているからでしょう。



>けっきょく小泉さん時代と同じ宮内さん、南部さんの系統の仕事が増えるばかりというのは、うがった見方でしょうか。



 ここは、もう少し説明していただきたいですね。



>>再就職させることなどあきらめて、年金を手厚くした上で、官庁>による天下り斡旋を厳罰をもって禁じるべき



>これには、反対です。それよりの早期退職制度を廃止して、官僚もきちんと定年まで勤め上げることを原則にすればいいでしょう。

・・60才まで勤めてもらえば年金もサラリーマン並みで大丈夫でしょう?



 TYさんもあなたも同じようなことをおっしゃっていますが、まず、私自身、官僚は定年まで勤めてもらうようにすべきだという考えであるのでお間違えなきよう。

 しかし、たとえそうしたところで、現状に比べて官僚の生涯所得は大幅に減るでしょう。

 私は、その分を(個人拠出分を増やさずに)まるまる年金で上積みすべきだとは言わないけれど、ある程度は(個人拠出分を増やさずに)上積みすべきだ、と思うのです。

 天下りの全廃で、税金の無駄遣いが大幅に減るのですから、その一部を使って年金を上積みすることができるはずです。

 これは帰するところ、どの程度の官僚の質の低下を甘受するか、ということであり、慎重に判断する必要があります。



 ところで、

http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-bike28mar28,0,244160,full.story?coll=la-home-headlines

は、大変やさしく読みやすい英語の記事です。

 日本のお巡りさんがいかにすばらしいか、外国人記者が驚きの念をこめて記事にしています。

 ぜひ読んでみてください。

 このお巡りさん達だって、現状ではやむなく、パチンコ業界関連団体等に天下りしています。

 年金を手厚くするのに反対だなんてケチなことは言わないでください。

 それは、彼らを「管理する」キャリア警察官僚の質を余り落とさないようにしてあげることにもつながりますよ。



<太田>

 「「はっきりしているのは、新人材バンクができても『天下りはなくならない』ということ」。元特殊法人労連事務局長で天下り問題に詳しい堤和馬氏は、こう言い切る。堤氏が最大の問題点としているのは、ノンキャリア組を天下り規制の対象としていないことだ。「(改革案に)書いてないことは、自由にできる」と解釈するのが役所流。再就職の窓口が一元化されても、ノンキャリアはこれまで通りに各省庁を窓口に民間企業に天下りができることになる。「そうなれば、そのノンキャリアを雇用した企業を通じて、一元化された窓口から容易にキャリアを呼び寄せることができる。要は、今までの省庁と業界の関係が、別動隊のノンキャリアを挟んでの“あっせん”という形で温存されることになる」(堤氏) 」

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20070329/mng_____tokuho__000.shtml



 そう言えば、「ノンキャリア組を天下り規制の対象としていない」のでしたね。

 コラム#1705を書く時につい失念してしまいました。

 まさに、堤氏がおっしゃるように、安部政権は、「「官製談合事件の背景にある天下り問題に対する国民の根強い批判と改革を求める世論を意識し、選挙対策で、とりあえずポーズをつくっただけ」ですよね。

 新人材バンクなんて代物を自衛隊援護協会になぞらえたのは、援護協会に失礼でした。




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太田述正コラム#1704(2007.3.25)

<慰安婦問題の「理論的」考察(その6)>(2007.4.28公開)



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



<日本の廓の発生史>

 このあたりで、日本の廓(公認売春宿)の発生史を押さえておきましょう。





 日本で国家による売春の管理が初めて行われたのが、鎌倉時代初期の1212年に朝廷の検非違使が発した京都における結婚・売春仲介業への規制であるところの、中媒(仲人)たる下女の禁制です。

 これは、良家の子女を巧みに誘って賤しい男にめあわせ、密会の場所を提供すること、すなわち身分違いの結合を、身分秩序の紊乱をもたらすとして禁止したものです。

 このことから逆に、身分秩序の紊乱をもたらさない仲介は正当な業務として認められていたことが分かります。



 そして、中媒や好色(売春婦)や遊女や白拍子らの風俗営業は、当時、女性が直接にその身体を使用して行う芸能、道の一つとして認められており、内蔵寮(くらりょう)が調度品や繊維産業を、造酒司(みきのつかさ)が酒造業界を、朝廷の料理を預かる御厨子所(みずしどころ)が京都の生鮮魚介市場を、それぞれ利権的に公事(税金(賦役を含む))徴収の対象としていたことから、京都の警察を担当していた検非違使庁が、風俗営業従事者から税金を徴収していたであろうことが、容易に想像できます(注11)。



 (注11)朝廷では9世紀頃から女性官人が急激に締め出され、朝廷では女性はもっぱら私的な雑用に従事することとなる。その結果貴族層では、女性の労働を賎視する風潮が生まれ、また、官職を持つ夫への経済的従属が強まった。こうした風潮は上から下へと広がっていき、女性が公的な場から私的な場へと活動の場を狭められて行ったと考えられている。しかし、女性性そのものが「家産」であるという遊女の特殊性から、遊女社会においては、中世後期まで家父長制が根付かず、女性の「長者」に率いられた自治的な社会でありつづけた。(

http://www.ikedakai.com/ryukeikanren1.html

。3月25日アクセス(以下同じ))





 風俗営業は税金徴収の対象となっていただけではありません。

 また、平安時代から、天皇の代替わりに際しての大嘗祭の場には、大嘗会(え)の検校(けんぎょう)の納言、悠紀(ゆき)・主基(すき)の国司、諸所の預(あずかり)などの座席とともに、大工等の技能に優れた人々=「才技長上(さいぎちょうじょう)」の座席も設けられていたことから、風俗営業従事者中の代表者達も大嘗祭に招かれていたと考えられるのです。



 (恐らく鎌倉時代末期からのことだと考えられていますが、)室町時代から江戸時代初期にかけて、公家中の名門である久我(こが)家(注12)が、盲目座(当道座)から公事を徴収していたほか、検非違使の勢多(せた)氏を直接の担当者として「洛中傾城(けいせい)局」として京都の傾城達から公事を徴収していたことが明らかになっています。



 (注12)久我家は村上天皇の皇子に発する村上源氏の嫡流。堀川、土御門、中院、六条、愛宕、西園寺、岩倉、久世、東久世は分家。女優の久我美子(くがよしこ。1931年〜)はこの久我家の嫡流。ただし、本名は「こがはるこ」と読む。(

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%85%E6%88%91%E5%AE%B6







 鎌倉時代末期に生きた女房、後深草院二条は、この久我氏の出身であるところ、彼女は後深草院の愛妾であったが、同時に同母弟亀山院や、鷹司兼平・西園寺実兼などとの「密通」に身を焦がし、その記録、『とわずがたり』を執筆していることは、久我家の家業との関連で様々な想像をかきたてます。

 (以上、特に断っていない限り

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%85%E6%88%91%E5%AE%B6

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%85%E6%88%91%E7%BE%8E%E5%AD%90

による。)





 以上をまとめれば、日本では、売春等の風俗営業の世界において例外的に男女同権が長く維持され、また売春等の風俗営業は正当な業務として認められており、しかも、由緒ある公家が売春等の風俗営業の規制・税金徴収を所管していた、ということです。



 では、いわゆる遊郭はいつどのように生まれたのでしょうか。

 それは1589年に京の万里小路に、豊臣秀吉の厩付奉行をしていた男らが傾城街をつくるのを秀吉が許可したことに始まりました。これが日本最初の遊郭「島原」となるのです




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太田述正コラム#1702(2007.3.24)

<慰安婦問題の「理論的」考察(その4)>(2007.4.27公開)





 では、サルと人間との違いはどこにあるのでしょうか。





 最新の研究によれば、倫理感覚を司っているのは、サルも持っているところの、大脳皮質中の原始的な部位のventromedial(下部中央)領域であるところ、人間の場合、新しく発達した大脳皮質の中で費用便益分析を行う領域があり、両領域間で調整が行われた上で倫理的決断を下すことが分かりました。



 このventromedeial領域は、人間(サル)に対し、例えば、他の人間(サル)を殺すことは悪いことだという倫理感覚を付与しています。

 悩ましいのは、他の人間を殺すこと(費用)が、それ以上の便益をもたらす場合です。

 例えば、家族と友人達が隠れている所へこれらの人々を殺しに悪漢が接近してきた時、一緒に隠れている赤ん坊が泣き出したらどうするか(注10)、あるいは、貨車が独りでに動き出し、その先に5人の作業員がいる時、自分の隣に立っている人を貨車の前に突き倒せば、その人は死ぬけれど貨車を止めることができる場合にどうするか、決断を求められたとします。



 (注10)先の大戦末期の沖縄戦の時に、沖縄の人々は、避難住民や日本軍が隠れている洞窟に米軍部隊が接近してきた時に赤ん坊が泣き出す、という状況に何度も直面させられた。



 この場合、ventromedial領域が病気で破壊された人間は、破壊されていない人間に比べて、赤ん坊を窒息死させる、あるいは人を突き倒す、という決断を下す確率が2〜3倍に達するというのです。



 だから人間を、サルより偉大だと見るのか、それとも損得計算を倫理感覚より優先させる危険極まりない存在と見るのかは、むつかしいところです。

 私が注目したのはこの研究そのものではありません。この研究を紹介する記事の中で、ニューヨークタイムスの記者が、恐らく上記実験で実際に用いられることのなかったであろう三番目の状況を勝手に想定していることです。



 具体的には、彼は、他の人間を殺してはならない、という倫理感覚と並ぶ倫理感覚として、赤貧の家計の足しにするためと言えども娘をポルノ産業で働かせてはならない、を挙げているのです。

 (以上、

http://www.nytimes.com/2007/03/22/science/22brain.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print

http://www.slate.com/id/2162104/

(どちらも3月23日アクセス)による。)



 これは、江戸末期の「絵画、彫刻で示される猥褻な品物が、玩具としてどこの店にも堂々とかざられている。・・十歳の子どもでもすでに、・・性愛のすべての秘密となじみになっている・・遊女<が>社会の軽蔑の対象にはならない」日本(コラム#1508)、そして、今なお廓なき廓文明を生きているわれわれ日本人(コラム#1685)からすれば、信じがたい謬見です。



 いずれにせよ、娘をポルノ産業でポルノ女優として、あるいは廓(後任売春宿)で花魁(売春婦)として働かせることを是とするか非とするかは、サルと人間が共有する倫理感覚とは全く無関係であることは、日本人にとっては自明の理ではあっても、米国人、ひいてはアングロサクソンにとっては非常識の最たるものであるらしいことが、このことからも分かりますね。





 (4) 特殊な倫理感たるビクトリア朝的倫理感





 一体、アングロサクソンにかくもポルノや売春に対して否定的な見方をさせるに至ったゆえんは何なのでしょうか。

 それが、人類共通の倫理感ならぬ、特殊な倫理感たるビクトリア朝的倫理感なのです。



(続く)


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2007年04月26日

太田述正コラム#1748(2007.4.26)
<消印所沢通信14:アバウトな話>

 排水量はフネの重量……と,そんなふうに思っていた
時期もありました.

 ついこないだ,調べて分かったんですが,実はそれでは
正解じゃないそうです.

 まず,アルキメデスの原理によれば,
「流体中の物体は,流体から浮力を受ける.
 浮力の大きさは,この物体が排除した分の周囲の流体
(すなわち物体と同体積の流体)に働く重力に等しく,
方向は重力と反対である」
 つまり船で言えば,船を水上に浮かべた際に,押しのけられる
水の重量,だということになります.※

 そして,これは船の自重に等しくなります.
 理論的に言えば.

 ところが…….さて,どうやって排水量を測るかというと,
何万tもある艦艇を,実際にプールに浮かべて,こぼれた
水を測るというわけにもいきません.
 そんなでっかいプールはどこにもないからです.
 船狂いのジェームズ・キャメロン監督でさえ,映画「タイタニック」を
撮るにあたって作ったプールには,タイタニック号の一部しか
浮かべることができませんでしたしね.

 そこで,喫水を測って排水量等測線図を作り,そこから
計算して排水量を求めることになります.
 ですが,それにも様々な誤差が出てくるので,単純に
「船の重さ」とは言えないのだそうです.※2
 何万トンとか,何千トンとか,表示が非常に大雑把なのも,
そうした誤差を考えると,細かな数字は意味がないためらしい.
 だから正確には,「排水量とは,船の重さについての
おおよその目安」でしかない,とか.

 船には尺度がもう一つあります.
 総トン数.商船ではこちらのほうがよく使われますね.

 じゃあ,こっちはアバウトなのか,そうでないのか,といいますと,
説明がちょっとややこしい.※3

 19世紀以前では,トン数は,大雑把だが確かに容積を
表す数字でした.
 そのころ,その数字の求め方は各国まちまちで,英国では,
船の内法(うちのり)の長さと幅の二乗との積をフィートで
計算し,それを94で割って算出していました.
 容積トンだと1トン=40平方フィートですが,船の前後の
痩せた部分や船体構造部材の出っ張りなどを考慮して
94で割ることにしたのだとか.

 当然,このやりかただと,幅が狭くて深さがある船を作れば,
トン数は実際より少なくなりますわな.
 実際,そんな船を作って税金をごまかす船主が現れるように
なり,船の安全性に問題が出てきたそうなんで.
 まるで,間口を税の軽重の目安にしたら,どの家もどの
家も間口だけ小さくて,その代わり奥のほうへ,のぼーっと
長くなってしまった,どこかの国のような話ですな.

 そこで1954年,Moorsom方式と呼ばれる大まかな
国際ルールができました.
 船の何個所かの断面を正確に求め,それを長さ方向に,
シンプソン法則と呼ばれる数式によって積分する方法が
それで.
 ただし甲板室スペースは算入し,機関室と乗組員常用室容積は
控除する.
 Moorsomは提唱者の名前.
 この方式により,1容積トン=100平方フィートとなりました.

 その後も,2度の国際条約で,何を含めて何を含めないかとか
やっている内に,現在の測度規則による総トン数は,もはや
重さや容積を表す数字ではなく,単に船の大きさの指標と
なる数値でしかないものになってしまいましたとさ.
 どっとはらい.

 こうして見ますと,排水量といい総トン数といい,技術の
塊のようなところに,意外に大雑把なものが潜んでいる
ものですな.
 厳密な正確さが要求されると思われている工学ですら,
このように,けっこうアバウトでもなんとかなるのですから,
もっと曖昧なもの,例えば人の生き方なんて,アバウトでも
なんとかなるんじゃないでしょうかね.
(了)

 【脚注】

※ 吉田文二著『船の科学』(講談社,1993.6.25)

※2
http://www5f.biglobe.ne.jp/~Tan-Lee/modo/gijutu/haisui.html
参照.

※3 以下,総トン数の説明は,大阪商船三井船舶編
『海と船のいろいろ』(成山堂書店,1998.2)を参考にした.
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<太田>
 防衛庁時代に、私も自分で調べたことがありました。
 なつかしいですね。



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